【豆知識】飢餓人口の地域別推移

新時代を迎えて世の中は祝賀ムードですが、あえて、現下の食をめぐる深刻な状況を紹介します(前回からの『飢饉』つながりです)。
 昨年(2018年)9月、国際連合の食糧農業機関(FAO)は、毎年恒例の「世界の食糧安全保障と栄養の現状に関する白書」の2018年版 (The State of Word Security and Nutrition in the Word 2018)を公表しました。

これによると、2017 年における世界の飢餓人口(注)は 8億 2,080 万人。
 2005年には 9億 4,500万だった人飢餓人口は減少傾向で推移し、2014年には 7億 8,370万人に減少したのですが、その後は増加に転じているのです。
 世界人口に占める飢餓人口の割合も、同様に、2005年には 14.5%だったのが 2015年に 10.6%にまで低下した後に上昇に転じ、2017年は 10.9%となっています。実に全世界の人口の 9人に 1人は、必要な栄養を摂取できていないのが現実です。

リンク先のグラフは、飢餓人口の推移を地域別に示したものです。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/05/167_kiga.pdf

飢餓人口が最も多い地域はアジアで、5億1,510万人となっています。インド、バングラデシュなど南アジア地域等における飢餓は依然として深刻ですが、それでも概ね減少傾向で推移しています。
 一方、アフリカの飢餓人口は 2億 5,650万人となっていますが、その増加の程度が大きくなっています。サブサハラ(サハラ砂漠以南)地域での増加が著しく、3~4人に1人が飢えている状況にあります。
 この結果、世界の飢餓人口に占めるアフリカの割合は、2005年の 20.7%から2017年には 31.3%へと上昇しているのです。

報告書では、飢餓人口の要因を世界的な景気悪化、アフリカ等における貧困や不安定な社会情勢等にあるとし、また、気候変動や異常気象がさらに食糧安全保障を脅かす恐れがあると指摘しています。
 さらに、国連の持続可能な開発目標(SDGs、2030年までに飢餓を撲滅)についても、これらの状況が改善されなければ達成は困難と警鐘を鳴らしています。

(注)
 原典では栄養不足人口(Undernourished People、体重と健康を維持するのに必要な栄養量が摂取できていない人口)とあります。

[出典等]
 FAO“The State of Food Security and Nutrition in the World, 2018”
  http://www.fao.org/3/i9553en/i9553en.pdf
 国連WFPニュース「世界の飢餓人口の増加は継続」
  http://ja.wfp.org/news/news-release/180912

******************************************
出所:F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.167
 https://archives.mag2.com/0001579997/
(過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/