【ほんのさわり】平賀 緑『植物油の政治経済学』

 −平賀 緑『植物油の政治経済学』−
 http://www.showado-kyoto.jp/book/b432689.html

著者は1971年、広島県出身。
 香港留学、新聞社や金融機関勤務を経て、京都・丹波で「田舎暮らし」を実践しながら市民運動を企画・運営。その後に大学院に入り、ロンドン市立大学修士(食料栄養政策)、京都大学博士(経済学)を取得され、現在は京都橘大学准教授を務められているというユニークな経歴をお持ちの方。
 
 本書は植物油に焦点を当て、「フードレジーム論」という日本ではあまり馴染みのない視点から分析することで、国境を超える資本主義と農業、食料との複合的な関係を明らかにしています。

「豆知識」欄で説明したとおり、食生活の洋風化により海外原料に依存している油脂類の消費が急増し、結果として自給率低下につながったというのが「通説」ですが、実は、油脂の原料依存体制は戦前にすでに構築されていたものだそうです。
 政商とも呼ばれた財閥は、近代国家建設という国策支援・保護の下、中国東北部で大量に大豆を加工し、肥料原料としての大豆かすを日本に移出するための大規模工場建設を進めました。

そして戦後も、いったん構築された海外原料に依存するという生産構造は継続され、今度はアメリカ産を中心とする大豆を輸入して国内で搾油するという体制が確立したのです。
 さらに食品企業とそのグループは、油脂の需要拡大のため、インスタントラーメン等の新製品開発や販売促進に取り組んだ様子も明らかにされています。著者はこの過程を「資本による食の包摂」と呼んでいます。

現在、資本主義については様々な議論が行われていますが、身近な食の分野から資本主義の本質に迫っている本書は、私の目に貼りついていた多くのウロコを剥がし落としてくれました。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.216、2021年4月26日(月)[和暦 弥生十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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