【ほんのさわり No.210】水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』

−水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書、2014/3)−
 https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0732-a/

著者は1953年愛知県生まれ。証券会社のエコノミスト、内閣官房内閣審議官等を経て2017年から法政大学法学部教授。
 実業と政策にまたがる幅広い実務経験を有する著者は、「資本主義の死期が近づいている」と主張します。

その根拠として用いているのが「交易条件」です。
 これは輸入物価指数を輸出物価指数で割った比率で、輸出品一単位で輸入品を何単位買えるかを表しており、交易条件が上昇(改善)すれば国際競争力が高まったとみることができます。

戦後日本の交易条件は1970年頃までは改善傾向にありましたが、2度のオイルショックで大幅に悪化し、一時改善したものの、2000年代に入ってからはさらに悪化を続けています(p.23にグラフも掲載されています)。
 この背景には、新興国の近代化により資源価格が高騰しているという事情があるとのこと。つまり、日本に限らず、安い資源を「買い叩いて」作った工業製品を輸出することで成長するというモデルは、もはや成り立たないというのです。

著者は、景気優先の成長主義から脱するべきであるとし、そのためには国内で安いエネルギーを自給することが必要としています。本書には明示的な言及はありませんが、同様に大きな部分を海外に依存している食料についても、同様の事情にあるものと思われます。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.210、2021年1月27日(水)[和暦 師走十五日]
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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