【豆知識】世界の人口大国と穀物自給率

パンデミックやウクライナ情勢により、世界的に食料安全保障に対する懸念・関心が高まっています。ここで改めて、世界の中で日本がどのような状況にあるかを確認しておきます。
 リンク先の図245は、世界各国の穀物自給率を人口の大きな国の順に並べたものです。

 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/07/245_2_kokumotu2.pdf
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国連統計によると2018年の世界の人口は76.3億人。
 最も人口が多いのは中国(14.3億人)で穀物自給率は99%となっています。中国は世界最大の大豆の輸入国ですが、基礎的な食料である穀物についてはほぼ自給しています。次いで人口大国としてインド、アメリカ、インドネシア等が続きますが、世界6位のブラジルまでは穀物自給率は100%を超えています(つまり穀物の輸出国ということです)。なお、人口9位(1.46億人)のロシアの穀物自給率は184%と突出して高くなっています。
 一方で日本の特殊性も際立っています。日本は世界で10番目の人口(1.26億人)を擁しながら、穀物自給率は28%と、人口の多い国の中では際立って低くなっているのです。

図の右の方では、日本と、人口14位(0.98億人)のエジプトを比較しています。
 エジプトの穀物自給率は46%で、今回のウクライナ危機により食料不足と政情不安の顕在化が懸念されている国の一つです。ちなみに2011年にムバラク政権が崩壊(アラブの春)した背景にも、ロシアの小麦不作があったとされています。
 日本の穀物自給率が低いことについては、とうもろこし等の飼料用穀物を大量に輸入しているからであり、主食の米は自給できているのであるから、日本は穀物の供給不安の恐れはないとする見方があります。しかし、主食用穀物に限定しても自給率は60%しかなく(米では輸入小麦等を賄うことはできない)、エジプトと大差ないようにも見えます。

 この図からは、日本は米が自給できているから心配ないというのは、楽観が過ぎるようにも考えられるのです。

注:
 穀物自給率だけで食料安全保障を語ることは適切ではありませんが、国民の生命の維持のために最も基礎的な栄養であるカロリーをどの程度国内で自給できているかをみるための指標としては、有益と考えます。

(元データの出典)
農林水産省「食料需給表」
 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
総務省統計局「世界の統計2022」
 https://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.html   

出典:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.245、2022年6月29日(水)[和暦 水無月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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