◇フード・マイレージ資料室 通信 No.156◇
2018年11月22日(木)[和暦 神無月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識 現代高校生の朝ごはん
◆ O.カレント 新嘗祭(勤労感謝の日)
◆ ほんのさわり 網野善彦『日本の歴史』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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時候は二十四節気の小雪(しょうせつ)。街中の銀杏も色づき、北国からは雪の便りが届く季節になりました。
和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している拙メルマガ、今号は 和暦 神無月十五日の配信です。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
-現代高校生の朝ごはん-
日本における米の消費量は長期的に減少を続けています。
年間1人当たり消費量は、戦後のピークであった1962年の118kgから2018年には54.4kgと、半分以下になっています。全国ベースでみると、毎年8万トンずつ需要量が減少しているのです。
そのようななか、若い世代に「ご飯」回帰が進んでいる可能性を示す興味深い調査結果があります。
農林中央金庫では、各世代を対象に食に関する調査を継続して実施していますが、2017年には高校生を対象に、“食”に関する意識と実態を探るための調査を実施しました。調査対象は東京近郊の400人(男女各200人)です。
また、同様の調査は2006年、2012年にも実施されていることから、この間の意識の変化を探ることもできます。
リンク先の図110は、「ふだん、朝ごはんに食べているもの」について質問した結果です(複数回答)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/11/110_koukousei.pdf
これによると、2017年には「ごはん」が71.5%と、初めて「パン」(70.7%)を上回りました。
ふだん朝ごはんにごはんを食べている高校生は、2006の51.0%、2012年の67.4%から今回は71.5%と増加しており、朝食は「ごはん派」の高校生が増えている状況が伺えます。
なお、この状況は男女差が大きく、男子は「ごはん派」が多いのに対し、女子では今も「パン派」が多くなっています。
[資料等]
農林中央金庫「第3回 現代高校生の食生活、意識と実態調査」(2017.5)
https://www.nochubank.or.jp/efforts/research.html
農林水産省「米をめぐる関係資料」(2018.7)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-171.pdf
◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
-新嘗祭(勤労感謝の日)-
明日(11月23日)は勤労感謝の日。戦後(1948年)制定された祝日法では「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」国民の祝日とされています。
この日は、もともと宮中行事である新嘗祭(にいなめさい、しんじょうさい)が行われる日でした。
新嘗祭とは、天皇が米を始めとする新穀を神に捧げ、自らも食することで、収穫に感謝するとともに、毎年の稲作豊穣を祈るというもので、宮中行事の中でも最も重要な儀礼とされています。
また、新たな天皇が即位して最初に行う新嘗祭は、特に大嘗祭(だいじょうさい)と呼ばれ、天皇の代替わりに伴う国家最高の儀式とされています。
新嘗祭・大嘗祭は、天武天皇(在位673~686年)の頃に始まりました。
律令国家を成立させた天武天皇は、式念遷宮など伊勢神宮の諸制度を整備するとともに、新嘗祭・大嘗祭の制度化にも力を注ぎました。新嘗祭で捧げられる米は、全国各地から献上されたものが用いられました。つまり、地方豪族に天皇への服属を確認する儀式でもあったのです。
やがて米は、天皇が祭祀を司る“聖なる”食べものとして、日本社会において大きな地位を占めることとなりました。そして戦後の祝日法では、米作りは勤労の象徴とされたのです。
いずれにしても明日は、勤労者の皆さま(家庭内勤労者の皆さまも含め)、お互いにねぎらい、感謝し合いましょう。
[参考]
原田信男『コメを選んだ日本の歴史』(2006/5、文春新書)
http://food-mileage.jp/2018/09/17/hon-151/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
-網野善彦『日本社会の歴史』(上、中、下、1997.2、岩波新書)-
https://www.iwanami.co.jp/book/b268321.html
前項(オーシャンカレント欄)のとおり、米(稲作)は日本の歴史において重要な地位を占めていますが、これについては異論もあります。その代表がいわゆる「網野史観」です。
日本中世史を専門とする網野は、非農業民(漁民、職人など)に着目することで、日本を農業国家とする通説(農本主義)に異を唱えました。また、稲作祭祀を司る天皇の支配権力が及ばない「無縁、公界、(くがい)、楽」等の存在も明らかにしています。
本書下巻の最終章では、痛烈な「農本主義」批判が展開されています。
近世から現代は、本来、網野が専門とする時代からは外れる部分ですが、例えば、明治政府以降の指導者たちは、日本国を稲作を中心とした農業国家(瑞穂国)と捉え、その「虚像」を社会に深く浸透させたとしています。
そして、国内農業を発展させることを至上の課題に位置づけ、農地の少ない島国で人口を支えることの危機感を国民の間に増幅させたというのです。
その後、「大日本帝国」は台湾、朝鮮半島、満州(中国東北部)等を植民地としていきましたが、その動機の一つに「農業、食糧問題の解決が意識されていたことは明白である」と断じています。
さらには「これら地域において水田を開拓するとともに、神社を建て、その信仰を強要した」「はかり知れない苦痛をアジアの多くの人々に与えた事実を認識すべき」等とも論じているのです。
このような「網野史観」に対しては様々な批判もあります。
前項で参考とした原田の著作も、網野の「反水田中心史観」への反論が執筆の動機であったことが記されています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ CS まちデザイン・福島スタディツアー2018(いわき市)1/2[11/9]
http://food-mileage.jp/2018/11/09/blog-156/
○ CS まちデザイン・福島スタディツアー2018(いわき市)2/2[11/10]
http://food-mileage.jp/2018/11/10/blog-157/
○ 新潟・上越市大賀の「秋上げ」(Fw:東北)[11/17]
http://food-mileage.jp/2018/11/17/blog-158/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 酒蔵 de BBQ-
日時:11月25日(火)11:00~15:00
場所:(株)釜屋(埼玉・加須市騎西1162)
主催:加須カレー研究会
(詳細、お問合せ先等↓)
https://kazocurry.jimdo.com/?fbclid=IwAR0s6IUSAEZtS8oFIJvUqG0R27n80PRC8OdwnXRwo-W3nuM5XpofaSnddEY
○ いまここファームの小豆収穫祭~名子のマメな日2
日時:11月30日(日)18:00~22:00
場所:なみへい(東京・中央区日本橋本石町4)
主催:八幡名子さん、江守敦史さん
(詳細、お問合せ先等↓)
https://www.facebook.com/events/2148174405436315/
○ 浜通りの農家を巡るスタディツアー2018
日時:12月1日(土)11:00~2日(日)16:00
場所:福島・双葉郡
主催:福島県有機農業ネットワーク
(詳細、お問合せ先等↓)
https://www.facebook.com/events/187747145478453/
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*今号のコツコツ小咄
「最初の頃は、どちらかに専念すべきと言う評論家も多かったけどね」
「二刀(二兎)流だけにね」
大谷翔平が新人王。メジャーの常識まで覆してしまいました。
コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
http://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号 No.157は12月7日(金)[和暦 霜月朔日]の配信予定です(いよいよ12月です)。
より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
いつもありがとうございます。
http://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
https://archives.mag2.com/0001579997/
発行者:中田哲也
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
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ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
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発行システム:『まぐまぐ!』
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