【ブログ】久しぶりのしごと塾さいはら(山梨・上野原市)など

2020年10月27日(火)の午後は、NPO縮小社会研究会の研究会にオンライン参加。
 この日は藤原辰史先生(京都大学人文科学研究所)から、「分解の哲学」というテーマでお話を伺いました。同名の近著の内容に加え、ポストコロナ時代の思想等についても興味深い内容でした。

 正直、オンライン講演会等の中には退屈でつらいものもありますが、この日は1時間半ほどの時間では全く足らないほどの充実したものでした(動画は縮小研のHPで見ることができます)。

農林水産政策研究所ではこれに先立ち、藤原先生を招いてのセミナーを開催されており、私はリアルタイムでは参加できなかったのですが、研究所のホームページで資料と動画を見ることができます。

 藤原先生のお話に触発されて、屑拾い、循環、発酵、「分解の饗宴」といったキーワードが頭の中をぐるぐる回る中、11月1日(日)は、山梨・上野原市へ。

 本当に久しぶりに、しごと塾さいはらに参加しました。
 さいはらの手仕事を学ぶ・手伝う・伝えるしごと塾ですが、11年目の今年はコロナの影響でほとんど開催できていませんでした。
 
 JR中央線の上野原駅(高尾から3駅目)に到着したのは8時25分。抜けるような秋の青空です。
 いつもお世話になっているメンバーのみっきーさんが出迎えて下さいました。

4名でみっきーさんの車で西原(さいはら)地区に向かいます。次第に紅葉が色濃くなっていきます。

 交流施設である羽置(はおき)の里・びりゅう館の前では、豪快に回る水車の姿。実際に蕎麦粉挽き等に使われている現役の水車です。

 9時半頃、この日の参加者10名ほどが集合。多くは東京や神奈川からですが、地域に移住された方も2方ほど。
 コーディネータ兼先生役の太郎さん(やまはた農園)から、この日の作業内容等についての説明。太郎さんはサラリーマンをやめて、この地に移住・就農されている方。昨年結婚、今春には子どもさんにも恵まれました。

最初のプログラムは、びりゅう館脇の草地で葛(くず)の蔓(つる)を採取する作業。
 後で刈り取る大豆や蕎麦を束ねるためのもので、なるべく地元の資源を活かすのが、しごと塾と太郎さんのコンセプトです。
 枯れた葉を目印にずるずると引っ張ると、思いがけず長い蔓が土の中から現れます。

しごと塾で使わせて頂いている畑へは、鶴川の清流を渡って徒歩数分。
 大きな面積ではありませんが、年間を通じて多種類の作物を作っています。

 大豆(地元在来の千石という品種です。)はすっかり枯れて、カサカサになっていました。
 太郎さんの指導の下、根っこから引き抜き、先ほどの蔓で束ねていきます。まず2株をまとめてくくり、さらにもう2株をくくって、竹筒に架けられるようにします。
 葛の蔓は強度も太さも様々で、ビニールひも等に比べるとコツが必要で、手間もかかります。 

続いて蕎麦の収穫。今年は残念ながら、天候不順に見舞われました。
 8月に播種した後はしばらく雨が降らず、発芽が遅れた結果、この日も黒く熟した実はあまり多くは見られません。とはいえ、霜が降りる前に刈り取らなければなりません。

 鎌でざっくりと根元を切り、親指と中指でつかめるほどの太さになったところで蔓を回し、さらに3回ほど巻いて、もう一束をくくり付けます。
 大豆とは束ね方が異なり、太郎さんがひもを使って実演してくれたのですが、なかなか難しい(不器用(涙))。

刈り取って束ねた大豆と蕎麦は、隣接する小屋の軒下のひもに通した竹に、架けていきます。眩しい秋の日に、どんどん乾燥しそうです。

 鮮やかな赤い色の蕎麦の実も。
 十分に熟せは黒くなっているはずですが、さて、来月に予定している脱穀作業で、どれほど収穫できるでしょうか。

正午前にびりゅう館に戻りました。
 地元の野菜や加工品が並べられた直売所、郷土料理が頂けるレストランが併設されているほか、移住相談空き家バンクなど地域づくりの拠点ともなっています。
 コロナ禍によりハイキングやツーリング客も少なくなっていたそうですが、この日は多くの人が訪れていました。

 レストランは満席に近く、会議室をお借りして昼食。私はいつもの欲張りセット(しかも大盛り。別名「強欲セット!」)。
 名産の蕎麦のほか、地元産野菜や舞茸の天ぷら、野菜の煮物、刺身こんにゃく、サラダなど盛りだくさん。

「せいだのたまじ」は小ぶりのジャガイモ(たまじ)を味噌で甘辛く煮詰めた郷土料理で、「せいだ」は江戸時代の名代官・中井清太夫に由来するとのこと。
 雑穀ご飯も。西原を含むこの地域は雑穀街道とも呼ばれています。

 午後のプログラムは、蕎麦を刈った跡地への小麦の播種です。
 まずは全体を耕します(この地では「うなう」と言います)。傾斜地が多いこの地域には、鍬だけでも多くの種類があります。
 元は河原だったこの畑の土は、石が多くて硬く(それでも、しごと塾を始めた10年前に比べれば、だいぶ畑らしい土になってきました。)、スギナも繁茂しています。

全体をうなった後は、60cm感覚で溝を切っていきます。
 ここに、30cmおきに落ち葉たい肥をひとつかみずつ置いていきます。落ち葉たい肥は、畑の隅の囲いに積み上げ踏み固めておいたものです。
 さらにその上に、鶏糞を少量、置いていきます。

この日、まいた小麦は地元の在来種とのこと。3粒しか残っていなかったのを地域の方が増やしたもので、名前は特にないそうです。
 普及している品種に比べると、背丈が高くなるなど栽培は難しいとのこと。

 これを指3ほどでつまみ(20粒ほど)、たい肥の上にぱらぱらと落としていきます。これに土をかぶせ、上から鍬で軽く押すようにして小麦の播種作業は終了です。

 最後は、野菜畑の除草作業。
 白菜、ほうれん草、のらぼう菜などが植えられていますが、白菜は虫食いでレース状のものも。施肥が過ぎると虫が増えるそうです。

 日は陰り、肌寒くなってきました。雪虫が舞います。

16時過ぎにこの日の作業は終了。
 青空には見事な飛行機雲(菊花賞のコントレイル、強かったな)。

 次回は12月に開催することとして(日程や詳細なプログラムは追って案内)、この日は解散。早くも暗くなってきました。

 帰途、4名でしごと塾の草創期からお世話になっているFさん宅に立ち寄らせて頂きました。遅い時間だったにもかかわらず、サツマイモや大根葉の煮物等で歓待して下さいました。
 イノシシや猿の被害が酷くなっている等のお話も。

 駅まで送って下さったみっきーさんと別れ、18時19分の立川行きにぎりぎり間に合いました。残った3人で、八王子で夕食をとっていくことに。

京王線めじろ台駅に近いマンション1階にある「あじなお」は、食材や生産者にこだわった「だし」のお店。
 壁には生産者のカヤ写真等のパネル。

 だしの和食・おまかせコースを頂きました。
 桧原産マイタケの土瓶蒸し、放牧豚や胡麻豆腐の盛合せ、八王子産マコモダケ入り飛竜頭、鰯と野菜の天ぷら(自家製白だしで頂きます)、だし茶漬け、甘酒のデザートなど。有機芋の焼酎など、飲み物のメニューも豊富です。
 優しい味で、心から堪能しました。ご馳走様でした。

 身体も心もお腹も満たされました。帰りの電車ではうとうと。