-低成長の中で広がる格差-
本メルマガでは、近年の社会経済情勢と食生活との関わりについて紹介してきました。今回は、改めて現在の日本の格差や貧困の状況について確認しておきたいと思います。
日本では「格差」が広がっていると言われますが、その際によく用いられる指標が「相対的貧困率」です。
これは、OECD(経済協力開発機構)の基準に基づき、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員の割合を示したもので、この数値が上昇すると格差が広がっていることを示しているとされます。
なお、データには厚生労働省「国民生活基礎調査」が用いられることが多いようです。
図66は、近年の日本における相対的貧困率の推移を現したものです。
これによると、世帯単位(全体)の相対的貧困率は1985年の12.0%から一貫して上昇しており、2014年には16.1%となっています。これはOECDの平均値(11.1%)を上回っています。
さらに、子ども(17歳以下)の相対的貧困率(属する世帯の所得から計算)も1985年の10.9%からおおむね上昇傾向にあり、2014年には16.3%(OECDの平均値:13.3%)と、世帯全体の相対的貧困率を上回っています。
なお、子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は14.6%、そのうち大人が1人の世帯の相対的貧困率は50.8%と、特に高い水準となっています。
図には、実質GDP成長率のグラフを併記してみました。
これによると、経済成長率が鈍化(右肩下がりに推移)しているのと対照的に、相対的貧困率は上昇を続けていることが分かります。
両者の因果関係を解明することは困難ですが、経済成長が停滞する中で格差が広がっていることは事実です。近年、「脱成長」という言葉がもてはやされていますが、経済成長を脱した(成長率が低下した)からといって格差が縮小したという事実はありません。
むしろ一定の成長を確保しつつ(経済成長至上主義ということではなく)、同時に、その果実を格差是正のために再配分するための施策の必要性を、このグラフは示唆しているようです。
[出典、参考等]
厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf
内閣府「平成27年版 子ども・若者白書」
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27honpen/b1_03_03.html
「F.M.豆知識」のページ
http://food-mileage.jp/category/mame/