【F.M.豆知識】人類史と農地面積

 45億年前に形成された地球という惑星上に人類の祖先が現れたのが250万年前、ホモ・サピエンスが出現したのは20万年前とされます(諸説あります)。
 そして、農耕が始まったのは1万年ほど前と、地球史、人類史のなかではごく最近のことです。
 リンク先の図200は、世界の農用地面積の超長期推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/09/200_landuse.pdf

 イギリス・オックスフォード大学の研究者等の共同作業により構築・運営されている長期データベース“Our World in Data”によると、紀元前5000年の農用地面積は約4千万ha(農地1千万ha、放牧地3千万ha)でした(図の棒グラフ)。
 その後、世界的な農耕の広がりにより農用地面積は増加し、紀元前後には約10倍の4.4億haにまで拡大しました。さらに1600年には8.6億haとなりましたが、紀元の頃に比べると2倍弱の水準に留まっていました。
 ところがその後、農用地面積は増加のペースを大幅に高め、1900年には25億haとなり、現在(2000年)は48億haとなっています(農地15億ha、放牧地33億ha)。
 このように18世紀以降になって農用地面積が大きく増加した背景には、農業に関わる技術革新があります。産業革命による様々な分野における新技術開発は、農用地の開墾や灌漑施設の整備、農業機械の開発を推進し、農用地面積の拡大に貢献しました。

 一方、図の折れ線グラフは人口1人当たり農用地面積の推移を示したものです。
 実は1人当たり農用地面積が最も広かったのは紀元前3000年頃の2.7haでした。その後は1人当たり農用地面積は右肩下がりで推移し、さらに19世紀以降は大きく減少のテンポを早め、2000年には0.8haとなっているのです。
 これは、農用地面積が拡大した以上に人口が増加したためです。しかし現在、全地球的な広範な食糧不足が顕在化していないのは(サブサハラなど地域的な飢餓は撲滅されていませんが)、やはり産業革命の成果である化学肥料や農薬の開発によって単位面積当たりの収量が増加したためです。

 しかし様々な環境・資源制約が顕在化する中、将来にわたり、人類に十分な食糧が安定的に供給される保証があるとは言えません。

[資料]
 ウェブサイト“Our World in Data”
  https://ourworldindata.org/land-use

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 (購読(無料)登録もこちらから)
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 No.200、2020年9月2日(水)[和暦 文月十五日]
(過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/