【ブログ】小谷あゆみさんの「ニュー農マル」(霞ヶ関ばたけ)

例年とは様相の異なる2020年の夏も過ぎつつあります。
 自宅近くの市民農園では、夏野菜は終わりに近づく一方で、遅植えの大豆が花をつけています。もっともカメムシの姿も多く、また美味しい枝豆を頂けるかどうか。

 イネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ、カヤツリグサ等)は盛大に穂をつけ始めました。9月2日からは処暑の末候・禾乃登(こくものすなわちみのる)です。

2020年8月30日(日)の午前中は、久しぶりに霞ヶ関ばたけに参加。

 行政や民間、生産者や消費者といった異なる立場の人が集まり、食や農林水産業について対話をしながら学んでいくという霞ヶ関ばたけも、171回目で初のオンライン開催となりました。

 官民共創促進に向けたプレ施設「SENQ霞が関」から、霞ヶ関ばたけ代表の松尾真奈さんと、この日のゲストである小谷あゆみさんが出演。他の40名ほどの参加者はオンラインです。

松尾さんから霞ヶ関ばたけについての紹介の後、まずはグループに分かれて自己紹介など。恒例の進行ですが、Zoomだとグループの振り分けも全員集合も自動です。しかも時間厳守。
 私の入ったグループの進行役は、以前に江戸東京野菜の関係でお世話になった方でした(お久しぶりです!)

 続いて小谷あゆみさんから、「ニュー農マル時代-都市から始まる帰巣本“農”、ベジアナから見た東京のローカル回帰」と題する話題提供。

 タイトルから言葉遊び爆発(笑)、ちなみに小谷さんは俳人でもあります。

小谷さんは兵庫生まれの高知育ち。石川テレビ時代に農や棚田に魅せられたとのこと。2004年にフリーとなって上京、市民農園を始め、東京にも農があることを実感されたそうです。

 現在はベジアナ(野菜を作るアナウンサー)、農業ジャーナリストとして、テレビ出演ブログ執筆等で活躍中。私はスタディツアー等で何度かご一緒させて頂いたことがあります。

小谷さんによる講演が始まりました(文責:中田)。
 「農の価値は食料生産だけではなく、心を解放する場としての価値もある。子どもだけではなく大人にこそ必要。本当の食育は農体験から。里山は、自然と共生する日本人のライフスタイルの象徴でもある」

 「311(東日本大震災、原発事故)後は被災地を『食べて応援』するものだったが、今回のコロナは都市住民も当事者。自分や家族の命・健康は自分たちで守るという意識が高まり、世界中の人々が同時多発的に食べものを手作りし始めた。
 例えばロンドンでは、コミュニティ農園が3000以上まで大きく増加している」

 「野菜作りは命の『見える化』。物を作るのではなく物語を作る」

「これからの時代をキーワードで示すと、田園回帰、(定年)帰農、帰巣本“農”、ニュー“農”マル。
 これらは新しいムーブメントと言うよりは、農耕文明への回帰」

 「これまでは『つくる・売る』生産者と、『食べる・買う』消費者が農産物を介してつながるかたちだった。
 これからの関係はCSA、友産友消などにより、みんながプレイヤーとして同じ輪の中に入る関係に変わる。これは国連のSDGsの方向にも沿ったもの」

「私たちの健康は、イコール地球の健康、社会の健全性。みんなのヘルシーを同時に達成しましょう」と、力強く締めくくられました。

 後半は、再び先ほどのグループに分かれて感想などをシェア。続いて松尾さんの進行により、参加者全員で質疑応答。

 都市農業の可能性と課題等について、活発な意見交換が行われました。
 食べものや一次産業に関心があるという共通点だけで、様々な年代や立場の方たちが参加されているのが霞ヶ関ばたけの魅力です(埼玉・小川町や香川県から参加されていた方も)。

現在は東京・世田谷区在住の小谷さんですが、被災地を含めて色々な地域に頻繁に足を運び、農産物や伝統食の作り手の方たちとの交流し、情報発信を続けておられる小谷さん。

 この日のお話は都市農業が中心でしたが、小谷さんにとっての都市農業とは「どこでもドア」。都市農業は「地域農業や農村の玄関口」でもあるという位置づけのようです。

福島・飯舘村で地域の方たちとうどんを茹で、じゅうねん(エゴマ)を摺る小谷さん(2019.11/14)

また、9月からFM世田谷で新番組を担当されるとの紹介もありました。
 「ベジアナの『畑の力らららラジオ♪』」は毎週木曜日の11:00~11:30の放送、インターネットでも聴くことができるそうです。

 しなやかで明るく、多才でスマートでありながら、同時に濃厚な土の匂いも感じられる小谷さん。
 ますますのご活躍を期待したいと思います。