【ブログ】江戸東京野菜をご存知ですか(CSまちデザイン)

2020年1月31日(金)は、昼前から休暇を頂いて東京・渋谷へ。
 来る度に変わっている街。銀座線のホームもリニューアルされています。
 すぐ目の前にあった渋谷エクセルホテル東急にたどり着くのに、10分以上迷いました。

 6階のプラネットルームで12時から開催されたのは、「江戸東京野菜をご存知ですか?~一つひとつの歴史を感じ味わいましょう~」と題する市民講座です。

主催者のNPO法人CSまちデザインの近藤恵津子さんから、
「江戸東京野菜にまつわるエピソードを伺いながら、江戸東京野菜を使ったランチコースをお楽しみ下さい」との挨拶。

 前半は大竹道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会)による講座です。
 大竹さんのお話を伺うのは久しぶりでしたが、多くの新しい情報が追加されています(以下、文責中田)。

「東京は、都心から山間部、島しょ部まで、幅広い農業が行われている」

「寒村だった江戸に幕府が開かれて人口が急増し、全国から野菜の種が集められて栽培されるようになった。
 逆に、江戸野菜の種が参勤交代等を通じて全国各地に持ち帰られるようになり(巣鴨等は「種屋街道」とも呼ばれた。)、今も全国に練馬系大根や滝野川系のゴボウがある。
 全国にある伝統野菜の多くのルーツは江戸野菜にある」

「江戸東京野菜とは、江戸期から始まる東京の野菜文化を継承するとともに、種苗の大半が自給または近隣の種苗商により確保されていた昭和中期(40年頃)までのいわゆる在来種、または在来の栽培法に由来する野菜のこと。

 練馬大根、金町コカブ、内藤トウガラシ、寺島ナスなど、現在、50品目が認定されている」

 「在来種(固定種)の野菜は、交配種(F1)に比べると形や大きさが不揃いになり、栽培も難しいが、味が違う」

「亀戸や品川では、江戸東京野菜を核にした地域おこし活動が行われている。祭りに奉納したり、学校給食に供給されている地域も。
 授業で江戸東京野菜を栽培し、上級生から下級生に種を引き継ぐ「贈呈式」を行っている小学校もある」

 「東京オリパラでも江戸東京野菜がおもてなし食材として使用される予定。また、現在、江戸東京野菜を日本遺産に登録する取組みも行っている」

 なお、大竹さんが2010年に始められたブログ「江戸東京野菜通信」は、記事は4000件、検索数は100万件を超え、ネットワーク作りに貢献しているそうです。

後半は、江戸東京野菜を使った料理を実際に味わいます。
 渋谷エクセルホテル東急の白幡健 総料理長が、この日のメニューを1つずつ説明して下さいました。

まず前菜として、「東京野菜の軽いスモークと鮪の生ハム、マンゴーと山葵風味のビネグレット、サフラン香る下山千歳白菜と金町小かぶのクーリ」。
 練馬大根と亀戸大根の味や食感の違いも楽しめます。

 2品目は「東京野菜のキッシュ 花畑牧場のモッツァレラチーズとベーコンの旨味、絵シャロットフォンデュとバルサミコ香るプティトマトとパプリカのマリネ」

3品目は魚料理。
 「金沢中央市場直送の鮮魚(ハタ)のサラマンダーグリルと内藤カボチャのピュレ千住ねぎのプレゼ、渡辺早生ごぼうのフリット添え、ブールブランソース」。
 内藤カボチャのピュレは、独特のコクのある味です。

 大きなハタの頭部を、総料理長がテーブルを回って見せて下さいました。その大きさに驚きの歓声が上がります。

最後にシェフパティシエからのデザートとして、「クリームブリュレとミルクアイスクリーム」。
 ふだん食べ慣れないお洒落で美味しい料理の数々。目も頭の中も満腹です。

 会場に見えられていた練馬の農家・白石好孝さん(CSまちデザイン理事)から、練馬での農業や学校給食の取組み等について紹介がありました。
 「均一ではなく適当なバラつきがあるのが、本来の野菜の姿ではないか」との言葉も。

食事の後は、質疑応答の時間。
 江戸東京野菜を手に入れるにはどうすればいいかとの質問には、大竹さんからは
 「現在はまだ生産する農家も少なく、産地のJAの直売所等でしか求められないのが現状。また、直売所に出しても、交配種のほうが見た目も大きさも良く、あまり売れないという現実もある」

 「都としても生産者を支援する制度を始めた。固定種であること、旬の大切さも含めて、もっと江戸東京野菜のことを知ってもらいたい」等の回答。

 大竹さんによると、現在、流通している小松菜の大半はチンゲンサイ等との交配種で、一年中栽培できるものの、固定種(伝統小松菜)とは味は全く違うそうです。

最後に、大竹さんと白幡総料理長にお礼を言って講座は終了。
 近藤さんからは、季節に応じて、また同様の講座を開催したいとの報告がありました。

 身近な大都会・東京のなかにも農業があり、生産者がおられること。特に伝統野菜には、その地域の歴史や風土が織り込められていること。
 そのことを知ることは、日本全体の(あるいは海外も含めて)一次産業の産地や生産者のことに想像力を及ぼす「入り口」になることが期待されます。