【ブログ】ミュニシパリズムの経験から学ぶ(縮小社会研究会)

2021年2月13日(土)の夜には、10年前を思い出させるような福島県沖地震。
 2日後の15日(月)は東京地方は久々の本格的な雨になりました。家屋等が被害を受けた被災地にもかなりの雨が降ったようです。
 東京地方は午後には晴れ間が広がり、夕方には虹が現れました。

 前日(14日(日))20時からはネーネーズのツイキャスライブ。
 那覇市国際通りのライブハウスを訪ねて以来のファンで、リアルタイムで入力したコメントを読んでくれたり、オンラインもなかなか楽しいものでした。

2021日2月14日(日)の午後は、(一社)縮小社会研究会の第50回研究会にオンライン参加。

 テーマは「地域から生み出す自然との共生・草の根のデモクラシー〜ヨーロッパにおけるミュニシパリズムの経験から学ぶ〜」。講師は伊藤公雄先生(京都産業大学教授、京都大学名誉教授)です。

参加者は77名。主催者の 松久 寛代表の開会挨拶と講師の紹介に続き、資料を共有しながら講演がスタート(講演資料は縮小社会研究会のHPで公開されています)。

 ジェンダー研究者としても著名な伊藤先生の話は、コロナと女性指導者の話から始まりました(以下、文責中田)。

「女性がトップの国・地域は、コロナに比較的うまく対応できている。
 これは、ケアの視点(人間の生命や身体への思い、自然との共生等)が、21世紀の社会を考える上で重要な視座になることを示唆している。ケアの精神とデモクラシーの再生により、新自由主義に立脚した資本の暴走をストップさせる必要がある」

 「ヨーロッパではミニュシパリズムの潮流が強まっている。
 ミュニシパリズム(New- Mnucipalism)とは、地方政治を軸にした草の根の政治改革運動で、2015年前後にスペインのバルセロナで登場したもの。
 フィアレス・シティ(恐れない都市)」宣言等が世界に広がっている」

「ミュニシパリズムの特徴は、共生(グリーン)の視座の重視、住民の直接の声の地方自治への反映、所属政党等を超えた個人としての活動であること等。
 ミュニシパリズム登場の背景には、ヨーロッパの社会民主主義、共産党の時代の終わり、旧来の『保守派』の混乱と新しい『左派』の試みがある」

 自治・自律・自立の草の根の運動(多様性と調整の力)、環境と人権の視点、新自由主義・資本制の暴走批判、国際的連帯・連携の視点は共有されるべき」

「フリードマンの理論を背景とした新自由主義は、チリで反革命クーデタを起こし、構造調整プログラムによる途上国支配、格差拡大、右派ポピュリズムの拡大等をもたらした。

 1990年代までは国家が『国民』を保護していだが、21世紀に入り、自己責任論など人間の尊厳は無視されるようになり、保護対象は『資本』に変わった。資本は国境を超えてグローバル化し、国家への介入(支配強化と利権の拡大)を強めている。
 産業資本主義は金融資本主義(デジタル資本主義)へと移行し、自然、労働、貨幣など『商品化してはならないもの(ポランニー)』の商品化が進んでいる。

 これらの背景には、労働組合等の交渉力の弱体化、有権者の「個人化」、メディアの政治監視能力の弱体化といった社会の変容がある」

「新型コロナは、新自由主義による医療・福祉切り捨て等の問題点を顕在化させた。社会的な不安定な状況が進行。

 そもそも資本主義とは、非人間的な資本の自己増殖運動に他ならない。人間が資本をコントロールしているのではなく、資本が自己増殖のために人間を支配している。人間の生命や自然環境を無視しても利益を拡大しようというのが資本の運動。
 原子力ムラなど、資本の増殖を軸としたネットワーク(複数の利害集団を貫く力(ヘゲモニー))が権力を握っている。

 資本の自己増殖に歯止めをかけるという視点からの社会運動の調整、統合が必要となっている」

「ミュニシパリズムは、行き詰まりつつある近代の代議制民主主義、近代的政党主導の仕組みに代わる新たなデモクラシーの形。

 日本社会を考える上でも多くの教訓がある。
 ケアの倫理・思想の構築(エッセンシャルワークの見直し、自他・自然への配慮、サブシスタンス(マリア・ミース)等)、コモンズ(市場原理主義で賄ってはならない社会的共通財)の視点、自立・自律とコミュニケーション力(直接民主制の工夫、社会連帯経済等)、国家の税徴収・配分の監視、環境に負荷をかける企業活動の監視など。

 フォースターは『多様性を許す、批判を許す民主主義には二度乾杯しよう。しかし三度も喝采する必要はない』と。デモクラシーの理想・理念の限界も直視する必要はある」

1時間ほどのご講演に続き、参加者との質疑応答。
 この日は、地方議員など地域で活動されている方も多かったようです。

 「日本でヨーロッパのような運動が拡がらないのは、何か制度的な要因があのるか」との質問には
 「スペイン等にはもともとコミュニティがあったが、制度的な違いはないのではないか。日本もヨーロッパ的な動きは出てきており、できること見えてくればさらに拡がるるのでは。あきらめる必要はない」との回答。

 議員候補の方は「日本では、住民は目先の身近なことばかりに関心があるのが現実」とのコメント。

 「選挙は比例代表制を全面的に導入してはどうか」との質問には
 「(私の専門の)イタリアはかつては完全比例代表制をとっていたが、うまく機能しなかった。フランスでは誰も過半数にならない時は、再投票。こうすれば、再選挙時、選挙協力でいくつかのグループがあらためて共闘できる。また、議会とは別に、くじ引きで選出した市民議会で意見を政治に活かすようなことも行われている」との回答。

 「反原発運動等に取り組んできたが失望感がある」としながらも、静岡の「やさいバス株式会社」を注目される取組みとして紹介して下さった方。
 伊藤先生は「市民運動は安定した組織と経済性が必要。永続性と自発性を両立させることが重要」とのコメント。

 「韓国を見習って学校給食を無料化しては」とのコメントには
 「韓国や台湾の取組みには見習うべきところも多い。学校給食については日本の地方自治体でも対応できる」と回答されました。

 熊本で長く水俣病の問題に関わって来られた大学教授の方からは、福岡県で本年1月に日本で初めて採択された「ワンヘルス推進基本条例」の紹介を頂きました。副読本もできているそうです。

 14時30分過ぎに終了。
 資本の自己増殖運動が権力ネットワークを作っている等は、常識なのかも知れませんが、私には「目からウロコ」の内容でした。

 縮小社会研究会では、これからも労働者協同組合法などをテーマに様々な研究会を開催される予定とのことです。