【ブログ】銀座農業コミュニティ塾 第9回勉強会

2019年5月15日(水)の終業後は、職場のある東京・霞ヶ関から銀座に徒歩で向かいました。
 皇居のお堀夕暮れを眺めつつ、中央区立環境技術センターへ。

ここでは29日(水)まで「絶滅したオオカミの役割を探る展」を開催中。
 生態系の中でのオオカミの役割を考えようというもの。本物の毛皮や室町時代の絵屏風も展示されています。

19時から開催されたのは、銀座農業コミュニティ塾の第9回勉強会。
 塾生の交流を通じて自然や生命を大切にする農的社会の実現を目指す勉強会が、2カ月に1回のペースで開催されています。

この日の最初の報告者は、日本労働者協同組合センター事業団(ワーカーズコープ)、芝山地域福祉事業所あぐり~んの遠藤尚志さん(以下、文責・中田)。

遠藤さんは1984年、千葉・流山市生まれ。
 一橋大学社会学部を卒業後、NPO支援センター千葉に就職され、初めての農業と「出会った」そうです(小松菜を収穫してくるように言われて「畑で立ちすくんだ」とのこと)。

その後、生活協同組合パルシステム千葉に出向して農業生産法人の立ち上げに携わり、有機農業を始めとする地域循環型社会の実現に取り組まれました。

この時、九州の野菜が大量に入荷して地元の野菜が捨てられるという矛盾を目の当たりにして、小さな地域を重視する物流の再構築を試みたそうですが、これはうまくいかなかったそうです。

その後、地域の野菜を使った八百屋&お弁当宅配の会社を起業された後(超多忙だったとのこと)、2018年に日本労働者協同組合センター事業団に就職。

ワーカーズコープ(Workers Owned Cooperatives)とは、労働、経営、出資が一体となった協同組合。
 現在、全国に350カ所の地域事業所があり、高齢者や障害者などを含めて約1万5千人が働いておられるとのこと。

子育て、高齢者、障がい者の支援、若者や生活困窮者の自立支援、公園の管理・緑化事業など「仕事になることは何でもやる」そうです。

遠藤さんは、10年後の農業に関連して次のようなことを話し合いたいとされました。

「まず、10年後の農業は誰が担うのかということ。今は協同組合(生協、農協)も商社化し人間関係が分断されている。一方、農業でも物流の現場でも人手不足が深刻化。
 本来の産直の姿を取り戻すとともに、BDF(廃食油などバイオディーゼル燃料)の普及、援農プログラム、農福連携等に取り組んでいきたい」

「2番目は地域に『協同組合』を広めていくこと。
 ようやく今年、超党派により『協同労働の協同組合法』の法制化が実現する可能性。10年くらい運動してきたのが結実。イタリアやドイツでは協同組合がますます重要な役割を果たしつつある。地域における協同組合、連帯経済を広めていきたい」

「3番目は地域の再生エネルギーへのシフト。
 ワーカーズコープは新電力と提携し、事業所や組合員家庭の契約切り替えを進めている。
 また、本年後半には菜の花プロジェクトを立ち上げる予定。軽油との価格差は大きいが、日本中で走っている農業用トラクターのすべてをBDFで走らせたい」。

会場からは、「小さな循環」が実現しなかった理由(生協でも物流の広域化が進み、ロットも大型化しているため等との回答)、千葉県下における具体的な構想等について質問がありました。

後半は、蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)による「農協の自己改革と今後の取組方向」と題する講義。

「2013年頃から資材価格が高い等の農協批判が高まり、15年8月に改正農協法が成立。農業所得の増大がJAの責務と位置づけられ、公認会計士監査への移行、組織変更(中央会の一般社団法人化)等が規定され、JAは自己改革に取り組むこととなった」

「担い手農家の4割はJAの自己改革を評価しているが、JA自らの認識とは隔たりがある。
 準組合員の利用規制をめぐる実態調査の取りまとめは本年夏以降になる見通し」

「本年3月のJA全国大会の決議では、アクティブ・メンバーシップの確立が必要としている。
 これは、組合員のJAの運営への参画を進めるとともに、准組合員を「食べて応援」等を通じて地域農業の発展を支えるパートナーと位置づけるもの」

「資材価格の低減等も重要だが、組合員とJAとの関係についての議論は不十分ではないか。広域合併を繰り返す中で、JAは組合員との距離が離れてしまい、単なるサービス業のようになってしまっている面があるのでは」

そして「このような中で、労働者協同組合の法制化に期待したい。JAの中の部会等が新たに協同組合を設立して主体的に活動し(協同組合内協同)、複合的なネットワークを形成していくことが重要ではないか」とまとめられました。

終了後は、いつもの地下の中華料理屋さんで交流会。長野に移住されるという初参加の女性も含めて、さらに談論風発。
 ビールがいっそう美味しい季節になりました。