【ブログ】番外編「食と農の市民放談会」

「食と農」についても多くの課題が顕在化した2021(令和三)年も、間もなく暮れます。
 自らの無力感と焦燥を何とか紛らわせたらと、NPO市民科学研究会(市民研)上田昌文代表に企画を持ち込んで開催できたのが「食と農の市民談話会」(2021年6~11月、全6回)でした。
 お忙しいなか話題提供を下さった6名の方(ボランティアです!)、参加者の皆さまに支えられて何とか終了。

このまま終わるのはもったいないと勝手に思い、集大成のような会ができないかと無理筋の企画を再び上田代表に持ち込み、話題提供者の皆様は普段にも増してお忙しい年の瀬、おそらく企画倒れになるとダメもとで相談させて頂いたところ、12月21日(火)であれば4名の方は都合が付けられるという連絡を頂いたのです。

 21日は都合がつかなかったお2人の方も色々と調整して下さり、別の日を提示して下さっていたのですが、申し訳ありませんでした。

ということで、2021年12月21日(火)19時から番外編として「食と農の市民放談会」を強行開催。
 告知期間が短かったにもかかわらず、今回も20名以上の方が参加して下さいました。有機農業に長く携わって来られた研究者、生産者、流通関係の方も参加して下さっています。

 なお、今回はざっくばらんな会ということから、これまでのような動画アーカイブの公開は行わないこととし、私も左手には氷水のグラス(あれれ、ちょっと色がついているかも)。

まず、私(サンタの扮装は悪ノリ過ぎたかも)から、パワーポイントの資料を使ってこれまでの6回の談話会のふり返り。
 開催の趣旨(企画者としての狙い)は、食べ物を作る現場を「自分ゴト」にするきっかけとすることでした。

続いて各回のポイント(私の独断=心に残ったこと)を紹介させて頂きました。
 初回(6/8)に話題提供を頂いたのは農ジャーナリスト・ベジアナの小谷あゆみさん。「都市に住む私達による食の革命」というタイトルで、言葉遊び(ダジャレ?)も連発! という初回にふさわしい楽しい会となりました。

第2回(7/13)は、もーもーガーデン(福島・大熊町)で震災と原発事故を生き延びた牛たちを飼っている谷さつきさん。
 帰還困難区域内という日本でもっとも困難な場所から、飼料自給や炭素の土壌貯蔵など「未来のモデル」を発信していきたいと力強く語って下さいました。

谷さんは生憎この日は不参加でしたが(お忙しいなか日程調整して下さったのに、申し訳ありませんでした)、10月にもーもーガーデンを訪ねた時の様子を紹介させて頂きました。
 りんご仕分け等のボランティアに伺ったのですが、たいしたお役には立てなかったかと思います。

第3回目は農業ジャーナリストの榊田みどりさん。
 現場を丹念に歩きつつ農政の現状にも精通された榊田さんは、「都市と農村の心地よい関係についてもう一度考えたい」と話されました。

第4回(9/7)では大和田順子さん(同志社大学)が話題提供して下さいました。
 「農山村に誘われた10年」と題し、生活と自然が共鳴している農村の価値を可視化して伝えていく活動をこれからも続けていきたい、と決意を語って下さいました。

第5回(10/5)は八幡名子さん(巻き寿司やさん)。
 こだわった食材を生産者の思いとともにお寿司に巻き込んでおられる様子等を、きれいな写真とともに楽しく話して下さいました。

都合がつかなかった八幡さんが、この日のために寄せて下さったメッセージを紹介。
 「巻き寿司パーティーを開催する機会があれば、腕を振るいます」と約束して下さいました(楽しみにしています)。

最終回(11/9)は平賀 緑さん(京都橘大学)。
 現在の食や農の姿が、資本主義の歴史のなかでどのように形成されてきたかという、時間的にみ空間的にもスケールの大きな話で、6回シリーズの最終回をまとめて下さいました。
 なお、平賀さんのご著書『食べものから学ぶ世界史』は、お話の内容の理解を深めることのできる好著です。

こうしてふり返ってみると、毎回、中身の濃い話題提供を頂いたことに改めて感銘さえ覚えます。参加者は各回20名以上で、毎回参加して下さった方もおられます。談話(質疑応答や意見交換)も大いに盛り上がりました。
 なお、これら6回の動画アーカイブは市民研HPから購入・閲覧できます(市民研正会員の方等以外は500円/回)。

続いて、話題提供者のうちこの日参加して下さった4名の方から、語り尽くせなかったこと、その後の新たな展開等についてご発言を頂きました。

小谷さんは、この日のためにパワーポイントの資料を準備して下さり、本年5月に農林水産省が公表した「みどりの食料システム戦略」について、畜産関係の部分を重点的に報告して下さいました。

これを受けて、榊田さんや大和田さん、平賀さんも「みどり戦略」についてコメント(他にも都市農村交流など、様々な話題が出ました)。
 2050年までに有機農業の面積割合を25%(現在0.5%)に引き上げる等を内容とする「みどり戦略」は、農業関係者の間に大きな波紋を広げているものの(この日も盛り上がりましたが)、一般の消費者や市民の方にはあまり馴染みがありません。
 専門的な議論の前に、もう少し分かりやすい解説が必要だったと進行役として反省。

平賀さんは、議論の素材の一つとしてナオミ・クラインの動画 “A Message from the Future II” を紹介して下さいました。なかなか興味深い内容です。

(右は “A Message from the Future II: The Years of Repair” YouTube画面より)

その後は参加者全員も交えて意見交換。
 農業と農政の現状への批判・注文の一方、それぞれのお立場(小児科医の先生など)で現状を打破しようと取り組んでおられる内容を紹介して下さいました。

途中で小谷さんが「生産者と消費者の提携の方法(提携の10カ条)」を、「正に声に出して読みたい日本語」であると紹介されました。
 日本有機農業研究会が1978年に発表し日本の有機農業運動の基礎となっている重要なものですが、これも一般の消費者や市民にはほとんど知られていません。
 現にこの日の参加者のお一人(毎回、熱心に参加して下さっている女性)からは「初めて聞いた。ぜひ『10カ条を読む会』を開催して頂きたい」とのリクエストも。
(後日、さっそく小谷さんとこの参加者の方が中心となって実施されたそうです。)

また、season2(後述)で話題提供をお願いしている浅見彰宏さん(福島・喜多方市山都)からは、条件不利地での農業や暮らしの実情について話して頂きました。
 今のところ雪はそれほど深くないとのことでしたが、現在はどうなっているでしょうか。

会の最後には、season2 の告知もさせて頂きました。
 明年1~3月の3回シリーズで、今回は中山間地など条件不利と呼ばれる地域で活躍されている3名の方に話題提供を頂きます。
 市民研HPでも告知していますので、ご関心のある方の参加をお待ちしています。

これで2021年は、6回の「食と農の市民談話会」と、締めくくり(?)としての「放談会」も終了。話題提供下さった6名の皆様、議論を盛り上げて下さった参加者の皆さま、どうも有難うございました。
 そして何より、参加者の募集から当日のzoomの運営まで一手に引き受けて下さった市民研の上田昌文代表に、感謝申し上げます。

「食と農」の課題の多くは来年に持ち越すことになりました(生乳の廃棄は何とか回避できそうとの明るいニュースはありましたが)。
 談話会 season2 を含め、微力(無力?)ながら、明年も「より豊かな食の実現」に向けて皆さまと手を取り合って取り組んでいきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。