【ブログ】車座座談会&忘年会:ヒーロー、ヒロイン達の集い

元号が替わった2019年も、いよいよ押し詰まってきました。
 12月26日(木)は、早めに退庁して東京・神田の47都道府県レストラン・箕と環(みのとわ)へ。「なみへい」の後継店です。
 16時半頃に到着すると、今夜のイベントのスタッフの方たちが、川野元基店長とともに食事の準備中。

この日の食材は、全国各地から取り寄せた選りすぐりのもの。
 しかも生産者の方の何人かも見えられる予定とのことで、例年以上に心を込めて料理をします。私も持参したエプロンを着用してお手伝いのつもり(邪魔?)

 献立表も手作りです。

18時の開始時間が近づくに連れ、続々とお客さまが来店。
 果たして料理が間に合うか!
 「巻いていきましょう」とのゲンキ店長の声に、スタッフの1人、巻寿司大使・メイコさんの巻寿司もスピードアップ?

そして18時過ぎから、毎年恒例の車座座談会&忘年会がスタート。

 前半は689回目となる車座座談会。
 高橋博之さん(ポケットマルシェ(ポケマル)CEO、日本食べる通信リーグ代表)が話し始めました(文責・中田)。

 「生産者と消費者をつなぐ活動を続けているが、時には徒労感を覚えることも。そんな時に中村哲医師が亡くなられた。2005年3月、故郷の花巻での講演で『誰も行きたがらないところに行き、誰もしたがらないことをする』と話されたことを思い出し、心が奮い立った。哲さんは私の中に生き続けている。本当のヒーロー」

 「今年は多くの自然災害に見舞われた。ハロウィーンで賑わう渋谷から移動した先の長野の光景は忘れられない。都市と地方の断絶も感じた。まずは知ること。知らないと共感することもできない。生産者と消費者、お互いにリスペクトすることが必要」

 「作ってくれた人に『有難う』と言う文化を創っていきたい。効率ばかりの世の中を、ポケマルから変えていきたい」

「世の中には、中村哲さんのようなヒーローがたくさんいる。ポケマルの生産者の方達もそう。今日はその生産者の方達にもたくさん来て頂いている」と、生産者の方たちの紹介が始まりました。

 まずは、3年前に新規就農されたという石川美里さん(宮崎・新富町)とネットでつなぎます。
 農作業の途中だったようで、この日は石川さんの紅芯大根と春菊も献立に入っています。

続いて高橋さんから指名され、生産者の方が1人ずつ前へ。
 高橋さんからの紹介に続いて、ご自身から経営の現状や就農の経緯等について紹介して下さいました。

 長野市の加藤智朗さん(かとうりんご園)のりんご畑は、10月の千曲川の氾濫で水没し、収穫直前だったものもほぼ全滅したそうです。
 この日は、かろうじて収穫できたリンゴを提供して下さいました。

 栃木・矢板市の君嶋きのこ園からは奥様が参加して下さいました。
 やはり近くの川が氾濫し、仕込んだ原木1万本以上が流出したほか、ご自宅にも大きな被害があったそうです。

 栃木・大田原市で米やアスパラガスを生産している後藤啓介さん(YOZE FRAM)は、高橋さんによると「日本の農村にいる中村哲さんの1人」とのこと。

千葉・八街市で落花生等を生産されている小山直樹さん(vegewonder)も、台風の被害を受けた1人。提供して下さった人参ジュースの濃厚で甘かったこと。

 都会っ子の五味あやさんは、スキー場で出会った(ゲレンデマジック!?)農家の後継者と結婚し、長野・岡谷市の「農家のヨメ」として頑張っておられる方。
 ポケマルユーザー(消費者)で、泊めてもらったこともあるという女性も呼ばれました。

 栃木・真岡市の賀川元史さんは、大手エンジニアリング会社を退職して実家の農業を継がれたという方。消費者から直接コメントをもらえることが大きなモチベーションになっていると話されました。

ちょっとコワモテの八木澤さん兄弟(八木澤ファーム、栃木・日光市)は、地域の棚田を何とか残したいという思いで農業に取り組んでいるそうです(直接お話すると心優しい方でした m(__)m)。

 大きな被害を受け、復旧までの間はアルバイト等で現金収入を得ているという生産者の方も、消費者と直接交流したいという思いで手弁当で参加して下さったそうです。

 それぞれの方のエピソードなどは面白く、なかなか話は尽きませんが、19時30分頃に乾杯。
 生産者の方は、それぞれのテーブルに分かれて座って下さいます。

 スタッフの1人、メイコさんから料理と食材の紹介。

各テーブルには、スタッフ手作りの渾身の献立表。
 献立と食材ではなく、生産者の方の思いなども貼り付けられています。

 やはり大きな被害を蒙った白石長利さん(白石ファーム、福島・いわき市)の
 「台風がもたらしたのは水害ではなく、逆。堤防が決壊した泥からもらう栄養は、とても人間の力では無理なこと」等の言葉も。

小山さん(千葉・八街市)の人参ジュース。

 前菜盛合せは、小山さんの人参スティック、君嶋さん(栃木・矢板市)のしいたけの旨煮、白石さん(福島j・いわき市)の伝説の里芋・長兵衛の唐揚げという豪華なもの。
 加藤さん(長野市)のリンゴも頂きました。

佐々木洋裕さん(岩手・釜石市)のタコの刺身と灯台ツブ(活きたまま届いていました)。

 巻寿司のお米は、八木澤さん(栃木・日光市)の「ゆうだい21」。
 具材の豚肉は菊地将兵さん(福島・相馬市)、サラダ白菜は白石さん(福島・いわき市)、人参は小山さん(千葉・八街市)。
 色も鮮やかな紅芯大根と春菊はネット中継で参加して下さった石川さん(宮崎・児湯郡)のもの。

遅れてこられた生産者の篠塚政嗣さん(茨城・結城市)の紹介。
 絵を描くのが好きな元IT企業戦士の方。五右衛門風呂にも入れる体験交流活動もされているそうです。

 佐々木さん(岩手・釜石市)のカレイの煮付けは、箸でつまむとほろほろと身が崩れます。

 菊地さん(福島・相馬市)の豚肉に、加藤さん(長野市)のリンゴのソースを和えた豪華な一皿も。
 いずれも生産者の方たちの思いを噛み締めつつ、美味しく頂きました。

ごぼう茶鍋。
 ごぼう茶は、MAKIZUSHI倶楽部も主催している(株)あじかん(広島市)の製品です。

 最後は雑炊にして、スープもすべて頂きました。

途中、なみへい合同会社の川野真理子さんから、新規事業の紹介も。
 東京・大崎駅前でのマルシェ、ぜひ勧めたい地域の産品を詰めた「全国うまいもの玉手箱」など。
 「10年間の飲食店(なみへい)経営の経験を踏まえ、直接地域の人々と関わり、小さな生産者・事業者さんのために働きたい」と話されていました。

最後は、全員で記念撮影。
 高橋さんが始められた食べる通信やポケマルを通して、直接つながった生産者と消費者の皆さん(のほんの一部)が、この日、一同に会しました。

 皆さん、いい笑顔です。

グローバル市場に過度に依存した現在の資本主義は、資源・環境制約もあって限界を迎えつつあります。
 それに気付いた世界の多くの人たちは、修正・改革するための具体的な運動を始めていますが、日本では未だ低調と言わざるを得ません。

 かの「経済学の父」アダム・スミスも、市場経済は「Sympathy;共感」が土台にあって初めて成り立つものと喝破しています。

 ポケマルや食べる通信を通じて、生産者と消費者が「共感」をベースにつながることは、これからの日本の食と一次産業、さらには経済や社会の姿まで変えていく可能性があるものと期待したいと思います。
 正に「世直しは食べなおしから」。

 その意味で、この日集った一人ひとりは、これからの日本を変えていく担い手となる、ヒーロー、ヒロインの方々に違いありません(私は「疲労」かな)。