前日の強い風雨は夜のうちに収まり、2017年5月14日(日)の「母の日」は好天に恵まれました。
東京・八王子では、街路樹のマロニエが美しい花を咲かせています。
徒歩数分のアミダステーションへ。郊外にある延立寺というお寺の別院が、様々な市民活動の場として活用されています。
ここで10時時半から開催されたのは「八王子の江戸東京野菜・川口エンドウを知る講座&ランチ会」。
主催は多摩・八王子江戸東京野菜研究会。1階の会場は20名ほどの参加者で満席です。
鮮やかな研究会のユニフォーム(緑のTシャツ)がお似合いの石川敏之さんの進行で開会。
前半は研究会代表・福島秀史さんによる座学です。
「江戸東京野菜とは、種苗の大半が自家採種または近隣の種苗商により確保されていた江戸~昭和中期までの固定種の野菜で、現在、JA東京中央会により45種類が認定。
生産は減少傾向にあったが、近年、それぞれ物語があるなどの個性が注目され、地域興しや飲食店で活用される機会が増えてきている」
「そのうち八王子にあるのが、高倉ダイコン、川口エンドウ、八王子ショウガの3種類。幸い時期が違うために、1年中、楽しめる」
「川口エンドウは旧南多摩郡川口町にあったキヌサヤの在来種。1955年に農協が特産化を図ることを決定したため一時生産が増加したものの、連作ができないなど栽培が難しいことと宅地化の進行等により次第に生産は減少。
ただ1件の農家のみが栽培を続け、種採りを続けてくれていた」
「その貴重な伝統野菜を守ろうと2014年にプロジェクトを発足させ、現在は11人の農家で生産。共通のシールを貼るなどブランド化を図り、直売所等で販売するとともに市内の飲食店に食材として提供している。
小学校での栽培授業など食育にも活用されている。多くの学校から声を掛けてくれているが、なかなか手が回らない現状」
ご自宅で栽培されている各種エンドウ(今朝、切ったもの)を会場に飾ってくれていました。川口エンドウの花(下の写真中央)は、普通の赤花エンドウ(右)よりも赤みが強いとのこと(福島さんも何年か栽培を続け、ようやく見分けられるようになってきたそうです)。
休憩を挟みつつ2階に移動。ランチ会の準備が進められていました。
一人ひとりの箸袋や紙製のランチマットは、この日のために特別に準備して下さったようです。
左の写真の上は赤花エンドウ、下は日本キヌサヤ。右の写真の下がスナックエンドウ、そして上が川口エンドウです。
さらに古代種のツタンカーメンの5種類を食べ比べしました。
大きさなど外観、食感、甘さなどが微妙に異なります。
料理研究家の方が試作して下さったのは「おやき」。
形が細長いのは、川口エンドウが3本ほど丸ごと入っているためです。食感も驚きの美味しさで、将来的には商品化も検討されているとのこと。
続いて料理を担当された研究会の八幡名子さんから、メニューの説明がありました。野菜等は全て、福島さんの畑でとれたものを中心とした固定種だそうです。
ウェルカムドリンクは狭山茶(新茶)の炭酸割り。グラスもお洒落です。
プレートに並べられた宝石のような料理の数々。
そのラインナップは、焼き川口エンドウ(レモンオリーブオイル)、川口エンドウとクリームチーズのポテサラきゅうり巻き、後関晩生小松菜と滝野川大長ニンジン入り鶏ハム、紫水菜のハニーマスタード和え、ウドの芽の天ぷら、シントリ菜と菜の花、紫芽など。
そしてスナックエンドウは、研究会の加藤英輔さん(八王子で新規就農)の農場「さとやまべじふぁーむ」産とのことです。
ご飯ものは、12穀米の3色押し寿司~川口エンドウ・滝野川大長ニンジン・シントリ菜~木の芽乗せ。紅白二十日大根の甘酢漬けが添えられています。
汁物は川口エンドウと塩昆布の肉団子スープ。
最後のデザートは、後関晩生小松菜ゼリーの川口エンドウの豆添え。
見た目の美しさ、美味しさだけではなく、何とも手の込んだ、関係者の皆さまの熱意が感じられる料理の数々でした。
満腹したところで、参加者一人ひとりから一言ずつ、自己紹介を兼ねて感想等のシェア。
皆さん、多摩・八王子江戸東京野菜研究会の皆さんの熱意とおもてなしの気持ちに、大満足した様子です。
江戸東京野菜コンシェルジュ協会の納所二郎理事長を始め、それぞれの分野で活躍されている方が多く、様々なイベント等(例えば「はじめての江戸東京野菜講座(5/27・新宿)、江戸東京野菜トークショー&マルシェ(5/20・高尾)、NHK学園オープンスクール「江戸東京野菜って?-馬込半白胡瓜編」(6/24・国立)、第8回ロータス寺市(5/27・新宿)等)の告知もありました。
最後に福島代表から、新しく刊行された『江戸東京野菜ガイド』という冊子の紹介がありました。
全品目がカラー写真入りで説明されており、分布図や販売期間(旬の時期)も掲載されている等の力作です。本業が広告会社である福島さんのが企画・制作されただけに、デザインや装丁もお洒落な、初心者にも分かりやすいテキストになっています。
素晴らしいイベントでした。
前々日(5月12日)に参加したオーガニックツアー報告会では「オーガニックは環境保全や持続可能な社会への転換など、次の時代に向けての価値観(パラダイム)の転換の柱となっている」との話がありました。
この日のような地域に根ざした江戸東京野菜の復活・普及の取組みは、スローフードやオーガニックなど、世界の食や農の潮流と軌を一にする(あるいは先取りした)ものと考えられます。
関係者の皆さまのますますのご活躍に期待したいと思います。