「懐疑派」の人たちの主張の一つが、地球は過去にはもっと温暖な期間もあったし、産業革命以降たかだか数百年の気候変動など、長い地球の歴史においては取るに足らない、というものです。
本書の著者は熊本市出身の古気候学者。
南極の氷床コアから得られたデータによると、地球は約10万年周期で氷期(全球氷結という時期もあったとのこと)と間氷期(温暖期)を5回以上繰り返したことが分かるそうです。
現在は間氷期にあるそうですが、恐竜がいた中世期白亜紀の平均気温は現在より10℃以上高かったとのこと(これは「懐疑派」の主張の通りです)。
地球が誕生して以来、気候は大きく変動してきました。
例えば、暗い太陽のパラドックス(地球史最大のミステリーとのこと)、2度わたる大酸化イベント(大気中の酸素濃度の急上昇)、白亜紀の火山活動による二酸化炭素濃度の急上昇と温暖化、大陸漂流による寒冷化、気候変動のペースメーカー・ミランコビッチサイクル、温室効果ガスを深海に隔離する炭素ハイウェイなど、今まで聞いたこともなかった言葉について、研究者のエピソードも含めて分かりやすく解説されています。
読み物としても、大いに知的興味をそそられます。
著者によると、これら46億年の気候大変動を踏まえると、現在の安定している気候は「極めて絶妙なバランス」のもとで成り立っており、その状態(システム)に混乱をきたせば、急な寒冷化や温暖化がごく短期間に起こる可能性があるのだそうです。
「気候変動のリスクは間違いなく高まっている。未知なるステージに踏み込みつつある」というのが、著者の結論です。