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https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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◇フード・マイレージ資料室 通信 No.245◇
2022年6月29日(水)[和暦 水無月朔日]配信
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◆ F.M.豆知識 世界の人口大国と穀物自給率
◆ O.カレント 検索マップ「未来を変えるパン」
◆ ほんのさわり 火野葦平『麦と兵隊』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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6月27日(月)、関東甲信では観測史上最速で梅雨明け。記録的な猛暑が続いています。和暦では、その名の通り水無月に入りました。
ウクライナの戦火は長期化の様相。アフガニスタンでは大きな地震が発生しました。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−世界の人口大国と穀物自給率−
パンデミックやウクライナ情勢により、世界的に食料安全保障に対する懸念・関心が高まっています。ここで改めて、世界の中で日本がどのような状況にあるかを確認しておきます。
リンク先の図245は、世界各国の穀物自給率を人口の大きな国の順に並べたものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/07/245_2_kokumotu2.pdf
【メルマガ配信時から年次等を訂正してあります。】
国連統計によると2018年の世界の人口は76.3億人。
最も人口が多いのは中国(14.3億人)で穀物自給率は99%となっています。中国は世界最大の大豆の輸入国ですが、基礎的な食料である穀物についてはほぼ自給しています。次いで人口大国としてインド、アメリカ、インドネシア等が続きますが、世界6位のブラジルまでは穀物自給率は100%を超えています(つまり穀物の輸出国ということです)。なお、人口9位(1.46億人)のロシアの穀物自給率は184%と突出して高くなっています。
一方で日本の特殊性も際立っています。日本は世界で10番目の人口(1.26億人)を擁しながら、穀物自給率は28%と、人口の多い国の中では際立って低くなっているのです。
図の右の方では、日本と、人口14位(0.98億人)のエジプトを比較しています。
エジプトの穀物自給率は46%で、今回のウクライナ危機により食料不足と政情不安の顕在化が懸念されている国の一つです。ちなみに2011年にムバラク政権が崩壊(アラブの春)した背景にも、ロシアの小麦不作があったとされています。
日本の穀物自給率が低いことについては、とうもろこし等の飼料用穀物を大量に輸入しているからであり、主食の米は自給できているのであるから、日本は穀物の供給不安の恐れはないとする見方があります。しかし、主食用穀物に限定しても自給率は60%しかなく(米では輸入小麦等を賄うことはできない)、エジプトと大差ないようにも見えます。
この図からは、日本は米が自給できているから心配ないというのは、楽観が過ぎるようにも考えられるのです。
注:
穀物自給率だけで食料安全保障を語ることは適切ではありませんが、国民の生命の維持のために最も基礎的な栄養であるカロリーをどの程度国内で自給できているかをみるための指標としては、有益と考えます。
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-検索マップ「未来を変えるパン」-
https://miraipan.jp/
食料自給率向上のような大きな課題は、国(政治や行政)が取り組むべきもので、自分にできることはせいぜい国産や地元産の食べものを選ぶこと(それはそれで大切なことですが)位しかないと思っている人も多いと思われます。
しかし、個人の立場で、食料自給率向上に正面から取り組んでいる方もおられます。
その一つが「未来を変えるパン」。
国産小麦のパンを扱っている全国のパン屋さんの検索マップで、現在、北海道から九州まで121店舗が登録されています。
フードロス削減や地産地消に配慮しているパン屋さんの新規登録の受け付け、小麦生産者とパン屋さんとの橋渡し等も行っており、また、フォーラムやセミナー、小麦畑ツアー、麦踏み体験会等のイベント情報も掲載されています(「情報ひろば」欄参照。去る6月5日の麦刈りイベントには、私も参加させて頂きました)。
運営している「パン食文化研究室」が目指しているのは、全国各地に小麦農家が増える「自給率向上」、地元産小麦を使うパン屋さんが増える「地産池消」、健康や環境に配慮したパンを選べる「持続可能な食卓」とのこと。
代表の青沼一彦さんは、勤務していた広告代理店を中途退職して神奈川・大磯に移住。ご自身も小麦を生産しパンを焼きながら、生産者や製粉事業者の方、大学等と連携し、幅広く活動されています。
このような地域における実践が、日本全体の自給率向上等にも貢献していくことが期待されます。
[参考]
未来を変えるパン
https://miraipan.jp/
6月5日の麦刈り塾の模様(拙ブログ)
https://food-mileage.jp/2022/06/07/blog-382/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−火野葦平『麦と兵隊』(1960/8、角川文庫)−
https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000418/
1938年5月、芥川賞を受賞したばかりの火野葦平は、日本陸軍支那派遣軍の報道部員として徐州作戦に従軍します(大量の宣伝ビラを撒くのも任務の一つでした)。
一時は火野自身も行方不明になったと報じられるほどの激戦の中、手帳に記した記録をもとに書かれたのが本書です。同年8月、「銃後」の日本で発表されるとたちまちベストセラーとなり、関連して作成された歌謡曲や映画も大ヒットしました。
本書で印象的に描かれているのが、一面に続く麦畑の光景です。
「見渡す限りの青々とした麦畑が、何時までも、何処までも続き」「まるで海のようだ」「どこまで行っても麦畑から逃れることができない」等と繰り返し描写され、あるいは「麦畑の土にこびりついた生命力の逞しさに圧倒されるよう」とも記しています。
しかし、種を蒔き、育て、刈り取るべき農民は、戦火を逃れるために不在です。その「無主」の麦畑の中を、火野の所属する部隊は進軍を続けます。中国軍が陣地を構えている集落を攻撃し破壊する様子、子どもを連れた母親など避難民の姿なども描かれています(現在のロシア軍によるウクライナ侵攻を想起せざるを得ません)。
そして最後の場面。火野は麦畑の中で、3人の捕虜が斬首されるのを目撃します。
火野は、その凄惨な光景に思わず目を背けたました。そのことで「私は悪魔になってはいなかった。私はそれを知り、深く安堵した」と心情を吐露しています。
なお、本書が最初に出版された時は戦時中で、検閲が行われ、作者には無断で27か所の削除訂正がなされたとのこと。最後の凄惨なシーンも、戦後、火野が記録と記憶をもとに補筆した部分とのことです。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 水俣と福島−311子ども甲状腺がん裁判[6/14]
https://food-mileage.jp/2022/06/14/blog-384/
○ 小農学会オンラインセミナー「フード・マイレージ最前線」[6/21]
https://food-mileage.jp/2022/06/21/blog-385/
○ 「核」「原子力」をめぐって。[6/26]
https://food-mileage.jp/2022/06/26/blog-386/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ RAKU歌舞伎☆から騒ぎ
日時:2022年6月30日(木)〜7月3日(日) 14時/19時等
場所:シアター・アルファ東京(恵比寿)
主催:シアターRAKU
(詳細、問合せ等↓)
https://www.ryuzanji.com/r-raku.html
○ 農の蔵講座・「パン試食講座」「ご当地小麦パンの紹介販売会」
日時:7月24日(日) 10:00〜15:30
場所:農大アンテナショップ「農」の蔵(東京・世田谷代田)
企画:パン食文化研究室
(詳細、問合せ等↓)
http://www.nodaisup.com/news/2022-06-20-2.html
○ 第26回 参議院議員通常選挙
日時:7月10日(日) 7:00〜20:00
場所:各投票所
(詳細↓)
https://sangiin.go2senkyo.com/2022/
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄。
ウクライナの戦火がやむまでお休み中です(いつ再開できるのでしょうか)。
過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.246は7月13日(水)[和暦 水無月十五日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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