【ブログ】棚田四方山話(小農学会セミナー)

2022年10月27日(木)の終業後は、久しぶりに東京・お茶の水サンクレールマルシェへ。
 JRお茶の水駅・聖橋口前の広場を会場に、毎月第2・第4木曜に開催されています。

 それにしても、すっかり日が短くなりました。
 テントの周りを多くの人が行き交い、覗き込んで出品者と話をしている方も。ようやく町の人出も戻ってきましたが、年末にかけてのコロナ再拡大が懸念されます。

いつものお目当ては「なみへい」さんと「Organic & Natural shop い〜じぇ」ん。
 この日の戦利品(?)は、根付きのセリ(秋田・湯沢氏三関産)を3束。後日、鍋にして頂きました(根は初めての食感と香り)。バター餅(秋田市)は手作りの生菓子で、これは名前も存じ上げませんでしたが、くどくも甘すぎもなく優しい味です。

いつものパレスチナのオーガニック石鹸。それに兵庫・但馬漁港の旨干しホタルイカ。どちも、わが家の常備品的な地位を占めつつあります。

それに、今回初めて求めさせて頂いたのが秋田・横手市のリンゴ。
 東京出身で移住・就農され農業法人(「翠久の里」)を立ち上げられた方が、マルシェ出品のためにトラックを運転して来られたそうです。なかなか美味でした。

翌10月28日(金)の19時からは、自宅から小農学会のオンラインセミナーに参加。
 都市部において農に関わる生活者も含む新しい「小農」の普及を目指して2015年に設立された小農学会では、会員の方たちを講師としたセミナーを定期的に開催しています。

この日の講師は、安井一臣さん。 

長崎・大村市の棚田が身近にある農村地帯で子ども時代を過ごし、働き盛りを高度経済成長時代の中で過ごしたという安井さんは、現在は棚田学会の理事・副会長を務めておられます。

写真は棚田学会のHPより。

この日のテーマは「What a Wonderful World~棚田の四方山話」(以下、文責中田)。
 共有して下さった画面には、次々と全国の棚田の光景が映し出されます。四季折々の、息をのむほどの美しい景観。子ども達も含む交流の場ともなっている様子も。
 多くは、写真が趣味という安井さんご自身が撮影されたものだそうです。

安井さん
 「棚田は、米を作るだけではなく、洪水の防止(緑のダム)、地滑りや土砂崩れの防止、地下水の供給、心癒される風景を形成し多くの生きものを育む等の多面的機能・社会的役割があり、貨幣換算すると8兆円との試算もある。
 しかし、現在、多くの棚田や集落で荒廃が進んでいる」

 「棚田地域のためのキーワードは、例えば交流人口・関係人口、応援消費、オーナー、ボランティア、半農半X、二地域居住など。多様な人の関わりと多様な暮らしという視点が重要」

「これまでの私たちの暮しは、大量生産・大量消費・大量廃棄、大規模・集中、効率の重視、グローバル化に支えられてきた。
 これからの私たちの暮しは、循環、小規模・分散、ゆとり、ローカルの視点が大切になる。自然との共生が重要。その自然の大原則とは、多様な命や資源の循環」

「自治体や民間企業等でも、農を楽しむ働き方や旅行が進んでいる。
 例えば半農半X社員を募集している企業、農作業を楽しむワークホリデー制度を導入している航空会社、『おてつたび』、『おためし農業』など。
 移住希望者も増加している」

「未来世代に何を引き継ぐか。安全で美味しい食べもの、きれいな水と澄んだ空気、人々の適度な絆と支え合いなど。これらは人が生きるために欠かせない。
 そのためには、農のある暮らしができる地域社会の形成が必要であり、中山間棚田地域はそのための重要な場となる」

安井さんの話の後は、10名ほどの参加者との間で意見交換。
 「田んぼの光景は私の故郷に似ていると思った」とのベトナム人留学生の女性。
 「多面的機能の貨幣換算は、逆に大したことないと思われるリスクもある。移住願望はあっても実際に移住する人は少ない」とのコメント。
 「今年はトンボが少ない。農薬がボディーブローのように効いているのかも知れない」「私の地域では無農薬栽培が拡がっているためか、それほど減っていない」等の話題も。

 学生に棚田での農業体験を実施されている大学の先生は、
 「今の若い人たちの多くは、まだまだ大量生産などの価値観を支持している。体験だけでは持続性や循環の大切さは伝えられない」との危機感を表明されました。

予定の21時を少々回って終了。
 棚田の価値(四季折々の美しさ)は、何より安井さんの写真を見れば瞭然です。その棚田など、山間部を始めとする日本の集落が荒廃しつつある現状(危機感)を、どのようにすれば若い人たち、都市住民などに伝えていけるのでしょうか。
 写真は棚田学会のホームページにも多数掲載されています。ぜひ多くの人に観て頂き、実はその美しい景観や多面的機能が失われつつあることを想像して頂ければと思います。 

以下は余談。翌10月29日(土)は快晴。やや風はあるものの気温も上昇。
 午後から自宅近くに一画を借りている市民農園へ。

ネットの中の白菜、キャベツ、ブロッコリ等は順調に生育。そら豆も発芽。

すっかり葉が枯れた落花生を収穫。今年は1種類(おおまさり)のみ。
 出来は今イチかと思いましたが、帰宅して新聞紙に並べてみるとそこそこありました。茹でて冷凍して1年間の楽しみです。夕飯に茹で落花生、間引きした大根葉、最後のシシトウ(辛!)。

翅の破れたヒョウモンチョウ。空と雲のグラデーションが感動するほどの美しさ。花水木はすっかり紅葉、多くの実を付けています。

 2022(令和四)年も、残り2か月となりました。