【ブログ】奥沢ブッククラブ『モモ』

2021年も3月に入りましたが、1都3県の緊急事態宣言は継続中。
 それでも季節は巡り馬酔木の花が満開に。今年の春は早そうです。

3月8日(月)の19時からは奥沢ブッククラブにオンライン参加。
 65回目の課題本は、ミヒャエル・エンデ『モモ』です。この日の参加者は8名ほど。

まずは、前回の宿題(オーウェル『1984年』の最後の一文の意味)について意見や感想の交換。 
 主人公は完全に洗脳されたのか、それとも抵抗心を偽装したものか等、同じ本を読んでも感想は人によって様々です(まさに読書会の醍醐味!)。 
 
 続いて参加者からのオススメ本の紹介。 
 畑村洋一郎『みる わかる 伝える』、エンデ『オフェリアと影の一座』、戸部良一ほか『失敗の本質』、柳美里『JR上野駅公園ロ』、ショーン・タン『内なる町から来た話』、ジェフ・ブラックウェル&ルース・ホブディ『ルース・ベイダー・ギンズバーグ』、見田 宗介『まなざしの地獄』、永山則夫『無知の涙』、チコ『いのちのご飯』など。 
 ドラマシリーズ『ミセス·アメリカ』を紹介された方も。 
 今回も幅広く興味深いラインナップ。何冊か手にとって見ようと思います。 
 
 ちなみに私は、赤松利一『藻屑蟹』を紹介させて頂きました。

後半は、この日の課題本であるミヒャエル・エンデ『モモ』についての感想等のシェア。 
 進行役の方が「この本、どこの家に行っても置いてあるね」とつぶやいたように、皆さん1度は手にとった経験はあったようです。 
 読んだ時期は、小学生から大人になってからなど様々。中学生くらいまでには、ぜひ読んでもらいたい一冊との意見も。 
 私はというと、たぶん読んだのは大学生の頃あたり。資本主義批判等の文脈でよく引用・参照されていることがきっかけだったと思いますが、読み物としてもそれなりに面白かったという記憶はあります。 

 それで今回、何十年ぶりかで手にとってみると、改めて多くの深い言葉に出会えました。 
 「あいての話をほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです」 
 「時間とは、生きるということそのもの。人間が時間を節約するほど、生活はやせほそっていくのです」 
 「おまえの見たり聞いたりしてきたものは、おまえだけのぶんの時間なのだ」
 「ゆっくり行けば行くほど、どんどん早く運んでくれる」等々。 

 流行らない居酒屋を営んでいた「友だち」は(大人ですが)、ファストフ ード店に業態転換して忙しい毎日を送っており、モモが訪ねていってもろくに話ができないといったエピソードも。

効率優先(偏重)社会が、 いかに人間の暮らしや友人関係を阻害するかが、子どもにも分かりやすい言葉で書かれています。灰色の服を着た「時間どろぼう」は、 さしづめ資本(おカネ)の象徴でしょうか。 
 また、子ども達だけがデモを行う場面は、最近のZ世代による社会運動を予言していたかのようです。 

さて、物語はというと、モモの活躍により盗まれていた時間は元の持ち主のところに戻ってくるというハッピーエンドを迎えますが、 
 「現実の社会では難しいんだろうね」と参加者の一人がつぶやいたのが印象的でした。 
 
 スローフードという言葉もありますが、せめて食事だけでもゆっくりすることが、効率偏重社会を打ち破るための、確実な(自分にもできる)一歩となるかも知れません。

これも恒例、最後のUさんによる絵本の朗読は五味太郎『つくえはつくえ』。 
 細々とした絵を眺めるだけでも楽しそうです。
 
 次回は4月12日(月)19時から。課題本は柳 美里さんの『JR上野駅園ロ』です。これもなかなか重たい本ではあります。

読書会が終わってから、久しぶりに Youtube でネーネーズのライヴを視聴。 
 『黄金の花』もまた、反資本主義、反拝金主義の名曲です。

「きれいな目をした人たちよ 黄金でその目を汚さないで 本当の花を咲かせてね」