【豆知識】沖縄の耕地面積の長期推移

先の大戦は日本の農業生産にも甚大な影響を及ぼしました。農業従事者の多くが出征・戦病死し、復員できた方も直ちに農業生産を再開することはできず、国民の多くが「餓死」の危機に直面しました。
 リンク先の図242は、1925年以降の全国、北海道及び都府県、そして沖縄県の耕地面積の推移を表したものです(注)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/05/242_kotisuii.pdf

太平洋戦争が始まった1941年における全国の経営耕地面積は568万ha。これが終戦直後の47年には501万haへと一気に86万ha(14.6%)減少しました。なお、これは混乱期で把握し切れなかった農地もあったと考えられます。
 その後、1970年頃まではほぼ横ばいで推移していましたが、70年代に入って以降は経済が高度成長する中で減少傾向を強め、2020年では戦前から約半減(1941年比 55)しています。
 地域別にみると北海道のみは増加(同112)しており、都府県は減少幅が大きく(同45)、いずれの地域でも減少しています。

戦後、アメリカの統治下に置かれていた沖縄県において、戦後最初の農林業センサスが実施されたのは、本土復帰に2年先立つ1970年のことでした。この時点で耕地面積は1941年比77と、全国(88)、都府県(86)を下回っており、その後、全国と同様の減少傾向で推移しています。
 沖縄では多くの地域が戦場となり、激しい地上戦も行われました。住民も含めて多くの人命が失わるなか耕地も荒廃し、さらに戦後には多くの耕地等が軍用地として接収されました。
 沖縄県における耕地面積の減少の背景には、これらの事情があります。

(資料)
 農林水産省「農林業センサス累年統計‐農業編‐」
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/past/stats.html

 (注)
 耕地面積の動向をみる場合は作物統計の数値(実測値)を用いるのが一般的ですが、本稿では長期的な推移をみるため農林業センサスの数値(農家等が自ら記入するため過少となる傾向がある)を用いています。
 なお、耕地(農林統計における用語)と農地(農地法による法令用語)は、ほぼ同じものです。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.242、2022年5月15日(日)[和暦 卯月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 (購読(無料)登録もこちら↑から)
 (「豆知識」のバックナンバーはこちら↓に掲載)
  https://food-mileage.jp/category/mame/