【ほんのさわり】前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

−前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(2017.5、光文社新書)−
 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039899

世界がコロナ禍に苦しんでいる現在、アフリカや南アジアではバッタが大量発生し農作物に大きな被害を与えています。

 1980年秋田県生まれ、小学生の頃に読んだ『ファーブル昆虫記』に感銘を受けた著者は、昆虫学者になる(バッタに食べられたい(?))という夢の実現のため、単身、アフリカに長期滞在しサバクトビバッタの研究に従事。本書は、無収入のポスドク(当時)による「バッタと大人の事情を相手に繰り広げた死闘の日々」を綴ったものです。
 なお、「ウルド」とはモーリタニアで最も名誉あるミドルネームで、現地の研究所長から授かったものとのこと。

 本書では、バッタの群れを求めて移動する砂漠の光景(サソリも登場)、世界中から資金を調達しバッタの防除に手を尽くす現地の苦闘、研究所の上司・同僚や相棒の運転手氏との交流、フィールドワークと論文執筆、職を得るためのブログ等による「売名行為」や大学等への応募と面接の様子などが、ユーモアあふれる軽快なタッチで描かれています。
 著者自らが撮影した多数の写真も、現地の様子を大いに想像させてくれます。

 無収入で将来に不安を抱きつつ研究を続ける中、著者は貧しさの痛みと、手を差し伸べてくれる人の優しさと、本気でバッタ研究に人生を捧げようとする自分の本音を知ったそうです。
「研究ができることは、こんなにも幸せなことだったのか」

 分野に関係なく、研究というものの素晴らしさを教えてくれる本でもあります。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 No.195、2020年6月21日(日)[和暦 皐月朔日発行]
(過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/
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