古民家再生ワークショップ @さいはら(第1回)

 好天続くシルバーウィークの終盤、2015年9月22日(火)は山梨・上野原市の西原(さいはら)へ。
 都心から近いJR中央線上野原駅からバス又は車で1時間ほど、さいはらは山の中です。斜面のわずかなスペースさえ惜しむように耕されています。
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 11時過ぎに到着したのは、築150年ほどの古民家です。
 この日から1泊2日で、古民家再生ワークショップの第1回目が開催されるのです。
 隣にお住まいの長田さんファミリーと近所の方、東京のNPO法人エコ コミュニケーションセンター(ECOM)による共催。協力は、地元のNPO法人さいはらと、しごと塾さいはらプロジェクト
 空き家になって10年以上という古民家の中を覗くと、壊れた家財や建具が埃を被っています。
 (正直、「うわ、これを全部片づけるの?」とひるみました。)
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 作業に先立ち、長田さんのご主人(大工さんです。)の音頭でお清め。
 続いて長田さんの奥さまから、ワークショップの趣旨と経緯について説明がありました。
 「2007年に農家民宿をやりたくて移住、結婚して子どもができた。この空き家は、オーナーさんから自由に使っていいと言って頂き、ゆくゆくは田舎暮らし体験のゲストハウスとして整備し、地域の人と都会の人を繋いでいく拠点としたい」とのことです。
 さらに参加者から自己紹介。
 東京や神奈川、群馬等から約30名が参加。大学の先生と学生さん達、オーストラリア人の方も。
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 ECOM代表の森良さんからの挨拶に続き、ワークショップの講師である森田千史先生(都市農村交流コーディネーター、一級建築士)から、伝統的な木造建築物の保存の意義等について説明がありました。
 「今まで住宅やリゾート建築等の設計を手掛けてきたが、次第に伝統的な木造建築に魅せられ、各地で古民家等の再生や保存の活動に取り組んでいる伝統木構造の会にも参加。伝統木造建築は1500年以上の歴史。柔構造で耐久性が高く、美しく、日本の風土や気候にも適合している。自然の材料を使い解体や移築も容易という、合理的な構法。
 しかし、その価値が理解されず、各地でどんどん壊されているのが現状。昔の棟梁が何百ももつようにと、工夫と努力をつぎ込んで建てた古民家を再生・有効活用し、伝統構法の技術とともに次世代に伝えていくことが、私たちの役割」
等と、熱く語られました。
 私はワークショップの趣旨等についてよく理解しないまま来ていたのですが、ここでストンと落ちました。目からウロコです。
 (伝統木構造の優れた性質については、本記事の末尾に整理しました。)
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 そして今日、明日の作業内容の説明。
 中にあるものを運び出し、掃除して、床や柱を磨くというものです。
 まずは、家具や家財、建具も外してどんどん運び出します。
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 運び出したものは、家の前の庭に並べていきます。
 再利用するもの、処分するもの等に、大きく分けて山積みしていきます。
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 山はどんとん大きくなります。
 三階建の広い古民家に残されている家具や建具等は、大量です。
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 上棟式の時の幣束のような木の板も出てきました。森田先生が綺麗に埃を落としたのですが、生憎と年号等の記載はありません。文化財として申請する際に重要な証拠になるそうとのことです。
 農具や養蚕の道具も出てきました。
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 大量の古新聞や雑誌も。
 きちんと縛って大事に保存されていたようです。ついつい、見出しに目が行きます(歴史的な記事もあります)。
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 家具や家財を運び出した後の床には、分厚い埃が積もっています。
 新聞紙を濡らして撒き、ほうきで掃除していきます。
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 2階、3階も人海戦術でだいぶ綺麗になりました。何度か梁に頭をぶつけました。
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 家具や家財がほとんど運び出された後でみると、改めて広さが分かります。
 猿田彦命の掛け軸だけはそのままに。
 初日の作業はここまでです。
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 16時を回り、車に分乗して道の駅こすげ へ。
 小菅の湯はシルバーウィークのせいか混んでいます。
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 さっぱりと埃と汗を流した後は、地域の集会施設で夕食。地元の方達との交流会です。
 猪汁、手作りこんにゃくなど、地元の豊かな食材を地域のお母さん達が料理して下さったご馳走が並びます。
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 20時近く、再び車に分乗。
 この日は古在家神楽舞の日です。江戸時代から伝わるといわれ、毎年9月秋分の日前後の一晩、招魂社の祭礼として奉納されています。
 地域の方達に混じり、子どもたちや移住された若い方もステージに立たれていました。かなり練習されたそうです。
 22時を回り、寒くなってきました。
 演目はまだまだ続くようですが、集会所に戻って交流会の続き。そこそこ深夜まで。
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 翌日も快晴。
 かて飯(混ぜご飯)、カボチャの煮物などの朝食。ご馳走さまです。 
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 古民家へ。森田先生から今日の作業の段取り等の説明。
 残されている柱材等を方づけ、床や柱を磨くのが、この日の作業内容です。
 蚕が繭をつくる時に使う道具(紙製、折り畳み式)も出てきました。
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 2階、3階の床も、たわしを水に浸してごしごしと磨いていきます。
 ところどころ、床板が弱くなっているので気を付けながらの作業です。
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 時間をかけて磨いていくと、ただ黒っぽいだけだった柱や床には、次第に木の色や木目が現われてきました。ちょっと驚きです。
 再利用する建具も磨いて綺麗にします。
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 お昼は、地元のお母さん達がおむすびと団子汁、果物を用意して下さいました。
 畑で獲れた青唐辛子(辛い!)等は、お土産で頂きました。
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 2日目の作業は15時頃に終了。取りあえず、中は綺麗になりました。
 このワークショップ、次回は10月18日(日)に土台と床直しの作業を行う予定です(全4回を予定)。
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 帰途、車に乗せて頂き、しごと塾さいはらで使わせて頂いている畑の様子を見に行きました。
 一面に蕎麦が白い花をつけています。こちらも10月には蕎麦や大豆の収穫イベントを開催する予定とのこと。
 NPOさいはらの事務所にもなっている交流施設・びりゅう館に立ち寄り、飲みものなど買って、駅まで送って頂きました。
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 ECOMのニュースレターNo.164(2015年9月)に森田千史先生が寄稿されている記事では、伝統木構造の優れた性質として以下のように整理されています。
 1 外力(風、地震)に耐える性質 -柔構造
 2 耐久性 -経験の蓄積と工夫、リサイクルも
 3 美観性 -強度と美の統一
 4 風土性 -気候や地形、美意識等
 5 環境性 -自然環境との調和
 6 資源性 -省資源で再生可能
 7 建築材料の混用性 -木、土、石など適材適所
 8 移築が可能 -解体、組み立て可能
 9 保守性 -保守点検が容易
10 経済性 -矛盾する要求を満たす
150922_23_convert_20150930064041.jpg 正直、ワークショップの当日まで、古民家再生の意義等について全く理解していませんでした。建築基準法等の法制度を含め、近代日本は効率化を求め(過ぎ)てきたようです。伝統的な木造建築を再生・継承していく取組は、その限界を超えることにつながるという、大きな意味がありそうです。 
 作業の終わりに長田さんの奥さまが、1人ずつ手書きの宿泊招待券を手渡して下さいました。
 この古民家が、みんなの(地元と都会の人たちの)力でどのように再生されていくのか、大いに注目・期待していきたいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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