【ブログ】「食と農の市民談話会」がスタートしました。

2021年6月8日(火)。
 全6回・月1回のペースでオンライン開催する「食と農の市民談話会」の第一回目の日です(NPO市民科学研究室 主催)。

20名以上の方が事前に申し込んで下さっています。
 19時にスタート。
 市民研・上田昌文代表の開会挨拶に続き、黒子の私(中田)から「皆さまと話し合いたいこと」として、会の趣旨について10分ほど説明。

フード・マイレージ等から食と農の間の距離が拡大していること。その背景には私たちの食生活の大きな変化があること。
 そのことが、栄養バランスの崩れ、大量の食品ロスの発生、食に対する不安の高まり、食料自給率の低下、担い手の高齢化や農地の減少、集落の消滅など多くの課題をもたらしていることを、データを用いて説明

そして、「距離の拡大」は科学や技術の面(大規模化、専門化)でも問題となっているなか、大切で身近で、自ら選択できる余地が大きく、地域の風土や伝統と密着している「食や農」は、距離を縮小させる取組みの先駆けになり得るのではと問題提起。

この食農談話会では、(自戒を込めて)評論や批判ではなく(それも大切だけど)、食や農が抱える課題を「自分ゴト」として捉え、一人ひとりが、できることから、実践に移していくことのきっかけとなることを期待したい、と説明させて頂きました。

そしていよいよ、本編のスタート。
 第1回目に話題提供を頂くのは、ベジアナ、農ジャーナリストの小谷あゆみさん。「一億農ライフ-都市のわたし達による食の革命」と題する詳しい資料を準備して下さっています。

以下は、特に私の心に残った部分について、中田の責任により順不同で意訳したものです。
 当日の動画は市民研HP(リンク先の下の方)に掲載されていますので、(市民研会員以外の方は有料ですが)興味を持たれた方は、ぜひ、ご覧下さい。
 小谷さんの熱い思いが伝わってきます。

小谷さん
 「今日は、自分で作れば色んな事が変わるよ、都市に住む私たち市民の方から食や農を変えていこう、という話をしたい。
 農村にも都市にも課題がある。改善すべきは関係性。うまく連携、マッチングすれば Win-Win の関係になれる」

「石川県のテレビ局で農村の現場を伝える仕事をするうち、農の価値は食料を生産することだけではなく、その過程での喜びや感動があることを知り、次第に農村風景や里山に魅せられていった」

 「フリーになって東京に来てみると、なんだ、東京にも農はあるじゃないかと。区民農園での野菜を作り、その楽しさをブログで発信することを始めた。野菜作りは『命の見える化』。
 農の価値は、人に教わるのではなく、自ら体験することによって心から理解できる。都市農業は、地方の産地のことを知る玄関口にもなる」

「みんなが農を体験し感動すること(『農ライフ』を送ること)で、食や農のことを自分ゴトにすることができる。体験農園利用者にアンケートすると、野菜に愛情を感じるようになった、スーパーの野菜の逆にきれい過ぎることが分かった等の感想。作る喜びを生産者だけのものにするのはもったいない」

「高い山を築くには広~いすそ野が必要。プロ生産者を育て農業界全体を発展させるためには、菜園愛好家など多くのアマチュアが必要。農に触れる市民が増えれば、生産者をリスペクトする気持ちも育つ。プレーヤーもサポーターも、みんな同じ輪の中」

小谷さんが取材された各地の「楽しい」事例も紹介して下さいました。
 山間部や島しょ部で、牛が自分で土地を耕す「耕畜連携」の取組み、景観や伝統そのものの価値をアピールする「世界農業遺産」の地区など。

「おいしいとは記憶であり体験。農は見せる時代になった(日本の農家の方は、まだ不得意だが)。オープンにすることでイノベーションは自ずと始まる。正しい情報発信だけではなく『楽しい』情報発信が必要。楽しくないと続かない」

「コロナ後、食や農に対する価値観が変わった。以前は東日本大震災など被災地を応援する消費が注目されたが、今度は都市住民自身が災いの当事者となった」

 「世界中の都市で、自ら耕そう、自分たちで食べものを作ろうという人たちが増えている。2019年12月に東京・練馬区で開催された世界都市農業サミットでも、都市部でコミュニティ農園が増えている状況等が報告された。都市住民が食べものを自給することで、自らの暮らしを自衛しようとする動きが世界で広がっている」

「みんなが農に携わる『ニュー農マル』の時代が来た。応援するだけじゃつまらない。プレーヤー(踊る阿呆)が楽しい」

 「食べものをつくることは、自分自身の健康のためだけではない。本来、“health”には健康だけではなく、『健全』『まっとうな』といった意味がある。農とは、正にhealthを提供する営み。私たちの健康は地球の健康、社会の健全性にも通じる」


コロナ後の世界の都市農業の状況などグローバルな状況を踏まえつつ、ご自身の実践や取材を踏まえた興味深い報告でした。
 何より、明るく楽しく分かりやすく、パワフルな小谷さんの語り口は、参加者の皆さんの心を捉えたようで、後半の意見交換も盛り上がりました。

 ホスピスにかかわっておられる男性は、入所者の農業体験を支援していること、農家の方が看護師に野菜を持ってきて手渡してくれていること等のエピソードを紹介して下さいました。
 「農業は文化そのものであり、作るプロセスを知ることが食べものを大切にすることにつながるのでは」とのコメントも。

 「地域の子育てグループの人たちなど、子どもに農業体験をさせたいというニーズはあるがなかなか広がらない。食育や体験対する農業サイドの意識が高くないのでは」との意見。

「消費者が若干高くても国産農産物を食べることが、日本の農業を育て地方活性化にもつながるのではないか」との意見。

 「現実には、スーパーで値段だけで選ぶ消費者が圧倒的に多いのが現実。楽しさをアピールしながら、どうすれば一歩踏み出せるかが課題」とのコメントも。

 昨年から会社組織が運営する市民農園に参加されている女性は、
 「実際にやってみることで知ることが多かった。市民農園に対する人気が高い一方で、地域には耕作放棄地もあり、マッチングできていない」との体験談を紹介して下さいました。

 「半農半Xなど、好きな時間にかかわれるようなスタイルが広がっていけばいいのでは」とのコメント。

 米作り体験等を主催されている男性からは
 「農に触れることで、生きる喜びや豊かさを知ることができる。社会を変えていくど真ん中に農がある」等の力強いコメントを頂きました。

小谷さんからは、一つひとつの意見等に対して、実際の取材体験等に基づく丁寧にコメントして下さいました。

定刻の21時過ぎにいったん終了し、小谷さんを含めて時間がある方には残って頂いて30分ほどの延長戦。
 こちらも本音の議論で盛り上がりました。

 まずは第一回目は成功のうちに終了(自画自賛ですが)。
 次回(7/13(火))は、東電福島第一原発事故による帰還困難区域内で、放置された牛たちを育てている谷さつきさん(もーもーガーデン、福島・大熊町)に話題提供を頂く予定です。
 ご関心のある方の参加申し込み(こちらから)をお待ちしています。