新型コロナウイルスによるパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻に加え円安の進行もあり、食品等の価格値上げが毎日のようにニュースで取り上げられています。しかし前号でも紹介した通り、企業物価指数(企業間の取引価格、9月は前年同月比9.7%)に比べて消費者物価指数(生鮮食品を除いて3.0%)の上昇率は低いものにとどまっています。
コスト上昇分の価格への転嫁が十分なものとはなっていないことは、民間の信用調査会社のアンケートからも明らかです。
リンク先のグラフは、(株)帝国データバンクサービスの「企業の価格転嫁の動向アンケート」結果から作成したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/11/254_tenka.pdf
これによると、本年6月時点では、仕入れコストの上昇分を販売価格やサービス料金に「すべて転嫁できている」とする企業は6.4%、「8割以上転嫁できている」は15.3%となっているのに対して、「全く転嫁できていない」とする企業が15.3%となっていました。
ところが9月時点になると、「すべて転嫁できている」は2.3%、「8割以上」は11.7%へと低下している一方、「全く価格転嫁できていない」は18.1%へと上昇しているのです。
また、業界別にみると、9月時点で「全く価格転嫁できていない」とする企業の割合は、農・林・水産(38.9%)、サービス(30.9%)等において高くなっています。
コスト上昇分の価格への適切な転嫁は企業活動継続の上で不可欠ですが、賃金が伸びない状況のなかで消費者の値上げ受け入れ余地は小さなものとなっています。企業収益の低迷により賃上げができず、さらにデフレが進むという悪循環を、どこかで断ち切る必要があります。
(データの出典)
(株)帝国データバンク「企業の価格転嫁の動向アンケート」(2022年6月、9月)を基に筆者作成。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220603.pdf
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220906.pdf
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.254, 2022年11月8日(火)[和暦 神無月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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