【ほんのさわり】アレクシエーヴィチほか『アレクシエーヴィチとの対話』

−スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、鎌倉英也、徐京植、沼野恭子『アレクシエーヴィチとの対話−「小さき人々」の声を求めて』(2021.6、岩波書店)−
 https://www.iwanami.co.jp/book/b583375.html

アレクシエーヴィチは1948年、ウクライナ人の母、ベラルーシ人の父のもとで西ウクライナで生まれ、幼い頃は祖母に育てられたそうです。両親とともにベラルーシに移住して大学を卒業後、ジャーナリストとして活躍。
 『戦争は女の顔をしていない』『アフガン帰還兵の証言』『チェルノブイリの祈り』など、対ドイツ戦の従軍女性兵士、アフガニスタンからの帰還兵と家族、放射能汚染地で暮らす人々などの声(凄絶な内容です。)を綿密にすくい上げた作品を公表してきました。
 かつての共産主義体制、あるいは現在のプーチンやルカシェンコ政権には一貫して批判的で、著作が発禁扱いとされたり、政治的な裁判の被告とされたこともありました。現在はドイツに亡命中です。

本書は、2015年にジャーナリズムの分野で初のノーベル文学賞を受賞した時の受賞講演のほか、NHK番組ディレクターによる同行取材記、作家との対談等によって構成されています。

受賞講演のタイトルは「負け戦(いくさ)」。
 旧ソ連時代に逮捕され強制労働に従事させられた詩人の言葉を引用しつつ、「人類を本当に変革しようという、大いなる負け戦」を自らも再現しようとしていると決意を語ります。
 「私が関心を持ってきたのは『小さな人』。小さな人が小さな物語を語ることが、大きな物語に触れることにもなる」
 「ソ連崩壊後に訪れたせっかくのチャンスに、私たちは『強い国』を選んでしまった。再び力の時代となり、ロシア人、ウクライナ人など兄弟が闘っている。私はウクライナもベラルーシもロシアも愛おしい。しかし今、愛について語るのはなかなか難しい」と語っています。

2016年に彼女が原発事故後の福島を訪れ、被災地の方々と交流した様子も描かれています。
 そしてチェルノブイリ原発は、現在、作業員の人質とともにロシア軍に占拠されていると報じられています。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.237、2022年3月3日(木)[和暦 如月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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