【メルマガ】F.M.Letter No.249

(ウェブ掲載にはタイムラグがありますので、よろしかったら以下から登録(無料)して頂ければ幸いです。)
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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◇フード・マイレージ資料室 通信 No.249◇
 2022年8月27日(土)[和暦 葉月朔日]
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◆ F.M.豆知識  世界の飢餓人口の推移
◆ O.カレント  国連WFP「ハンガーマップ」
◆ ほんのさわり 黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 今日から葉月(八朔)。季節は巡ります。
 ロシアの侵攻から半年、去る8月24日にはウクライナは31回目の独立記念日を迎えました。前号では戦後日本の「飢餓」を取り上げましたが、今号では世界の「飢餓」について考えます。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−世界の飢餓人口の推移−

本年7月、国連は「世界の食料安全保障と栄養の現状」と題するレポートの最新版(2022年販)を公表しました。
 リンク先のグラフは、この報告書(英文)のデータから作成したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/08/249_NoU.pdf

これによると、世界全体で飢餓の影響を受けている人の数(慢性的な栄養不足人口)は、2021年には最大で8億2,800万人と推定され、これは世界の全人口の約1割を占めています。
 飢餓人口の推移をみると、2005年には約8億人だったのが2010年には約6億人、2017年には約5.7億人へと減少していましたが、2019年以降、大きく増加に転じています。
 これは、新型コロナアウィルスの感染拡大と、これに伴うロックダウン措置などサプライチェーンの混乱によって食料価格が上昇したためです。
 また、地域別にみると、アフリカが約2.8億人(うちサブサハラ約2.6億人)、アジアが約4.2億人(うちインドなど南アジア約3.3億人)等となっており、人口に占める割合もサブサハラでは約23%(東アフリカ約30%、中央アフリカ約33%)となっています。
 このように、世界の飢餓については地域的な格差(不平等)が非常に大きいのです。

また、本レポートでは、ウクライナで進行中の戦争が世界の食料需給や価格にさらに悪影響を及ぼしていることも記述されており、さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の2番目「2030年までに飢餓をゼロに」の達成には悲観的な見方が示されています。 

(データの出典)
 FAO(国連食糧農業機関)、IFAD(国際農業開発基金)、unicef(国連児童基金)、WFP(国連世界食糧計画)、WHO(世界保健機関)
 “The State of FOOD SRCURITY AND NUTRITION IN THE WORLD”(2022.7)(英文)
 https://www.fao.org/3/cc0639en/online/cc0639en.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−国連WFP「ハンガーマップ」−

 「ハンガーマップ」は世界の飢餓の現状を分かりやすく示した世界地図で、世界最大の食料支援機関である国連世界食糧計画(WFP)が毎年作成しているものです(最新版は2021年のもの)。

 全人口に占める栄養不足人口の割合(2018〜20年平均)が色分けして示されており、人口の35%以上が栄養不足という濃い赤色に塗られている国は、コンゴ民主共和国、中央アフリカ、ソマリア、マダガスカルなど中央/東アフリカに集中していることが一目でわかります。
 また、イラク、イエメン、北朝鮮も濃い赤色で塗られています。

 ハンガーマップは、以下の国連WFCのホームページ(日本語)からダウンロードできます。私もA4版で印刷し、居室の鏡の隣りに貼って毎朝眺めています。

(参考)国連WFP「ハンガーマップ2021」
 https://ja.wfp.org/publications/hankamatsufu2021

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(2002年8月、中公新書)−
 https://www.chuko.co.jp/shinsho/2002/08/101655.html

外務省で駐ウクライナ大使等を歴任した著者が2002年に発表した本書が、ロシアのウクライナ侵攻を受けて改めて注目されて版を重ねています(手元にあるのは14版(2022年4月))。

10世紀のキエフ・ルーシ公国以来の歴史がありながら、ロシア・ソ連、ドイツ、ポーランドなど周辺の強国の圧迫と思惑により、ウクライナは1991年まで実質的な独立はできませんでした。ウクライナの歴史は「国のない」民族の歴史だったのです。
 もっとも独立のチャンスは何度もあり、その最大のものは1917年のロシア革命でした。
 民族自決の原則に従って、旧ロシア帝国の支配下にあったリトアニア、フィンランドなどバルト三国や北欧諸国は独立を果たしたのですが、豊かな穀倉地帯や炭鉱を有するウクライナをロシア(ソ連)は手放すことはありませんでした。「豊かな国土を持つことの悲劇」です。
 第一次世界大戦中の一時期、ウクライナを実質的に支配したドイツ(この頃のウクライナは入り乱れる各国の軍隊により蹂躙され、各地で都市ぐるみの虐殺等も行われたそうです)の最大の関心も、穀物の調達でした。ドイツ軍はウクライナの肥沃な黒土まで貨車で本国に運び去ったそうです。

その豊かな穀倉であるはずのウクライナは、20世紀に入って2度にわたって深刻な飢饉に見舞われました。1920〜21年には約100万人が、1932〜33年には300〜600万人が犠牲になったとされています。
 それは人為的な要因によるものでした。ロシア本国向けの食料を確保するため、ウクライナでは農業の集団化が強行され生産が停滞するなか、激しい食料徴発が行われたのです。ウクライナでは農民をはじめ甚大な犠牲が出たにもかかわらず、ロシア本国にはほとんど飢饉はなかったそうです。なお、これら大飢饉があったこと自体、旧ソ連の時代は隠蔽されていました。

現在、ウクライナは(日本人にはにわかに信じ難いほどの)頑強な抵抗を続けていますが、その背景には、本書で描かれているような過酷な民族の歴史があると思われます。
 著者の20年前の「ウクライナが独立を維持して安定することは、ヨーロッパひいては世界の平和と安定にとり重要」との記述が、現在、改めて重みを持って迫ってきます。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 今回はお休みです。

▼ 筆者が登壇させて頂くイベント
 ○ 環境講演会/持続可能な食を考える
 日時: 9月11日(日) 13:30〜15:30
 場所:金沢市泉野図書館(石川・金沢市泉野町4)
 主催:NPOエコラボ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://ne-np.facebook.com/events/1289505664915558

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ オンライン被ばく学習会「海に流すな!汚染水」
 日時: 9月8日(土)19:00〜22:00
 場所:オンライン
 主催:放射線被ばくを学習する会
 (詳細、問合せ等↓)
 http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-459d01.html

○ 奥沢ブッククラブ第82回 松本清張「点と線」
 日時:9月12日(月)19:00〜21:00
 場所:オンライン
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/3319783885009130

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ウクライナの戦火がやむまでお休み中です(いつ再開できるのでしょうか)。
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.250(記念号?)は9月10日(土)[和暦 葉月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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