【オーシャン・カレント】地球温暖化と食(IPCC特別報告書)

世界の科学者から構成されるIPCC (Inter governmental Panel on Climate Change、国連の気候変動に関する政府間パネル)は、本年8月、「土地関係特別報告書」を公表しました。
 気候変動とフードシステムとの関わりに焦点を当てた本報告書の内容を紹介します(本体は英文で膨大なものですが、概要は農林水産省、環境省のホームページに仮訳が掲載されています)。

 世界の気温は、産業業革命以前と比べて特に陸域において大きく上昇しており、豪雨や熱波などの極端な気象現象の発生、砂漠化や土地劣化等をもたらし、世界の食料の安全保障に悪影響を及ぼしています。
 その一方で、グローバルなフードシステム (食料の生産、加工、流通、調理、消費等)に起因する温室効果ガス排出量は、世界全体の人為的な排出量の最大4割弱を占めると推定しており、この背景には、流通の広域化や肉の消費量の増加等があると分析しています。

 排出量の削減のためには、まず生産面では、農業や畜産を持続可能な生産方法に変えること(土壌の有機物を増やす、家畜排せつ物管理を改善する等)、また、森林の減少あるいは森林の劣化を食い止めることが有効としています。
 さらに、消費面では、食生活パターンを畜産物や油脂を多く消費するものから穀物や豆類を中心としたものにシフトしていくこと、食品ロスや廃棄物を削減すること等が、持続可能な食料供給に貢献するとしています。

 このように、世界のフードシステムは地球温暖化の脅威を受けていると同時に、現在の食生活パターンや広域流通は地球環境に大きな負荷を与えています。
 その少なくとも一部は、私たちが食生活を見直すことで改善・緩和することが可能なのです。

[参考]
 IPCC“Climate Change and Land”(英文)
  https://www.ipcc.ch/report/srccl/

 農林水産省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)『土地関係特別報告書』の公表(第50回総会の結果)について」
  http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/190809.html

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-No.177
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 (過去の記事はこちらにも掲載)
  http://food-mileage.jp/category/pr/