2014年6月14日(土)17時、日本フードシステム学会の20周年記念大会を中座して(すみません)、向かったのは「シェア奥沢」。
ふだんは渋谷経由の東急東横線を利用するのですが、この日は文京区弥生の東大前からメトロ南北線・東急目黒線で奥沢で下車。初めて降りた駅です。
途中、奥澤神社に立ち寄ると、ありました。藁で作った大蛇が鳥居に掛けられています。
5月に東京・清瀬市で「下宿ふせぎ」というお祭りを見学してブログに掲載したところ、「共奏キッチン♪」で知り合った方から、奥澤神社にも同じような大蛇があると教えて頂いていたのです。
厄除けの大蛇は、清瀬では村の入り口の2本の木に差し渡すように掛けられていましたが、ここでは鳥居に掛けられています。大きな目が下を通る人を睨み付けている姿はそっくりです。
このような行事、私は清瀬で初めて見て驚いたのですが、各地にあるのでしょうか。
徒歩数分でシェア奥沢に到着。みんなで料理する賑やかな声が、扉の外からも聞こえます。
この日の「共奏キッチン♪」は「ポコ・ア・ポコ農園スペシャル☆」。
ふだんはフラットな会なのですが、この日は、いつも野菜を提供して下さっている茨城・那珂市の「ポコ・ア・ポコ農園」の和知さんご一家をゲストにお迎えしての特別編です。
13時半からの第一部は、スペルト小麦(原種の古代小麦)の脱穀と自家産全粒粉スコーンづくりワークショップが行われたそうです。参加された方の1人は、早速、ご自身のイベントにスコーンづくりを取り入れられるとのこと。
着いた時には第二部の料理が始まっています。みんなで作ってみんなで食べる、いつもの共奏キッチン♪と同じです。
ポコ・ア・ポコ農園から取り寄せた野菜を中心に、次々と料理ができていきます。
インカのひとみ(小ぶりのジャガイモ)を揚げたもの、野菜かき揚げ、ジャガイモ・玉ねぎと豚肉の煮物、ワカメとニンジンの酢味噌和え、マカロニのペペロンチーノ風など。
おむすびは、共奏キッチン♪の主催者・たかったー氏が通っている新潟・上越のお米です。
大きなテーブルに並べられ、好きな飲み物を手に乾杯、食事タイム。
自家製の赤大豆納豆、蕎麦がきを揚げたものを持参して下さった参加者の方も。
和知さんの野菜は、エディブルフラワーや各種ハーブも添えられ、見た目も鮮やかなサラダにもなりました。
また、世田谷の農家・せいさんは、今回もご自宅で獲れた野菜を持ってきて下さいました。
せいさんによると、同じキュウリでも夜中に受粉したものは星の形に、特に愛情を込めて育てたものはハート型になるそうです。ちなみに放任しているとしがらみが無く、カドが取れて「まんまる」になるとのこと。
農業とは奥の深いものであることを、改めて教えられました。
食事が一段落したところで、小さな元気な子どもさん3人を連れて参加して下さった和知さんご夫妻から話を伺います。
進行はたかったー氏。
和知健一さんは1970年茨城県生まれ。
いったん電気メーカーに就職されましたが、やはりやりたいこと(農業)をしたいと退職、大学の農学部、日本農業実践学園(水戸市内原)、八ヶ岳中央農業実践大学校で学ばれたそうです。
大学等で学んで驚いたことの一つが、現在の種子はほとんどがF1(子孫を残せない交雑種)ということだったそうです。
その後、青年海外協力隊員(トマト栽培)として赴任したメキシコで価値観が変わったそうです。
途上国は経済的には恵まれていなくても子ども達も元気。ところが経済的に豊かなはずの日本人はいつも楽しそうではなく、毎年、多くの自殺者を出しているという現実。本当の豊かさ、精神的な豊かさはお金とは関係が無い、と。
そして帰国後、茨城・那珂市で新規就農され、マルチ等の資材やたい肥も使わない自然農法(無農薬、無肥料、自家採種)で多品目の野菜を栽培し、レストランや消費者と直接取引(宅配)されているそうです。
一方、奥さまの則子さんは兵庫県のご出身、健一さんとは八ヶ岳中央農業実践大学校での同窓生だったそうです。
卒業後は大学校の職員を続けながら、メキシコに単身赴任された健一さんと結婚・入籍。
帰国された健一さんと新規就農した当初は、パン屋さんにアルバイトに行かれるなど苦労されたそうですが、現在はその経験が様々なイベント等で役立っているとのこと(この日の第1部でもスコーンの焼き方等を伝授して下さいました)。
則子さんは、性別や年齢のみならず、国籍や障がいの有無も一つの個性ととらえ、さらに不登校など社会に馴染めない人たちも含めて、農園を多くの人たちの交流と相互理解の場にしたいそうです。
ちなみに、ポコ・ア・ポコ農園はWWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms;世界に広がる有機農場での機会)のホスト農家として、積極的に外国人研修者を受け入れているとのこと。
そして今、健一さんが最も強い関心を持っているのが「命」。そして、命をつなげていくこと。
昨年秋、初老の夫婦が農園を訪ねて来られ、ビニール袋に入ったホウレン草の種を託されたというエピソードも紹介して下さいました。
福島で1人暮らしされていた夫人の母親は、原発事故から避難して来られた時、自宅で栽培していた在来種のホウレン草の種を持ってこられたのだそうです。
(本年1月27日付け東京新聞1面で「望郷のホウレンソウ」として紹介されています。)
このホウレン草の種を受け継いだということは、そのお婆さんの気持ちを受け継いだということ。決して粗末には扱えないと、健一さんは語っておられました。
最後に則子さんから、7月5日(土)のイベント「小麦の収穫祭!夏の自然農の畑でつながろう」を紹介して下さいました。
自然農の畑というのは、私はあまり見たことが無いので興味があります。
話の途中、ずっとはしゃいでいた3人の子ども達。
木の床の広い部屋は心地よかったようです。進行役のたかったー氏は、いつしか座布団の山に沈没。
イベントが終わることには、お兄ちゃん二人は寝入ってしまいました。
その後は、いつものように参加者からの告知タイム。
例えば、6月21日(土)田園調布での「☆夏至の日~青空ワークショップ~」。東京でも自然を感じるためのイベントだそうです。
6月28日(土)には、神楽坂で『夕凪の街 桜の国』上映会が開催されるとのこと。広島の原爆の映画だそうです。
港区芝で子ども達のちいさな遊び場「しゅんさくの部屋」を開設されているモジャ頭の男性。
ポコアポコ農園に定期的に通っておられる方からは、ブログ等の紹介がありました。
私からは、6月23日(月)の「杉本鉞子『武士の娘』を手掛かりに異文化交流を考える会(第1回)」を案内させて頂きました。
(全部を紹介できなくて済みません。)
最後に、オーナーの堀内正弘先生からご挨拶。
「シェア奥沢は、もともと祖父の隠居部屋だったのをみんなの力で改装してできたスペース。みんなの思いが重なり合っている。環境省の「Fun to Share」キャンペーンにも参加している。
先日はNHKの夕方のニュースでも取り上げてもらったが、地域コミュニティづくりや空き家活用のモデルケースとして、地域で循環を作りあげていく拠点にしていきたい」との力強いお言葉がありました。
シェア奥沢では、毎日のように様々なイベントが開催されています。「共奏キッチン♪」も月1回程度、開催されます(FBページで告知されます)。
ご関心を持たれた方、どうぞ足を運んでみて下さい。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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