【ほんのさわり No.225】指出一正『ぼくらは地方で幸せを見つける』

−指出一正『ぼくらは地方で幸せを見つける−ソトコト流ローカル再生論』(2016/12、ポプラ新書)
 https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8201111.html

著者は1969年群馬県生まれの月刊『ソトコト』編集長。
 島根県「しまコトアカデミー」のメイン講師を務められるなど、多くの地域づくりプロジェクトに関わり、「関係人口」という言葉の提唱者の一人とされています(注)。

著者は、これまでの社会は幸せや豊かな社会の尺度を東京や東京的なものに置いてきたのに対して、現在、これら既成の価値観にとらわれることなく、それぞれのやり方で自分が手ごたえを感じながら、地域で本当に豊かな暮らしを送っている若い人たちが各地で活躍しているとしています。

著者自ら取材した「顔の見える」各地の「ローカルヒーロー」たちとは、例えば新潟の限界集落で古民家を「出会いの場」としてリノベーションしたアート集団、ボランティアをきっかけに宮城の半島部に移住した女性たち、島根の離島で仕事を作るIターン移住者、山形で伝承野菜を生産する農家の後継者と仲間たちなど。
 全国各地で活躍する多くのヒロイン・ヒーロー達が紹介されています。

彼女・彼らには、人の役に立ちたい、地域の支え手になりたいという(ソーシャルな)意識が非常に強いという共通点があるとのこと。また、楽しいことを小さく始めて自分たちが面白がっていると、回りに仲間に入りたいという人が増えて、コミュニティの形成につながっているそうです。

さらに、「正論(「べき」論)では人の共感は得られない、届かない」という言葉も印象に残りました。個人の正義ではなく、地域全体の未来を自分ゴトとして考え、楽しみながら行動することが大切としています。

(注)
 オーシャン・カレント欄で紹介したポケマルの高橋博之さんも、関係人口の提唱者のお一人。『都市と地方をかきまぜる』も地域づくりに関心のある方には必読の書です。
 https://food-mileage.jp/2016/09/15/hon-9/

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.225、2021年9月7日(火)[和暦 葉月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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