【オーシャン・カレント】EU「農場から食卓まで戦略」

2020年5月、欧州委員会(EU(欧州連合)の執行機関)は「農場から食卓まで戦略」(Farm to Fork Strategy)を発表しました。
 これは、生産者、企業、消費者が一体となって、農場から食卓までのフードシステム全体を、公正で健康的で環境にも配慮した(a fair, healthy and environmentally-friendly)持続可能なものに変革しようとする戦略で、昨年12月に公表された「欧州グリーンディール」(脱炭素と経済成長の両立を図る政策)の中核に位置付けられるものです。

戦略においては、その実現を図るため、化学合成農薬の使用量の50%削減、化学肥料の使用量の20%削減、少なくとも農地の25%を有機農業に転換するといった、2030年に向けての具体的な数値目標も盛り込まれています。
 また、アニマル・ウェルフェアに関する規定の作成、消費者が健康で持続可能な食品を選択できるようにするための支援(表示の改善等)、法的拘束力のある食品ロスの削減目標の作成等についても記載されています。
 さらに、地理的表示に関する法的枠組みの強化、地産地消による輸送距離の短縮化への支援など、フード・マイレージに関する記述もあります。

この戦略の背景には、新型コロナ危機により、食の持続可能性やレジリエンスな(しなやかで強靭な)社会基盤構築の必要性が強く再認識されたことがあります。
 これは世界共通の課題であることから、EUの戦略が将来的に世界的なスタンダードとなる可能性もあると考えられますが、その場合、例えば有機農業の面積が0.5%に過ぎない日本にとってはハードルが高いものとなりそうです。

[参考]
 European Commission“Farm to Fork Strategy”
  https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/f2f_action-plan_2020_strategy-info_en.pdf
 EU MAG(駐日EU代表部の公式ウェブマガジン)
 「脱炭素と経済成長の両立を図る『欧州グリーンディール』」
  http://eumag.jp/behind/d0220/

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.201、2020年9月17日(木)[和暦 葉月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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