【メルマガ】F.M.Letter No.211

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.211◇
 2021年2月12日(金)[和暦 睦月朔日]
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◆ F.M.豆知識  原発被災地の人口移動の推移
◆ O.カレント  フラワーバレンタイン
◆ ほんのさわり 田尾陽一『飯舘村からの挑戦』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦でも新しい年を迎えました。新規感染者数は減少しつつありますが、果たしてどのような年になるのでしょうか。
 本メルマガは、時の流れを体感するため和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。

−原発被災地の人口移動の推移−

10年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故により、12市町村に避難指示が出され、多くの方が避難を強いられました。自主避難された方も多数おられました。

その後、避難指示は徐々に解除され、現在では汚染度が高い帰還困難区域(双葉町、浪江町、大熊町、富岡町、南相馬市、葛尾村及び飯舘村の一部)を除き避難指示はすべて解除されています。
 なお、東日本大震災と原発事故に伴う福島県から県外への避難者数は、最も多かった頃からは半減しているものの、現在も28,959人を数えます(2021年1月13日時点、福島県集計)。

さて、リンク先の図211は、原発事故に伴い避難指示が出された12市町村の転出入者数の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/02/211_juminidou.pdf

これによると、2011年の約8,000人という大幅な転出超過(マイナスの純転入者数)はいったん千人強にまで大きく減少しましたが、2017年頃からは、避難指示の解除が進んだにもかかわらず、転出者数が増加したことから転出超過数も増加している状況が伺えます。
 これは、もともと住民票はそのままにして避難していた方が、避難先での生活が長くなるに連れて、住民票を移すケースが多くなっているためと考えられます。
 原発事故から間もなく丸10年を迎えますが、人口移動で見る限り、原発被災地は厳しい状況が継続していると言えます。

一方、転入者数は毎年4千人程度で、若干ながら増加傾向で推移しています。新規事業や復興支援に従事するため、県外等から被災地に移り住んで来られた方達の動向にも注目する必要があります。

[データの出典]
 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」
 https://www.stat.go.jp/data/idou/

[参考]
 福島県HP「県外への避難者数の状況」(ふくしま復興ステーション)
 https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ps-kengai-hinansyasu.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

−フラワーバレンタイン−

間もなく迎えるバレンタインデーは女性が男性にチョコレートを贈る日として定着していますが、世界の多くの国では愛や感謝を伝えるために花を贈る習慣があるそうです。

 日本でも(一社)花の国日本協議会の呼びかけにより、今年も「フラワーバレンタイン」キャンペーンが行われています。
 ジェンダーに関わらず、様々な愛のかたちを「花」を贈ることで伝えようというもので、今年のキャッチフレーズは「花は自由なラブレター」。世の中がコロナ禍で重苦しい空気に沈むなか、大事な人に花を贈ってみてはいかがでしょうか。

ところで2017年11月に飯舘村を訪問させて頂いた際には、いち早く農業(花き栽培)を再開されたハウスを見学させて頂きました。3月末に避難指示が解除されたばかりの飯舘村に、トルコギキョウやアルストロメリアが色鮮やかに咲き誇っていたことが、強く印象に残っています。

(参考)
 フラワーバレンタイン
 https://www.flower-valentine.com/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。

−田尾陽一『飯舘村からの挑戦−自然との共生をめざして』(ちくま新書、2020.12)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073631/

著者は1941年神奈川県生まれ。東京大学大学院で物理学を専攻した後、ITベンチャーを起業し、大手セキュリティ会社の役員まで務めらた方。エネルギー研究者になった背景には、4歳の頃に広島市郊外に疎開した時に原爆の光を目撃した原体験があるそうです。

2011年6月、原発被災地を訪ねた著者たちは、全村避難指示が出されていた福島・飯館村の地元の農家の方たちと連携して「ふくしま再生の会」を立ち上げました(翌年にNPO化)。それから何度も現地を訪ね、村内の放射線量の測定活動を始められたのです。それから10年、住民目線で原発被害地域の再生に取り組んでこられました。
 なお、著者は2017年に避難指示が解除された直後、飯舘村に移住されています。

著者は、田中正造翁の「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」という言葉を引用し、「現代は真の文明社会ではない」と断じています。
 そして、自然の中で再び生きようとする飯舘村の人たちと協働することによる新しい生き方を提案しています。それは「自然と人間の共生を取り戻す」こと。「近代文明を見直す壮大な哲学的課題」であり「原発事故とコロナ禍を考察する最大の切り口」でもあるとしています。

著者は読者に「現地に足を運んで、ともに考え、豊かな自然の中で試みている再生の活動に参加してもらいたいと切に願っている」と訴えています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 〇 緊急事態宣言の下で[1/18]
 https://food-mileage.jp/2021/01/18/blog-297/

〇 岩手の鹿肉と福島の干物、地層処分と紫外線、社会的投資戦略、おしどりさん[2/1]
 https://food-mileage.jp/2021/02/01/blog-300/
(拙ブログも300号となりました。駄文拙文、恐縮です)

〇 大江正章さん『有機農業のチカラ』から学ぶ(市民研入門講座)[2/6]
 https://food-mileage.jp/2021/02/06/blog-301/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 福島の「今」を知ろう〜飯舘村を中心に〜
 講師:石井秀樹さん(福島大学農学群 准教授)
 日時:2月13日(土)14:00〜16:00
 場所:オンライン
 主催:NPO法人コミュニティスクール・まちデザイン
 (詳細、問合せ等↓)
 http://cs-machi.com/?p=5315

○ 地域から生み出す自然との共生・草の根のデモクラシー
 〜ヨーロッパにおけるミュニシパリズムの経験から学ぶ〜
 講師:伊藤公雄さん(京都産業大学教授)
 日時:2月14日(日)13:00〜14:30
 場所:オンライン
 主催:縮小社会研究会
 (詳細、問合せ等↓)
 http://shukusho.org/data/50announcement.pdf

○ ICRP新刊行物と福島原発事故における放射線防護
 −作成にあたった委員を招いてのオンライン討論会
 日時:2020年2月20日(土)13:00〜16:00
 場所:オンライン
 主催:市民科学研究室・低線量被曝研究会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/icrppublicationsevent_20210220/

○ 第21回脱成長ミーティング(報告者:高坂 勝さん)
 日時:2020年2月23日(火、祝)13:30〜16:30
 場所:オンライン
 主催:脱成長ミーティング
 (問合せ等:白川氏メールアドレス)
 JZI03162(アットマーク)nifty.ne.jp

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「恵方を向いて食べないと、ご利益はないわよ」
「な、なんと(南南東)!」

例年より1日早い節分と立春は暦の上の話でしたが、2/4日には観測史上もっとも早い春一番。暦も変わりつつ(壊れつつ?)あります。
 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.212は2月26日(金)[和暦 睦月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 今号からは2021年版を使わせて頂きます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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