「護憲のための改憲」「カウンター・デモクラシー」

 2015年9月13日(日)は、また曇り空。時々細かな雨が落ちてきます。晴天は2日間で終了。
 自宅近くの市民農園。福島から頂いてきた綿は、こちらでもたくさんの花を着けています。
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 東京ゴマ01プロジェクトの黒ゴマは、元は東京・檜原産のものを、プロジェクトのリーダー・てっさんが地元の奈良で栽培し収穫したものを頂いたもの。強い雨にも倒れず、弾け始めて、サヤから黒ゴマが除いています。
 まだ緑のままの数本を残して茎ごと収穫。室内で乾燥させてから選別・調製です。
 秋冬作の作業をしなければ・・・。
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 午後から東京・市ケ谷のJICAビルへ。
 17時から開催されたのは、Human Rights Cafe「紛争解決請負人・伊勢崎賢治さんと語る安保法制、そして日本のあるべき貢献」と題するセミナー。 若い方を中心に60名ほどで満室です。
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 冒頭、主催者である国際人権NGOヒューマンライッ・ナウ(HRN)事務局長の伊藤和子さん(弁護士)から、HRNの紹介を兼ねて開会の挨拶。
 「今回は安保法制と日本の国際貢献のあり方がテーマ。戦争は最大の人権侵害であり、 世界のNGOの仲間とともに安保法制に反対する共同声明も出した」
 講師紹介に続く伊勢崎先生の講演と質疑応答の概要は、以下のようなものでした。
 (文責・中田。このブログ全体の文責はもともと中田個人にありますが。)
 「国際法について議論する機会を頂き感謝。自分は大学教授でもあるが基本的には海外 で働く実務家 (ピースキーパー)。
 海外で働くと国際法の重要性がよく分かる。もっとも重要なのは国連憲章で、その下に国際人権法や国際人道法がある。ちなみに国際人道法とは人道的に戦争をするためのルールを定めたもので、交戦権がないはずの日本も批准」
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 「国連憲章が定める自衛権には個別的自衛権と集団的自衛権がある。両者は対のもので、攻撃された場合に暫定的に交戦が許されるという固有の権利。これらとは別に集団防衛がある。紛らわしいので自分は国連的措置(集団安全保障)と呼んでいる。これは国連加盟国としての条約上(契約上)の義務。
 国際法上、武力行使が認められるのはこの3パターンだけ」
 「かつては停戦監視等を目的としていた国連PKO も、ルワンダのジェノサイドを止められなかった教訓(トラウマ)から、現在は住民保護や治安維持が主目的となるなど大きく変容している。
 現在、自衛隊を派遣している南スーダンでは、これまで2度にわたり停戦合意が破られており、既にPKO派遣5原則は成り立っていない」
 「アメリカの政策も大転換している。イラクでもアフガンでも、もはや武力では解決できないことが分かった。旧宗主国を含め、今は国連PKOに部隊を出す先進国はない。
 わが国はテロ特措法、イラク特措法等で、既に集団的自衛権を事実上行使してきたと言える。今回の安保法制の議論で、これまで積み重ねてきた理論の様々な矛盾が明らかになってきた」
 「憲法9条は改正されていないが、解釈の「相場」は変動してきた。30年前であれば自衛隊も違憲とする憲法学者が多かっただろう。今回の安保法案については、昨年、国民安保法政懇で議論した」
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 「近く安保法案は成立するだろう。その後は、それが絶対に運用されないよう市民運動を継続していく必要がある。自衛隊の根本的な法的地位を国民に問うことなく、自衛隊を海外に送るべきではない。
 今回の法案の狙いは、集団的自衛権ではなく集団防衛に自衛隊を出すこと。権利と義務を混同してはならない」
 「完全非武装の監視団を送ってはどうか。日本には平和主義という、言わばお家芸としての蓄積がある。
 私は護憲派だが、護憲派にはオルタナティブがないのが弱点。護憲的な改憲案を考えるべき時期かも知れない」
 翌14日(月)のタ方は、東京駅にほど近い八重洲ブックセンターへ。
 長谷部恭男先生『検証・安保法案ーどこが憲法違反か』(有斐閣)刊行記念の講演会です。
 参加者は50名ほど。昨日に比べると年齢層は高く、仕事帰りのサラリーマンのスーツ姿も。
 定刻の19時に講演がスタート。壇上には椅子とテーブルが準備されていましたが、最後まで聴衆に一番近いステージの隅に立ったままで話をされました(同様に文責・中田)。
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 「6月4日の憲法審査会で集団的自衛権の行使は憲法違反との意見を述べたことが、その後、予想しないような大きな社会の変化につながった。これは国民の間に疑念やエ ネルギーが溜まっていたため。9条の専門家でない憲法学者も声を上げ始めた。
 これらに対して政府与党は、理論的に正面から反論しようともしない」
 「立憲主義には様々な定義があるが、基本は憲法によって政治権力を縛るということ。
 集団的自衛権を行使するためには憲法改正が必要というのが、これまで政府が精緻に積み上げてきた議論。これを一内閣が解釈で変更すのは、立憲主義を破壊しようとする深刻な話」
 「私的懇談会に過ぎない安保法制懇の報告を受けて昨年7月に閣議決定、そして今年5月に突然法案が出てきた。その間、審議会等で表だった議論もなされていない」
 「我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変わったという議論があるが、経済平和研究所「Global Peace Index」によると、日本はアイスランド、デンマーク等に続いて世界で8番目に平和で安全な国。 ちなみに米国は94位、中国は124位、最下位はシリア。
 つまり、今まで通りのことを しておけばいいのではないか」
150914_2_convert_20150917015422.jpg 「仮に世界各地で米国に協力したからといって、米国が中国相手の戦争を決断する可能性は小さい。抑止力は高まらない」
 「民主主義と立憲主義は対立するとの議論がある。選挙で選ばれた国会議員の多数決を憲 法が縛るのはおかしい、と。
 しかし、選挙とは色んな政策の抱き合わせ販売のようなもの。フランスの民主主義学者ピエール・ロサンヴァン氏が提唱する「カウンター・デモクラシー」とは、選挙など通常の民主主義のプロセスに対抗軸を設けるという考え方。デモもカウンター・デモクラシーの一形態」
 「デモには自分も何度か参加している。
 9月6日の新宿でのデモの際、ある野党の代表が「動員ではなく、多くの人が自らの判 断で抗議の声を上げようと自発的に集まるようなことは今までなかった。憲法の精神が日本社会に根付きつつある、日本は本当の民主社会になりつつある証拠ではないか」と演説。感銘を受けた」
 「安保法案の採決は近いといわれているが、まだまだあきらめない。 法律の取り消し、請願、訴訟など、成立後でも対抗する手段はいくらでもある。最高裁も、いざという時には判断するだろう」
 今回、お話を伺ったお二方はいずれも安保法案に反対のお立場の方です(ニュアンスに差はありますが)。むろん、賛成している方もおられます。
 しかし世論調査や連日の国会前デモの様子等をみていると、安全保障問題については、さらなる基本からの議論が必要と感じます。そして何より、自らが主体的に考えていく必要があります。
 手掛かりとして、伊勢崎先生がおっしゃった「護憲のための改憲案」、長谷部先生が紹介された「カウンター・デモクラシー」について勉強してみようと思っています。
 そのようななか、安保法案は昨日、参議院の特別委員会で可決され本会議に緊急上程されています。
 今日(2015年9月18日)は、日本の安全保障政策について歴史的な日として記憶されるのかも知れません。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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“「護憲のための改憲」「カウンター・デモクラシー」” への1件の返信

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    はじめまして。
    私も半年ほど前に同じ題名でブログを書きました。
    今回の安保法案があれだけの反対に拘わらず採決されたように、憲法もいつか必ず改正されるだろうと強い危機感を持っています。それならばいっそのこと護憲派が真にリベラルな憲法案を提出して、保守政党より先に(日本国憲法を日本国憲法に)憲法改正してしまう方がよいのではないかと最近思うようになりました。
    http://blog.livedoor.jp/peace_friend/archives/1027472758.html

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