
−勝川俊雄『魚が食べられなくなる日』(2016/8、小学館新書)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09825278
1972年東京生まれの水産学者(東京海洋大学准教授)である著者は、このままでは日本の水産業は衰退の一途をたどり、漁食文化の存続さえ危ぶまれると強い警鐘を鳴らしています。
資源量が減る一方で消費者の「魚離れ」もあり、「獲れない+売れない→儲からない」という悪循環から漁村の限界集落化が進んでいるというのです。
その背景には、著者は水産政策の不備もあるとします。
例えば、適切な漁業規制のためには入口規制(漁船数や網の目など)と出口規制(漁場から持ち帰る魚の量)の併用が必要ですが、後者のうち世界のスタンダードとなっている個別漁獲枠方式は、日本では導入されていません(この点は2020年に施行された新漁業法に、一部盛り込まれています)。
一方で、日本漁業には大きなポテンシャルがあるとのこと。
すなわち日本の排他的経済水域(EEZ)の面積は世界6位で、三陸沖など世界でも類を見ない好漁場があり、さらには魚の価値を最大限に引き出す魚食文化もあるというのです。
また、日本漁業の再生のためには消費者にも責任・義務があるともしています。
それは、漁業の現状に関心を持ち環境にも配慮すること。一言でいえば「大切に食べる」ことによって、日本の優れた魚食文化は世代を超えて継承されるとしています。
出所:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
No.226、2021年9月21日(火)[和暦 葉月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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