【ブログ】 森千香子先生「移民社会の現実と課題」(脱成長MTG)

2019年6月16日(日)は、前日の大荒れの天候から一変。夏の青空が拡がりました。気温も急上昇。
 メトロ神楽坂駅からピープルズ・プラン研究会(PP研、文京区関口)へ。

 途中、Google Map には生田春月(明治の詩人・翻訳家)の旧居跡があると表示されているのですが、説明板等は見つからず。
 その後、PP研の近くで道を聞かれましたが、うまく教えて差し上げられませんでした(無理)。

PP研の会議室で14時から開催されたのは、脱成長ミーティング(MTG)の公開研究会。
 経済成長至上主義から脱却した「脱成長社会」の構想作りを目指して2014年にスタートした研究会も、18回目となりました。
 私は昨年4月の第15回以来、1年2ヶ月ぶりの参加です。

 この日のゲストは森千香子先生
 一橋大学大学院社会学研究科準教授で、ご専門は国際社会学、都市社会学、レイシズム研究。フランスや米国の移民についてのフィールドワーク等を重ねられ、『排除と抵抗の郊外:フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』(2016)は大仏次郎賞を受賞されています。

定刻の14時を回って開会。参加者は20名ほどです。

 冒頭、世話人の高坂勝さんから「今年4月の入管法改正は、安い賃金で外国人労働力を利用するのが目的で人権への配慮が欠けているのでは。今日はフランス等の移民問題に詳しい森先生をお招きし学んでいきたい」等の挨拶。

 森先生は、「移民社会の現実と課題~欧米と日本」と題する詳しいスライドに沿って説明して下さいました。
 手元にはコピーも配って頂いています(以下、文責は中田)。

 「本年4月の日本の入管法改正(拙速とも言える移民開放政策)の最大の問題は、これから日本でも排外主義が起こってくる恐れがあること。現在もヘイトデモ等は存在するが、排外主義が市民レベルから政治化していくことが懸念される。
 これは世界で起こっている現象であり、どのように防いでいくことができるかという問題意識で話したい」

「第2次大戦後、旧植民地等から大量の移民を受け入れたフランスでは、工場がパリの中心部から移転するのに伴って郊外に移民の団地が形成された」
 「本年5月末の欧州議会選挙では二大政党勢力が縮小し、特に郊外で極右勢力が伸張して排外主義が高まっている」

 「世界のトレンドは移民政策の厳格化。(ネオ)リベラル勢力は排外主義に抗するとしているが、現実には米・オバマ政権下で強制送還数は激増し、仏・マクロン政権も強硬な移民・難民政策に転換。
 一方、高度技能人材のグローバル争奪戦を背景に、規制緩和が同時進行している」 

「1980 年以降、移民の『政治シンボル化』が進み、様々な社会の課題が移民と関連づけ て語られるようになった。
 排外主義政党の支持増大の背景には大衆社会論(プア・ホワイ ト論)があるとされるが、実証は不十分。政治・メディアの影響(上か らの排外主義)もある」

  「複雑な対立構造をシンプルに説明するために移民がスケープゴート化され、誤った図式に基づいた分断が社会の中に生じている」

「分断を回避するためにはどうすれば良いか。
 バルセロナ発の『反うわさ』戦略や、ステレオタイプのイメージを崩す(アンラーニン グ)といった『学びほぐし』は一つの対応策」

 「排外主義は、実は社会の大きな動きの一部。
 多様化する現代社会においては『同一性』への志向が高まっている。グローバリゼーシ ョンの進行に伴い、モノだけではなく思考も画一化しており、同一化できない者を排除するという動き(排外主義)が出てきている」

 「文化的排除・差別と社会的再生産を同時に捉えようとするのが『文化的クローニング論』。これを精緻化することにより、差異を尊重しつつ共有できる部分を掘り起こしていくという研究を進めていきたい」

10分ほどの休憩を挟んで参加者との間で質疑応答、意見交換。
 移民の定義等については、
  「フランス国内で生まれた移民2世は公的な定義としては移民ではないが、2世を含める と人口の 20%以上を占める。フランス人は人権意識が高いこともあって多くの移民を受け入れてきたが、そもそも移民によって建国されたアメリカとは事情が異なる」

  「反うわさ」戦略の有効性については、
  「『反うわさ』戦略だけでは不十分。フランスでは『黄色いベスト運動』 など市民運動は活発だが、これら反グローバルの運動が移民の問題と重なっていない。
 2005年の移民暴動に参加した人の中には、ルサンチマンを感じている人も」

PP 研の白川真澄さんからは、
 「日本の労働組合など、外国人労働者が増えると賃金が下がる恐れがあると反対する動き があるが、同一労働同一賃金を求めていくのが本来の筋ではないか」等のコメント。

 これに対して森先生からは
 「日本でも地方によってはギリギリの状況で、外国人労働者に大きな期待。差別があるのは、まだ余裕がある証拠とも言える。
 そもそも歴史的にみて差別や排除が無かったことはない。むしろ引き受けて、少しで も良くしていこうという覚悟が必要ではないか」

 会場から積極的に外国人労働者を受け入れている中小企業の事例を紹介して下さる方も。

日本の移民政策に関しては、森先生は
  「手続き等が裁量に委ねられているなど現行制度の透明化が不可欠であり、そのためには法務省から独立した人権機関が必要。
 一方で、語学教育等のための国の予算の拡充も必要」

 「日本の政策はその場しのぎ。ヨー ロッパでは、比較的若い世代の多い移民を積極的に受け入れることは、社会保障面等でも長期的にメリットがあるといった分析もなされている。日本も、長期的な視点で真剣に議論すべき。
 一方、ニューヨークでの事例など、ローカルなレベルでこそ対応できる部分もある」

最後に高坂さんからは
 「移民を受け入れていくのは当然の方向。しかし入ってきてもらうからには、人権を尊重する制度を整備することが前提。労働力ではなく『人』として迎え入れ、多様性に富んだ地域コミュニティを創り出していくことが重要」とのコメントがあり、17時30分頃に研究会は終了。

 森先生は帰られましたが、有志(?)6名でいつもの中華料理屋さ んで議論(?)の続き。実践、活動されている方たちの話を伺い、色々と勉強になりまし た。
 なお、次回の脱成長MTG公開研究会は、8月25日(日)、原発をテーマに開催される予定とのことです。