
-西川 潤『2030年 未来への選択』(2018.1、日本経済新聞出版社)-
https://www.nikkeibook.com/item-detail/26364
著者は1936年台湾・台北市生まれ。長く早稲田大学等で開発経済学や南北問題を担当され、国際開発学会、日本平和学会等の理事・会長も歴任された方です(個人的な話で恐縮ながら、学生時代に読んだ『飢えの構造』(1984)が、食料や農業問題に携わるという私の進路を決定付けました)。
西川先生は、本書が刊行された9ヵ月後に滞在先のスペインで急逝されました。結果的に本書は、西川先生の永年の研究と考察の集大成であると同時に「遺言」となったのです。
本書では、まず、2015年に採択された国連のSDGs(持続可能な開発目標)に言及しつつ、人口、食料、エネルギー、資源、資本主義など経済システム、国家のガバナンスなど広範な分野について、現状と将来予測を幅広くレビューしています。
それを踏まえた2030年に向けての近未来シナリオとしては、ナショナリズムの強化と国家対立、グローバリゼーションの野放しの進展、地域主義の高まりと地域分化、超大国グループの対峙という4つがあり得るとし、いずれの場合も現在の危機(格差の拡大、紛争の多発、気候変動等)を増幅する方向で作用すると危惧しています。
その上で、著者は、もう一つのシナリオとして、政府、企業、市民社会の協働、多国籍企業の規制等を通じて、資源やコモンズを共同管理する持続可能な発展を目指すべきとし、そのために一番必要なことは一人ひとりの価値観の変化であるとしています。
また、日本が大量の輸入食料に依存していることについては、地球に大きな負担をかけているだけではなく、世界的な環境破壊、農村貧困化にも手を貸す可能性が高いとし(私が試算したフード・マイレージの数値も引用して下さっています)、地産地消、直販、有機農業、スローフード等の重要性を強調しているのです。
出所:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
No.186、2020年2月8日(土)[和暦 睦月十五日]
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/