【ブログ】郷土史と科学から見る地域の防災 @西東京市

去る8月27日(月)に西東京市で開催された「共奏キッチン@仙人の家#1」。
 その時の参加者の方から、興味深いイベントを案内頂きました。

それは「郷土史と科学から見る地域の防災」(主催・多摩六都科学館)。
 もとより郷土史や町歩きは大好きですが、防災との関わりは考えたことはなかったので、どんな内容かと思い参加することに。

2018年11月24日(土・祝)の10時前、西武新宿線・東伏見駅(東京・西東京市)南口を出ると、鮮やかなビブスを身に付けた人たち。
 受付をして保険料(50円)を支払うと、バインダーに挟んだ分厚い資料(何種類もの地図など)とビブスを渡されました。

参加者は30名ほど。
 スタート前に、防災科学技術研究所の増田和順(ますだかずより)先生からミニ講座。

ちなみに今回のイベントは講義とフィールドワークの2本立てとなっているのですが、増田先生の講義を受けていない参加者(私も)のために、その内容をダイジェストで伝えて下さったのです。

「水害等の被災地を調査すると、寺院や神社、旧役場跡地等は被災を免れていることが分かる。これらは戦国時代は戦略拠点(お城)でもあった。
 史跡や石碑に着目しながら実際に歩いてみることで、その地域の防災について考えることができる。古地図や国土地理院の土地条件図も参考になる」等(文責・中田)。

そして、いよいよフィールドワークがスタート。4班に分かれ、頂いた地図を手に歩き始めました。
 私が所属したピンク班のリーダーは、ボランティア団体「西東京レスキューバード」のSさん(男性)とFさん(女性)のお2人。

駅前広場から路地に入って3分ほどで到着したのが氷川神社。水神(水の守り神)でもあるそうです。

鳥居の脇には石の手水鉢と「榛名大権現石造物群」の説明板。
 神社といっても明治以降に合祀等がされている場合も多く、その沿革を知ることも大切と増田先生はおっしゃっていました。

参道を下っていきます。かなりの高低差があります。

坂を下り切って早稲田大学東伏見キャンパスの間を抜けると、石神井川に到りました。
 護岸改修されていますが、かつてはかなりの暴れ川だったとのこと。

橋を渡り、木の手すりのある階段を登ります。

登ったところは平坦な広場。
 ここが下野谷(したのや)遺跡公園です。

教育委員会の学芸員・亀田直美さんが待っていて下さいました。
 縄文時代中期(今から約5千年前から4千年前)の環状集落で、南関東では有数の規模とのこと。2015年には国の史跡に指定されているそうです。

各自にタブレットが配られました。
 スイッチを入れると遺跡の地図が現れ、その中の鳥のマークをタップしてジャンプすると、何と鳥の目から見た縄文時代の姿が画面に現れます(!)。

早稲田大のグラウンドがある地域は、石神井川の氾濫域内(湿地帯)にあったことが分かります。富士山や、南十字星までも望めます。
 なお、このVR(バーチャル・リアリティ)のコンテンツはスマホのアプリでも見ることができるそうです。

遺跡公園を出て、再び住宅街の中を進みます。やはり下りになっています。
 100メートルおきに設置されている消火器、マンホール(水道、消化栓、汚水等と表示)、公衆電話(数が少なくなり、子ども達は使い方を知らないとのこと)等について説明して下さいます。

小学校には防火水槽。「ひなん広場及び避難施設」との表示もあります。
 「広場」と「施設」の意味(違い)も説明して下さいました。

東伏見稲荷の赤い鳥居が見えてきました。境内は高台にあることが分かります。
 七五三の家族連れの姿も。

歩きながらお話を伺うと、Sさんは東日本大震災をきっかけに地域の防災のことを何も知らないことに気付き、社会福祉協議会主催のの災害ボランティア養成講座を受講、現在はボランティアとしてそれを伝える活動をされているとのこと。
 Fさんも、防災に限らず様々な地域活動をされているそうです。
 お二方とも私よりご高齢とお見受けしましたが、頭が下がる思いがしました。

厳重に護岸工事をされた石神井川を眺めつつ、最終目的地の柳沢公民館へ。
 会議室では、教育委員会の亀田さんが発掘された土器を見せて(触らせて)下さいました。

グループ毎にテーブルに座り、フィールドワークの振り返り。

参加者からは「今まで意識したこともなかった消化栓やマンホールに気付くことができた」「実際に歩いてみて高低差を実感することができた」等の感想が出されました。
 これらに対してSさんから、「今回の町歩きを参考に、ぜひ住んでいる地域の『マイ減災マップ』を作ってほしい」等のアドバイス。

最後に増田先生から「人間は見かけ上の地理や地形を変えてきた。地域の歴史を学びハザードを知ることは、防災・減災の観点からも重要」等の話があり、さらに、防災科学技術研究所が作成した子ども向けの通学路の危険な場所を点検するためのイラストが紹介されました。

12時30分頃に解散。
 わずか2時間半のフィールドワークでしたが、勤労感謝の日(新嘗祭)にふさわしい非常に実りあるイベントでした。
 主催者及び西東京レスキューバードの皆さま、お世話になり有難うございました。