第2回東雲会 @千葉大学(松戸)

2019年3月9日(土)は好天。花粉の飛散(悲惨)はピークに。
 久しぶりに千葉・松戸の千葉大学園芸学部へ。
 隣接する戸定邸(水戸藩最後の藩主・徳川昭武の別邸)公園入り口の見事な紅梅は、盛りを過ぎつつあります。

キャンパスでは、早くもサトザクラがほぼ満開です。
 2011年前の4月から1年間、ここの大学院に在籍していました。あれから8年です。

千葉大学園芸学部100周年記念戸定ヶ丘ホールへ。
 ここで13時30分から開催されたのは、東雲(しののめ)会。昨年7月の第1回に続く2回目の開催です。

冒頭、この会の呼びかけ人でもある斎藤 修先生(千葉大・名誉教授)から開会の挨拶。

「第1回は台風のさなかに50人以上の参加があり、研究会・懇親会ともに盛会だった。現在、会員数は研究者、生産者、JA等生産者団体、食品会社、国・自治体、農業高校など180人を超えた。
 千葉大・園芸学部のOBを核にして、学科・学部を超えた知の拠点とネットワーク、若手研究者の支援の場づくりを目指したい」

「今回は約70名が参加。行政及び生産者から新技術の活用も含む経営革新をめぐる報告を頂き、議論を行いたい」

続いて、戸定会(千葉大・園芸学部同窓会)の加藤一郎会長から「世代や学部を超えた研究会である東雲会を全員で育てていきたい」等の挨拶。
 寄付を受付中の松戸アカデミック・リンク(図書館)についての紹介もありました。

基調講演は、秋葉一彦さん(農水省・生産局技術普及課長)による「新たなイノベーションと経営革新について」。
 農業従事者の減少と高齢化、雇用労力も不足する中、栽培管理と作業の両面における技術革新によるスマート農業のイメージが提示され、自動走行農機や農業用ドローンの導入状況等について説明がありました。

また、テクノロジー分野毎の垣根は猛烈になくなりつつあり、農業技術のイノベーションも農業関係者以外の人が人が開発していることが多いとし、各分野、研究・教育機関を含めた関係者の垣根を越えた連携の必要性を強調されました。

続いて、3人の生産者の方からの報告です。
 最初は、米の大規模経営等に取り組んでいる浅川拓郎氏さん(農業生産法人あづみのうか浅川)から、「私の目指す農業経営」と題した報告。斎藤先生によると、長野県における若手生産者の代表とのこと。

県の事業を活用してトヨタカイゼン方式を導入し、少集団活動によってスタッフ自らが課題を見つけて解決する手法を取ることで、スタッフの意識とスキルの向上に効果をあげているそうです。
 今後は、さらなる農地集積に向けて、設備や人材確保が課題とのこと。

2人目は、長野の老舗醸造会社を経営しつつ農業(果樹)に参入した山田芳文さん((有)山田醸造、農業生産法人信州伊那梅苑、長野)。

「6次産業化による農業改革の推進と現場」と題して、間もなく創業100年を迎える老舗の味噌屋が観光農園(梅苑)に参入された経験から、2次産業(工業)化は多額のコストと長時間にわたる資金回収が必要となること、プロダクトアウトからマーケットインへの意識改革が必要であること等を強調されました。

「市場で農産物は十分に評価されていない。農業者も自らの作品は自ら値決めをすべき」とも。

3人目は、埼玉・深谷でネギ等の大規模化に取り組んでいる吉岡重明さん((有)ファームヤード)。

最初に映写されたのは、何本かのテレビ番組。深谷ネキ生産者の代表として、報道番組等で何度も取り上げられているようです。

1978年に稼業を継がれた時は1ha。大型トラクタや収穫機の導入による省力化で規模を拡大、現在は56haとなっているとのこと。ただ、広い範囲に分散していることが課題のようです。
 2018年にはASIAGAP認証も取得し、今後、海外勢に立ち向かえるだけのさなる規模拡大にチャレンジしていきたいとの決意を語っておれました。

最後に斎藤先生から、3人の生産者の方の報告に対するコメント。

山田報告に対しては、テロワール(風土の味)をめぐる醸造と農業の親和性に注目しつつ、開花期の短い梅園における集客システムの重要性等について指摘がありました。

吉岡報告に対しては、農地の集積と団地化が重要であり、また、人材確保と能力形成の必要性についても言及がありました。ファームヤードの農場長は、公務員を退職して新規就農された25歳の方だそうです。、

また、浅川報告に対しては、いかに安曇野のブランドイメージを価格に反映できるかがポイントであり、麦茶用大麦やもち麦の契約栽培等について提案がありました。

会の終了後は、すぐ近くにある千葉大・生協食堂(緑風会館2階)に会場を移して立食の懇親会。

九州など全国から生産者や自治体の方々も参加されており、地域に即した研究活動を続けてこれた斎藤先生の広い人脈が伺える会でした。