【オーシャン・カレント】コロナ禍と世界の穀物需給

(下記の農水省HPより)

日本は食料の多くを輸入に依存している(2018年度の食料自給率はカロリーベースで37%、生産額ベースで66%)ため、食料の安定供給面には様々なリスクがあります。
 例えば、短期的には干ばつ等の自然災害、輸出国の政情不安や港湾等でのストライキ等、長期的・構造的には地球温暖化等の気候変動、水需給のひっ迫、人口増加に伴う食料需要増加等があります。
 また、新たな感染症の発生や蔓延も大きなリスク要因であり、今般の新型コロナウイルス禍のなか、多くの人が日本の食料供給に不安を覚えるのも当然です。

 実は2008年頃、世界の穀物等の価格は大きく上昇し、国内でも小麦粉やマヨネーズ等が値上げされるなど大きな影響を及ぼしたことがありました。
 この時は世界的な干ばつ等により世界の穀物需給がひっ迫し、期末在庫率は17%程度まで大幅に低下していました。また、原油価格の高騰、とうもろこしのエタノール向け需要の急増もあり、原油や穀物など商品市場に多額の投機資金が流入したという事情もありました。
 さらに食料貿易額の約12%を占める31カ国が穀物等の輸出規制を行ったことも国際価格高騰に拍車をかけ、トウモロコシは8ドル/ブッシェルという過去最高水準にまで上昇したのです。
 この時と比べると、現在は豊作が続いたことから穀物需給は緩和しており(期末在庫率は30%程度)、原油・エタノール需要も低迷し、輸出を規制している国は16カ国(食料貿易額の約2%)と限定的で、とうもろこし価格も3ドル/ブッシェル程度の水準で推移しています。

 このような状況から、当面は食料の安定供給に支障が生じるような事態は想定し難いと思われます。
 しかしながら、この機会に、国内(さらにはより身近な地域)において食料供給力を維持・確保していくことの重要性を再認識しておく必要があると考えます。

[参考]
 我が国の穀物等の輸入の現状(農林水産省HP)
 https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/pdf/yunyu.pdf

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
  No.194、2020年6月6日(土)[和暦 閏卯月十五日]

 (過去の記事はこちらに掲載)
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