2014年1月19日(日)は、晴天ながら、風が冷たい一日でした。
京急・青物横丁駅に近い名刹・品川寺(ほんせんじ)門前では、毎月第2日曜日、マルシェ「全快野菜ちゃん」が開催されています。主催は「都会と田舎をCONNECTする(つなぐ)」ための様々な活動を行っているグリーンスマイル。
野菜等は、顔見知りの生産者や事業者の方の協力を得て出品しており、毎回、充実してきています。カンボジアのコショウといった珍しいものもあります。
開催を当てにして下さる地域の方も増えているようです。
皆さん寒い中で頑張っておられるのに申し訳なかったのですが、短時間で失礼し、JR品川駅近くの「コクヨ・エコライブオフィス品川」に向かいました。
ここはCO2削減とワーカーの意識改革をテーマとした実験オフィスとのこと。
5階にあるスタジオ(交流スペース)は、明るくて気持ちのいい空間です。中庭(テラス)には植栽の中に椅子が並べられています。
そして、壁の一画には「エコ妖怪」(節電童、階段爺、帰ろ首たち)も。
ここで13時から開催されたのは、「丘の上より三田の家☆-三田の家の7年間の活動をふり返りつつ、コミュニティや場づくりについて対話する午後」というイベント。
「三田の家」とは、JR田町駅近くにあった木造住宅。
学びや出会い、まちづくりの拠点として、慶應義塾大学の教員・学生など有志と三田商店街振興組合の協働により、2006年9月からコミュニティスペースとして運営されてきました。
ゼミやセミナーのほか、「共奏キッチン♪」等のイベントの会場としても利用されてきたのですが、昨年10月、家主さんの都合もあって「閉家」されたのです。
この日のイベントの趣旨は、その7年余の活動をふり返りつつ、参加者全員の対話により、これからのコミュニティや場づくりに活かしていこうというもの。
主催は、「共奏キッチン♪」主宰者・たかったーさん始め、「三田の家」がなければ出会うことのなかったというボランティアの皆さん(共奏事ム局&Co.)です。
参加者はゲスト等を含めて70名ほど、交流スペースはほぼ満席。
実際に「三田の家」に行ったことのある人は半数程度のようです(後刻、行きたいと思っている内に無くなってしまった、という声を何人もから聞きました)。
前半は、たかったーさんの進行により、「三田の家」の運営に関わってきた「マスター」(慶應義塾大学の教員、学生の有志等からなる曜日毎の運営担当者)の皆さんからの話です。
(「三田の家」を始めたきっかけ、印象に残っていること等)
熊倉敬聡さん(木曜マスター。京都造形大 芸術表現・アートプロデュース学科教授、文化実践論等)
「前年にシラバスを出すようなことではなく、場づくりをしながら授業をしたいと思ったのがきっかけ。参加者数にこだわらず、少人数でも豊饒な時間を共有することができた」
坂倉杏介さん(木曜マスター。慶応大 グローバルセキュリティ研究所特認講師、コミュニティ論)
「予期しないことが起こる、予期しない人と会えるのが「三田の家」の魅力。計画性ばかり重視せず、偶然性や即興性を受け入れていくことが、ライフスタイルとしても必要」
手塚千鶴子さん(月曜マスター。慶應大 日本語・日本文化教育センター教授、多文化間カウンセリング等。)
「留学生と交流する場がなかったことが、「三田の家」に関わったきっかけ」
塩原良和さん(火曜マスター。慶應大法学部教授、国際社会学)
「自分のライフワークは多文化共生。共生していくためには物理的な空間、居場所が必要であることを、改めて「三田の家」から学んだ」
上田謙太郎さん(慶應大卒、映像作家)
「学生の頃からアシスタントとして関わった。大学の近くにあり、覗くと誰かがいて、家族でもないのに一緒に食事を作って食べたりしたのが不思議な感覚で新鮮だった」
(キッチン、食事とコミュニケーションについて)
坂倉さん 「キッチンは、調理のためのバックヤードではなくコミュニケーションの場としてデザイン。大きなテーブルを置きみんなで料理ができるように。居間に座ってのコミュニケーションに疲れたときの「逃げ場」にもなる」
手塚さん 「一緒に食事を作る、食べる、片づけることは、コミュニケーションにとって非常に重要」
塩原さん 「教室でのゼミよりお皿を洗いながらの方が、コミュニケーションが不得手な学生も参加しやすい。すべての教室にキッチンを作るべきとさえ思う」
(「三田の家」以後の活動等について)
塩原さん 「横浜市の鶴見区役所と連携して、高校生達のための「居場所づくりプロジェクト」を進めている」
熊倉さん 「昨年の春に京都に引っ越し「三田の家」の規模を大きくしたような「Impact Hub Kyoto」を立ち上げ中。また、新著「瞑想とギフトエコノミー」を上梓。
手塚さん 「これからも月一回程度でも続けていきたいので、現在、場所を探しているところ。寺の本堂やマンションなど、「三田の家」のコンセプトを残したかたちで進めていきたい」
坂倉さん 「港区と連携して設置した「芝の家」等で、多様な人たちによる街づくりのネットワークづくりを支援する「ご近所イノベーション」という活動に取り組んでいる。
上田さん 「三田の家」で培った人脈を活かしつつ映像のワークショップを進めている。月には世田谷美術館でドキュメンタリオペラを上演予定。
角田さん(スタッフ)「週末だけでビジネスを実現させる「スタートアップウィークエンド」という起業イベントを、神奈川・舞鶴で計画中」
休憩後の後半は、参加者全員による対話の時間です。
まず、「今、あなたの心の中にどんな言葉が生まれていますか」。
前半の話を聞いて浮かんできたキーワードについて、周りの5人ほどのグループで話し合い。
続いて、「あなたが三田の家から引き継ぎたいものは何ですか」について。
さらに他の人たちと話し合いたい具体的なテーマがある人は、紙に書いて前に並ぶことに。
出されたテーマは20ほど。
例えば、エロスとアガペーについて、あなたの求める場・コミュニティとは、場の持つ引力について、認知症と街づくり、酵母を活かしたカフェ、植え込みの陰影、空気の色と深さ等々。多彩なものです。
これらについて、興味のあるテーマを掲げた人の回りに集まってグループで対話し、その内容を大きな模造紙に書き出して代表者から発表。様々なアイディアが書かれた紙が次々と貼られていきます。
最後に、マスターの皆さんから一言ずつまとめの言葉を頂いて閉会。
その後、同じ場所で交流会。
「三田の家」を作った人、運営に携わっ人、「三田の家」の思い出がある人、行けなかった人など、それぞれコミュニティの場づくりに強い関心があり、あるいは具体的に実践されている方ばかりです。
さて、余韻が残る翌1月20日(月)は二十四節気の「大寒」。
中心的な運営メンバーの一人だったKさんの喪失感は大きかったようで、この日、近くの公共施設の一室を個人的に借りて「場」を設定。
広く声掛けはされなかったそうですが、やはり「三田の家」の余韻に浸りたい人が三々五々、入れ替わりで訪ねてきたそうです。
近くの「三田の家」を訪ねてみると、外見は変わらないように見えるものの、入口は固く閉じられていました。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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