先日、公表された9月の米の相対取引価格(2022年産)は3年ぶりに上昇に転じました(前年同月比5%、前年産平均比9%)。
また、21日に発表された9月の消費者物価指数は前年同月比で3.0%(生鮮食品を除く。)と31年ぶりの上昇率となりましたが、企業物価指数(企業間の取引価格)は同月に9.7%上昇していることに比べると、米や食品に限らず、多くの品目において、コスト上昇分の価格への転嫁は十分なものとはなっていないようです。
前号で紹介したように、日本の物価が上がらない原因は、デフレの長期化で賃金が上がらず、その結果、消費も増えないという悪循環に陥っているためです。
それでは、現代の日本の消費者の家計において、米の価格上昇を受け入れる余地は全くないのでしょうか。
リンク先のグラフは、本年8月の品目別の家計消費支出額を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/10/253_kakei.pdf
これによると、同月の米に対する全国平均の消費額は1,531円となっています。
これは食料への支出額の1.8%であり、例えば同じ主食でも、パンに対しては米の1.7倍、麺類に対しては1.2倍支出しています。同様に、調理食品や外食に対する支出額は、それぞれ米の8.2倍、9倍となっています。
さらに、米に対する支出額を家計の消費支出全体のなかでみると、わすが0.5%に過ぎません。
もちろん光熱費、医療、教育など多くの必要な支出もありますが、例えば携帯電話通信料には米の6.7倍の金額を支出しています。同様にゲーム代等に2.2倍、化粧品代に1.7倍、ペット関連費には1.1倍といった状況です。
むろん、何が必要な支出かについては個人の事情や嗜好により異なります。
しかしこれらの支出を見ると、現在の家計は、とても米の数パーセントの価格上昇を吸収し切れないという状況には、あるわけではないとも考えられるのです。
データの出典:総務省「家計調査」(二人以上の世帯、2022年8月)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html
参考:
農林水産省「令和4年産米の相対取引価格・数量について(令和4年9月)」(2022.10/18付けプレスリリース)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/221018.html
総務省「消費者物価指数(2022年9月分)」(2022年10月21日公表)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
日本銀行「企業物価指数(2022年9月速報)」
https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2209.pdf
出典:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.253 2022年10月25日(火)[和暦 神無月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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