【ほんのさわり No.221】いとうせいこう『福島モノローグ』

−いとうせいこう『福島モノローグ』(2021.2、河出書房新社)-
 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029498/

 著者は1961年東京生まれ。編集者を経て、作家、映像、音楽、舞台など様々な分野で活躍している方。
 本書は、東日本大震災で被災し、その後も被災地で暮らし活動されている女性たちにインタビューしたノンフィクションです。「あとがき」によると、小説『想像ラジオ』(2013年、野間文芸新人賞)で震災の死者に成り代わって「語り過ぎた」ため、本書はインタビュワーの質問や意見などは全てカットした「モノローグ」となったとのこと。

避難先から帰ってきたお母さんたち、災害FMを立ち上げた社協職員、地域の復興に取り組む村会議員や農業者の方達から、著者は「忘れたいこと」「忘れられないこと」を聴き出していきます。

冒頭の章で語っているのが、福島・大熊町の帰還困難区域内にあるもーもーガーデンで牛を飼っている谷さつきさん(文中に本名は登場しません)。
 震災後、東京でみたテレビニュースの、取り残された牛たちがバタバタと餓死している映像に衝撃を受けた谷さんは、単身、移住して牛たちの命を救う活動を始めらました。
 「私はとにかくただ牛を生かしたいコンビニ店員です。生かしたいんです。あんな(テレビ映像のような)ことにはもうしたくないんです」
 「震災と原発事故でいちばん困難な場所で、牛たちは頑張って生き抜き、草を食べてふるさとを守っている姿をみてもらいたい」「絶対ここからいいものを生み出したい」と語っておられます。
 なお、谷さんには後述の第2回 食と農の市民談話会で話題提供して頂く予定です。多くの方に、谷さんの声を直接聞いて頂きたいと思います。

(参考)
もーもーガーデン(福島・大熊町)
 https://moomowgarden.or.jp/
食と農の市民談話会
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeetings/

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.221、2021年7月10日(土)[和暦 水無月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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