【ほんのさわり】大田昌秀『沖縄 鉄血勤皇隊』

−大田昌秀 編著『沖縄 鉄血勤皇隊』(高文研、2017.6)-
 http://www.koubunken.co.jp/book/b287286.html 

暑い暑い8月は、鎮魂と慰霊の月でもあります。
 本書の著者は1925年沖縄・久米島生まれ。沖縄師範学校在学中には鉄血勤皇師範隊の一員として沖縄戦に参加。
 戦後は早稲田大学、アメリカの大学院への留学を経て、琉球大学社会学部教授に就任。1990年から沖縄県知事を2期8年、2001年から参議院議員を1期6年務めた後は、NPO沖縄国際平和研究所を設立し平和研究を続けられました。
 本書は、著者が逝去された2017年6月に刊行されたものです。

 著者が生涯にわたって一日たりとも忘れられなかったのは、「いくつもの地獄を一か所に集めたかのような、悲惨極まる沖縄戦の生々しい体験」でした。
 太平洋戦争も末期の1945年3月、米軍の空襲と艦砲射撃が本格化し沖縄の住民が「根こそぎ召集」されるなか、県下の12の男子中等学校の13〜19歳の生徒1600名以上(正確な数字は不明とのこと)も、法的な根拠もないまま駆り出されたのです。

 そして激化する戦闘の中、少年たちは陣地構築や食糧・弾薬の輸送、あるいは特攻兵として従軍し、6月22日の日本軍司令官の自決後も含めて、半数以上が「人生の蕾のままで戦場の露と消えた」のです。
 なお、女子生徒も400名以上が看護要員として動員され(ひめゆり学徒隊など)、やはり半数が犠牲となっています。
 本書には、著者が長年にわたってアメリカの公文書館で収集した米軍による写真(泥にまみれた少年たちの姿には心が痛みます)のほか、元隊員の手記、12の中学校ごとの鉄血勤王隊の詳細な戦闘記録や戦没者名簿等も収録されています。

 九死に一生を得て生き延びた著者にとって、生きる意味とは、絶対に二度と同じ悲劇を繰り返さないため、戦死した学友たちの正確な記録を残し、世界平和の創出に努めることでした。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 No.199、2020年8月19日(水)[和暦 文月朔日発行]
 (過去の記事はこちらに掲載)
  https://food-mileage.jp/category/br/
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