【豆知識】横ばいで推移している自給率の意味

【ポイント】
 近年、カロリーベースの食料自給率はほぼ横ばいで推移しているのは、人口の高齢化や減少によって供給熱量が減少しているためであり、国内農業生産の縮小は続いています。

食料・農業・農村基本法の眼目の一つは、基本計画の中で食料自給率の目標を定めることです。2020年に閣議決定された現行の基本計画の中では、2030年度の食料自給率の目標としてカロリーベースで45%、生産額ベースで75%とされています。カロリーベース自給率(以下、単に「自給率」と呼びます。)は1960年度には79%ありましたが、食生活の大きな変化等を反映して2000年度には40%へと大きく低下し。その後はほぼ横ばいで推移しています。
 リンク先の図287は、2000年代に入ってからの自給率と、供給熱量(合計と国産・輸入の内訳)の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/03/287_jikyu.pdf続きを読む

【豆知識】増加する加工・調理食品への支出額

【ポイント】
 消費者は、ライフスタイルや嗜好の変化を反映して一貫して加工食品や外食への支出を増やしていますが、供給側の企業活動も影響しているとの指摘もあります。

18世紀半ばの産業革命以来大きく発展した資本主義は、食料や農業にも大きな影響を及ぼしてきました。消費者の食料消費のかたちも大きく変化しています。
 家計における食料消費の長期的な推移を示したものが、リンク先の図286です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/02/286_kakei.pdf続きを読む

【豆知識】農地面積に占める市民農園の面積の割合

【ポイント】
 東京、神奈川等では市民農園の面積の割合は特に大きく、都市住民が土に触れる貴重な場となっているとともに、農業や農村に対する理解を深める面でも重要な役割を担っています。

市民農園とは、非農家や都市住民がレクリエーション等のために、小面積の農地を利用して野菜等を育てるための農園のことをいいます。2022年3月末時点の日本の市民農園数(注)は4,235農園・187,006区画で、面積は1,293haとなっており、農園数、面積ともこの20年間で約1.6倍に増加しています。

(注)特定農地貸付法、市民農園整備促進法及び都市農地貸借法の手続きに沿って設置された農園の数値で、いわゆる農業体験農園(園主の指導の下に利用者が継続的に農作業を行う農園利用方式の農園)は含まれていません。

 このように増加が著しい市民農園ですが、全国の農地面積に占める割合は0.03%に過ぎません。ただし、この割合は地域によって大きな差があります(リンク先の図285参照)。… 続きを読む

【豆知識】栄養面、農業生産面における肉類の地位の変化

【ポイント】
 肉類は、食料消費面、農業生産面でますます重要となっています。しかしながら、産地や生産者・事業者の方たちのことを想像することが難しいことが、根深い偏見や差別が払拭されない一因となっていると考えられます。

日本人の食生活は、1960年代に高度経済成長が始まって以来、大きく変化しました。これほど大きく食生活が変化した国は、世界にはありません。
 変化の主役は、米と畜産物・油脂です。米の消費量はピーク時の約4割へと大幅に減少した一方、畜産物と油脂は数倍に増加しました。生活の急激な「欧米化」です。今回は、このなかで肉類を取り上げます。
 リンク先の図284は、栄養摂取及び農業生産面における肉類の割合の変化を示したものです。… 続きを読む

【豆知識】能登の農業

【ポイント】
 能登の農業生産条件は必ずしも恵まれたものではありませんが、多彩で特徴的な農業が営まれており、日本で最初の世界農業遺産にも認定されています。

石川県の能登地方(七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、志賀町、宝達志水町、中能登町、穴水町及び能登町)における農業の生産条件は、必ずしも恵まれたものではありません。
 リンク先の図283は、能登の農業についてのいくつかの指標について、石川県平均、全国平均と比較したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/01/283_noto.pdf続きを読む

【豆知識】2023年の振り返り

(【 】内の数値は発行号数。以下同じ。)
 今年は「経済学の父」アダム・スミス生誕300年、米市場を例に市場メカニズムについておさらい(消費者の行動変容の重要性を指摘)【281】。関東大震災からは100年目、人口等の東京圏への一極集中は当時からさらに進んでいます… 続きを読む

【豆知識281】市場メカニズムとは(米市場を例に)

【ポイント】
 水田農業の有する多面的機能等に対する消費者の理解が深まれば、米の価格上昇と生産量の増加が同時に実現。

市場メカニズムとは、価格と生産量は需要と供給のバランスが取れたところ(均衡点)で自然に決定されるというものです。
 リンク先の図281【1】は、現在の米市場です(あくまで単純化した概念図です)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/12/281_DS.pdf続きを読む

【豆知識280】福島県における避難者数の推移と現状

【ポイント】
 現在も、少なくとも約2万7千人の方々が避難を強いられています。

2011年3月11日、原子力緊急事態宣言の発令に伴い、放射性物質の放出・拡散による住民の生命・身体の危険を回避するため、避難指示(屋内退避を含む。)が発出されました。
 当初、避難指示が出された区域は福島県全体の面積の約12%という広さでしたが、徐々に縮小され、現在は2.2%(約300ha)となっています。とはいえ、現在も東京都23区の約半分の面積が帰還困難区域となっており、住宅の入り口はバリケードで閉鎖されたままです。
 リンク先の図280は、避難者の数の推移を示したものです。… 続きを読む

【豆知識279】供給熱量に占める米の割合と食料自給率の推移

【ポイント】
 カロリーに占める米の割合は約2割に低下しているものの、食料自給力の観点からは依然として「主食」。

「主食」とされる米ですが、その地位は現在も本当に「主食」と呼ぶのにふさわしいものでしょうか。
 リンク先の棒グラフは、供給熱量(食卓に並べられた食べもののカロリー)の推移について、主な品目別にみたものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/11/279_calorie.pdf続きを読む

【豆知識278】コンビニ経営の大きな負担となっている食品廃棄

前号で紹介したとおり、企業や家庭は大量の食品ロスを発生させています(2021年で523万トン)。食べものを捨てることがエシカル(倫理的)でないことは自明ですが、同時に、大量の食品ロスは経済(経営)面でも大きな負担となっています。
 リンク先のグラフは、2020年に公正取引委員会が実施した大手コンビニエンスストアチェーンの全ての加盟店を対象としたアンケート調査結果から作成したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/10/278_conveni.pdf

直近の会計年度におけるコンビニの1店舗当たりの収支状況をみると、売上高1億8,600万円に対して売上原価は1億2,887万円、うち営業費は2,299万円となっています。
 この営業費の内訳(円グラフ)をみると、従業員給与が1,500万円と全体の65%を占めており最も多くなっていますが、次いで多いのが廃棄ロス(468万円)で20%を占めています。… 続きを読む

【豆知識277】食品ロス量の推移(事業系と家庭系)

日本の食品ロス(本来食べられるのに捨てられている食品)の量は、2021年の推計値で年間523万トン。これは毎日、大型(10トン)トラックで約1,433台分、一人当たりにすると毎日おにぎり1個分(114グラム)の食べものを捨てている計算になります。
 また、日本の年間ロス量は、国連世界食糧計画(WFP)による世界の食料支援量の約1.2倍に相当します。
 そのような大量の食品ロスは、どのような段階や理由で発生しているのでしょうか。リンク先のグラフをご覧ください。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/10/277_loss.pdf

右端の棒グラフが最新(2021年)の推計値です。… 続きを読む

【豆知識276】規模別にみた農産物の出荷先

日本農業の最大の強みは、故・山下惣一さんによると「消費者が近くにいること」とのこと。その通りだと思います。
 生産者からみて消費者と連携するための一つの方法が、生産物の消費者への直接販売です。リンク先の棒グラフは、売上1位の農産物について、その出荷先別の経営体の割合を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/09/276_chokuhan.pdf

左端の棒グラフが全体(平均)です。
 2020年における売上1位の農産物の出荷先は、農協が64.3%と最も多く、消費者への直接販売は9.0%に留まっています。… 続きを読む

【豆知識275】農家人口の推移

農家数や就業者数に比べると、農家人口という指標はあまり注目されません。しかし、消費者から農(生産の現場)が遠くなってしまった要因を探る上では、重要な指標となります。
 リンク先の棒グラフは、農家人口(農家世帯員数)の推移を年齢階層別に示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/02/275_2_setaiin.pdf

 1960年の農家世帯員数は3,441万人と、総人口の36%を占めていました。つまり、人口の約4割は農家の世帯員(家族)だったのです。それが2020年には約349万人と約10分の1へと激減しました。なお、これは、農家数(29%)、農林業就業者数(16%)に比べても大きな減少率です。
 この結果、総人口に占める農家人口の割合は約3%へと大きく低下しています。… 続きを読む

【豆知識274】人口等の東京圏への一極集中

1923年9月1日(土)11時58分、相模湾北西部を震源としマグニチュード7.9と推定される関東大地震が発生しました。埼玉、千葉、東京、神奈川及び山梨県では震度6を観測し、昼食の時間と重なったこともあり多くの火災が起ったため、死者・行方不明者は約10万5千人(うち東京7万人、神奈川3万3千人)に及ぶなど甚大な被害がもたらされました。

被害が甚大となった要因の一つとして、東京等に人口が過度に集中していたことがあるとされています。
 添付先のグラフは、全国及び東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の人口(棒グラフ)及び全国の人口、GDP、耕地面積に占める東京圏のシェア(折れ線グラフ)の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/08/274_shuchu.pdf

関東大震災の前年(1922年)の日本の総人口は約5千7百万人で、うち東京圏には約8百万人と14%が居住していました。このシェアは関東大震災、終戦の時期を除いて現在まで一貫して上昇しており、2020年には29.3%(総人口1億2,600万人、東京圏3,700万人)へと上昇しています。… 続きを読む

【豆知識273】米の生産・消費量と食料自給率の推移

戦中戦後は、日本の歴史上もっとも深刻な飢餓に見舞われた時代でした。
 米は1941年4月に配給制に移行し、成人の配給量は一人一日当たり二合三勺 (約330g)と定められました。これを1年間に換算すると約120kgになります(1945年には約108kgに削減)。
 遅配・欠配が常態化していたとはいえ、実はこの量は、現在の米消費量(50kg超)の2.3倍に当たります。それでも、多くの戦災孤児等が飢えて亡くなっていきました。
 添付先の折れ線グラフにあるように、米の消費量は、現在まで一貫して減少しています。… 続きを読む