【豆知識】就業者一人当たり所得等の産業間比較

【ポイント】
 マクロ統計により就業者一人当たり純生産をみると、第一次産業は他産業に比べて4分の1程度の低い水準で推移しています。

前号では、水田作経営の農業所得が全経営体平均で10万円、主業経営体でも270万円と低い水準にあることを紹介しましたが、今号では個別経営に着目したミクロの統計ではなく、マクロ統計から産業間の所得等の比較を試みます。
 ここでいう「所得等」とは「国内純生産」のことで、付加価値額である国内総生産(産出額-費用)から固定資本減耗を除いた数値であり、雇用者報酬、経営主の労働報酬、企業の営業余剰等から構成されます。つまり、就業者の所得だけではなく企業の利潤等が含まれています。
 リンク先の図310は、就業者一人当たりの国内純生産について、1994年以降の産業別の推移を示したものです。… 続きを読む

【豆知識】いわゆる「時給10円」について

【ポイント】
 「時給10円」は統計的には問題のある数値ですが、いずれにしても農家の経済状態が厳しい状態にあることは事実であり、これに対する市民・消費者の理解が求められます。

「日本の農・漁家の時給は10円」という数値は、統計的には誤った使い方と言わざるを得ません。
 これは農林水産省「営農類型別経営統計」の2022年の「水田作経営」について、農業所得を自営農業労働時間で除した数値であり、まず、日本の農家全体を表すものではありません。
 また、労働時間には雇用者の労働時間を含んでいますが、雇用労賃は経費として農業粗収益から控除されており、収益と経費の差額である農業所得は含まれません。さらには、法人化している経営体(一戸一法人を含む。)の場合は、同様に労働時間には有給役員の労働時間を含み、農業所得には有給役員に対する給料、賞与、福利厚生費が含まれていません。… 続きを読む

【豆知識308】転機となった(?)2024年の日本の米

【ポイント】
 昨年(2024年)は、長期的に減少してきた米の作付面積や生産量が増加し、同時に低下傾向で推移してきた米の価格は大きく上昇するという、転機となったかも知れない年でした。

昨年(2024)年は、日本の米の生産と価格において転機となった年だったと記憶されるかも知れません。リンク先の図308は、米の作付面積と生産量、さらに消費者物価指数の長期的な推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/01/308_kome.pdf

下の棒グラフにあるとおり、水稲の作付面積(子実用)は、1976年の274万haをピークに1990年代半ばまでは変動しつつ減少を続け、それ以降もほぼ一貫してゆるやかな減少傾向で推移してきました。ところが2024年には136万haと、一転、1.1%増加したのです。… 続きを読む

【豆知識】2024年の振り返り

本年最初の配信では、能登では農業生産条件には恵まれてないながら多彩な農業が展開されており、日本初の世界農業遺産にも認定されていることを紹介しました[No.283]。
 東日本大震災・東電福島第一原発事故の関連では、原発被災者等からの相談内容が多様化・複雑化・深刻化している状況[No.288]、営農再開の状況は避難指示解除の時期等による差が大きいこと[No.304]、一方、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が増加傾向で推移していること[No.305]を紹介しました。

 日本の農林水産業や食料自給率については、日本の農林水産業総生産が諸外国と異なり一貫して減少している様子[No.300]、食料自給率が横ばいで推移しているのは人口の高齢化・減少により必要熱量が減少しているためであり、国内農業の縮小は続いていること[No.287]、食料自給率の目標が一度も達成されたことがない原因は想定以上に米の消費量が減少したこと[No.298]を紹介しました。

 資材価格の高騰が農産物価格に十分には反映(転嫁)されておらず[No.301]、米が「高騰」しても生産コストを賄えていない状況が続いていること[No.296]を紹介しました。
 また、小規模層では「田んぼの見回り」等に多くの時間が費やされるなど丁寧な稲作が行われているデータ[No.292]、新潟県では昨年と同様、猛暑が続いていること[No.297]も紹介しました(幸い昨年のような大不作にはなりませんでした)。… 続きを読む

【豆知識】衣類のマテリアルフロー

【ポイント】
 日本では手放された衣服の65%がごみとして廃棄されており、リユース、リサイクルされる割合はそれぞれ17%、18%にとどまっています。家庭での取組みが重要です。

「衣食住」という言葉があるほど、食料と同様、衣類は人が生きていくための必需品ですが、近年、大量生産、大量消費、大量廃棄による環境負荷が国際的にも大きな課題となっています。
 リンク先の図306は、日本における衣類の供給から消費・廃棄までの流れ(マテリアルフロー)を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/12/306_SF.pdf続きを読む

【豆知識】営農型太陽光発電設備の許可件数等の推移


【ポイント】
 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)設備は増加傾向で推移しており、適切な営農と発電を両立させる取組みとしてさらなる普及が期待されます。 

営農型太陽発電とは、農地に支柱を立てて上部に太陽光パネルを設置し、営農を適切に継続しながら発電を行う事業のことです。太陽光を農業と発電で分け合うことから、ソーラーシェアリングとも呼ばれます。
 リンク先の図305の棒グラフは、営農型太陽光発電設備のための農地の一時転用許可件数の推移を示したものです(支柱の基礎部分について農地法上の許可が必要)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/12/305_solar.pdf続きを読む

【豆知識】原子力被災12市町村の営農再開面積割合の推移

【ポイント】
 原子力被災12市町村における営農再開面積の割合は全体で49.7%。市町村別にみると、避難指示開所の時期や帰還状況(居住率)による差が大きくなっています。

2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所では3基の原子炉が同時に炉心溶融(メルトダウン)をするという、世界最悪レベルの事故となりました。これにより大量の放射性物質が拡散され、福島・双葉郡を中心とする12市町村に避難指示が発出されました。
 リンク先の図303は、原子力被災12市町村の2011年12月末時点の営農休止面積に対する、営農を再開した面積の割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/11/304_saikai.pdf続きを読む

【豆知識】消滅(無人化)の可能性がある集落の割合

【ポイント】
 人口が特に少ない、あるいは高齢化が著しい集落については消滅可能性が高くなっているものの、全国的に多くの集落が消滅するといった状況はみられません。

中山間地域など過疎地域では人口の減少、高齢化が進行し、近い将来に消滅する恐れのある「限界集落」が全国的に増加していると言われています。
 リンク先の図303は、過疎地域において消滅(無人化)の可能性がある集落の割合を類型別に示したものです(市町村を通じたアンケート結果)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/10/303_kaso2.pdf続きを読む

【豆知識】過疎化・高齢化が進む中山間地域

【ポイント】
 大都市圏への一極集中が進む中、中山間地域等においては過疎化、高齢化が進行しており、その不均衡はさらに拡大することが懸念されます。

東京都など大都市圏への過度の人口・経済の一極集中が進む中で、中山間地域等においては人口・世帯数が減少するとともに、高齢化が進行しています。
 リンク先の図302は、国勢調査の市町村別の数値を農業地域類型別に組替え集計した結果です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/10/302_kaso.pdf続きを読む

【豆知識】農業生産資材価格の高騰

【ポイント】
 農業生産資材の価格は2021年頃から高騰し、現在も高い水準で推移しています。これらコスト上昇分は、農産物価格には十分には反映(転嫁)されていません。

肥料、飼料等の農業生産資材の価格は、国際需給の引き締まり、円安の進行、ウクライナ危機等の影響により、2021年半ば以降、大きく上昇しています。
 リンク先の図301は、2020年以降の主な資材価格指数の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/10/301_bukka.pdf続きを読む

【豆知識】農林水産業総生産の国際比較

【ポイント】
 日本の農林水産業の総生産は、先進国の中ではアメリカに次いで2位ですが、為替レートの影響もあり、他国と異なり一貫して減少しています。一人ひとりが将来の農業や食料供給のあり方について考えていく必要があります。

日本における農林水産業の地位について、国際的な比較を試みました。
 リンク先の図300は、国際連合の統計を用いて、主な先進国(G7各国及びオーストラリア、韓国、オランダ)の農林水産業の総生産(付加価値ベース)と、GDP(国内総生産)に占めるシェアの推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/09/300_GDP.pdf続きを読む

【豆知識】食料自給率の目標と米の消費量

【ポイント】
 過去5回の基本計画における食料自給率の目標は、一度も達成されたことはありません。その主な原因は、想定していた以上に米の消費量が減少したことにあります。

本年6月の食料・農業・農村基本法の改正を受けて、年度内に新たな食料・農業・農村基本計画が策定されることとなっており、近く審議会における検討作業も開始されます。
 基本計画は過去5回、5年ごとに策定(閣議決定)されてきており、法の規定に基いて、毎回、10年後の食料自給率(カロリーベース及び生産額ベース)の目標が設定されています。しかしながら、特にカロリーベースの自給率については、これまで目標を下回る水準のままで推移してきています。

リンク先の図298の上半分の折れ線グラフは、1960年以降のカロリー(供給熱量)ベースの食料自給率の推移を示したものに、過去5回の自給率の目標値をプロットしたものです。… 続きを読む

【豆知識】注視される8月の新潟県の気候

【ポイント】
 新潟県では、昨年の猛暑と水不足により米の品質が大きく低下しました、本年も昨年と同様、猛暑が続いており、8月の気候が気掛かりです。

昨年産の全国の米の作況指数は101と平年並み、1等米比率は60.9%(本年3月末時点。2022年産は78.5%)となりました。しかし都道府県別にみて最もシェアの大きい(8.3%)新潟県では、作況指数は95の「やや不良」となり、一等米比率は14.8%(2022年産は73.9%)と大きく低下しました。これが現在の米価格「高騰」の背景となっています(前号参照)。
 新潟県においては、昨年12月、有識者によって構成される研究会が要因分析と次年度以降の対策についての報告書を公表しました。これによると、品質低下の要因は“災害級の異常気象”ともいえる8月の高温と渇水とのことです。
 リンク先の図297は、一昨年末から今年7月にかけての新潟県内の4か所(高田(上越市)、十日町市、新潟市、相川(佐渡市))の気温と降水量等の推移を示したものです。… 続きを読む

【豆知識】「高騰」する米価格

【ポイント】
 米価格「高騰」等の報道が目立っていますが、過去の推移をみると現在の水準が安定的に継続するとは思えず、何より、生産コストを賄えていない状況が続いています。

7月16日に農林水産省が発表した6月の米の相対取引価格(2023年産米、全銘柄平均、速報)は、玄米60kg当たり1万5,865円となり、約11年ぶりの高値となりました。22年産米の通年平均価格と比べると約2000円(15%)上昇しています。某全国経済紙には「令和の米騒動か」などという不穏な見出しまで現れました。
 価格「高騰」の背景には、高温被害により23年産米の供給量が少ないことに加え、インバウンド(訪日外国人)による外食需要の拡大があるとされています。

それでは、現在の米の価格水準はどの程度高いのでしょうか。… 続きを読む

【豆知識】出生率が高い市区町村の特徴

【ポイント】
 出生率上位20位の市区町村は、人口が過度に集中していない、単独世帯が少ない、農林漁業のウェイトが大きい等の特徴があります。

本年6月の厚生労働省の公表によると、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は、2023年で1.20と過去最低を更新しました。これと市街化との関連を都道府県別にみたのが前号の分析でした。
 https://food-mileage.jp/2024/07/03/mame-294/

今号では、本年4月に公表されている2022年の市町村別の出生率を用いて、上位20市区町村の特徴を様々な指標から明らかにすることを試みました。リンク先の図295は、各種指標について、出生率の上位20市区町村と、全国平均、下位20市区町村を比較したものです(上位/下位の具体的な市区町村名等は図の脚注をご覧ください)。… 続きを読む