◇フード・マイレージ資料室 通信 No.254◇
2022年11月8日(火)[和暦 神無月十五日]
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◆ F.M.豆知識 企業の価格転嫁の動向
◆ O.カレント CSまちデザイン
◆ ほんのさわり 小川 糸『ライオンのおやつ』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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前号に続いて価格転嫁の現状など。昨日は冬至、季節は巡ります。今夜は皆既月食だそうですね。怖そうだな(怪奇月食だけに)。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録して下さっている皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−企業の価格転嫁の動向−
新型コロナウイルスによるパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻に加え円安の進行もあり、食品等の価格値上げが毎日のようにニュースで取り上げられています。しかし前号でも紹介した通り、企業物価指数(企業間の取引価格、9月は前年同月比9.7%)に比べて消費者物価指数(生鮮食品を除いて3.0%)の上昇率は低いものにとどまっています。
コスト上昇分の価格への転嫁が十分なものとはなっていないことは、民間の信用調査会社のアンケートからも明らかです。
リンク先のグラフは、(株)帝国データバンクサービスの「企業の価格転嫁の動向アンケート」結果から作成したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/11/254_tenka.pdf
これによると、本年6月時点では、仕入れコストの上昇分を販売価格やサービス料金に「すべて転嫁できている」とする企業は6.4%、「8割以上転嫁できている」は15.3%となっているのに対して、「全く転嫁できていない」とする企業が15.3%となっていました。
ところが9月時点になると、「すべて転嫁できている」は2.3%、「8割以上」は11.7%へと低下している一方、「全く価格転嫁できていない」は18.1%へと上昇しているのです。
また、業界別にみると、9月時点で「全く価格転嫁できていない」とする企業の割合は、農・林・水産(38.9%)、サービス(30.9%)等において高くなっています。
コスト上昇分の価格への適切な転嫁は企業活動継続の上で不可欠ですが、賃金が伸びない状況のなかで消費者の値上げ受け入れ余地は小さなものとなっています。企業収益の低迷により賃上げができず、さらにデフレが進むという悪循環を、どこかで断ち切る必要があります。
(データの出典)
(株)帝国データバンク「企業の価格転嫁の動向アンケート」(2022年6月、9月)を基に筆者作成。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220603.pdf
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220906.pdf
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−CSまちデザイン−
NPO法人 コミュニティスクール(CS)・まちデザイン(東京・世田谷区)が活動の中心に据えているンセプトは、「食農共育(ともいく)」。
これは、食(消費)と農(生産)をつなぎ、生産・流通・消費のトータルな視点をもって、それぞれにかかわる人びとがともに学びあい、知恵を出し合うという考え方です。
このコンセプトの下、CSまちデザインでは、親子で農を体験し農の大切さを実感するなど学習の場の提供、「一人ひとりの食べ方が未来の地球環境を決めるのだから、食べものの選択と食べ方についてもっと大切に考えよう」と呼びかける授業の実施、過去の食文化から現在に活かせる食の知恵や工夫を学ぶ等の様々な市民講座やセミナーを実施しています。
私も会員となっており、様々な市民講座等で多くの学びを頂いてきました。
そのCSまちデザインは、本年、20周年を迎えることとなりました。これまでの活動に敬意を表するとともに、ますますの発展を期待しています。
なお、11月26日には、僭越ながら、20周年記念講演として、以下の通り話題提供させて頂きます。
以下のリンク先のように、他にも様々な市民講座等が予定されていますので、多くの方の参加をお待ちしています。
日時:2022年11月26日(土)14:00〜15:30
タイトル:「今、改めて食について考える
−フード・マイレージから見えてくるもの−」
場所:会場(東京・世田谷区宮坂3、生活クラブ館2F)
またはオンライン(期間限定で動画視聴できます。)
定員:会場、オンラインともに30名
受講料:1,500円
(詳細、申し込み等)
https://cs-machi.com/shiminkouza/
(参考)
CSまちデザインHP
https://cs-machi.com/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−小川 糸『ライオンのおやつ』(2022年10月、ポプラ文庫)−
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8101455.html
デビュー作『食堂かたつむり』(2008年)でも、食べものにまつわる優しい人生の物語を紡いだ著者の新作。2020年本屋大賞では2位にランクされたそうです(テレビドラマ化もされたとのこと)。
末期がんの33歳の主人公は、クリスマスの日、瀬戸内海の「レモン島」にあるホスピス「ライオンの家」に入居します。彼女を迎えてくれたのは「マドンナ」と名乗るオーナー兼看護士、医師などのスタッフ、個性的な入居者(ゲスト)たち、一匹の犬。それに高齢の姉妹が作ってくれるおいしい食べものでした。
毎日の朝食はお粥、昼はバイキング、夜は一汁三菜。地元産の柑橘類や魚がふんだんに使われています。
「生きる希望」ともなったのが、もう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる毎週日曜日の「おやつの時間」。一人ひとりの人生のエピソードとともに、豆花、カヌレ、牡丹餅などを味わいます。
次第に体の自由が利かず、意識がもうろうとすることが多くなってきたある日、彼女は部屋に持ち帰ったバナナから「きれいでしょ?」と話しかけられます。
驚いてバナナを見た彼女は、その美しさに愕然とします。工場で作られているわけではなく、地球からの贈り物で、ちゃんと地球とつながっているバナナ。そんな尊い命を感謝もせずに口に運び、残ると平気でゴミ箱に捨てていたこれまでの自分自身を思い起こして、「バナナの命も自分の命も、等しく尊いということ」を理解するのです。
最期まで死にたくないと思っていた彼女ですが、その命は、一本のろうそくのように、自分自身の命をすり減らして他の誰かを照らしながら、燃え尽きます。その思いが残された人たちに引き継がれている様子が描かれている巻末が、救いとなっています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 棚田四方山話(小農学会セミナー)[10/30](通巻400号!)
https://food-mileage.jp/2022/10/30/blog-400/
○ 川崎平右衛門フェスタ in 武蔵野市[11/6]
https://food-mileage.jp/2022/11/06/blog-401/
▼ 筆者が登壇させて頂くイベント
○ CSまちデザイン20周年記念講座(詳細はオーシャン・カレント欄参照)
日時:2022年11月26日(土)14:00〜15:30
場所:会場(東京・世田谷区)またはオンライン
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 世界と日本の食料安全保障を考える
〜世界で進む食料需給の構造変化と日本の食料安全保障〜
日時:11月9日(水)12:00〜14:00
場所:オンライン
主催:(株)農林中金総合研究所
(詳細、問合せ等↓)
https://www.nochuri.co.jp/topics/event/forum20221109.html
○ オンライン被ばくを学習する会
日時:11月15日(火)19:00〜22:00
場所:オンライン
講演:菅 直人氏(元総理)
主催:放射線被ばくを学習する会
(問合せ等↓)
http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com/blog/2022/10/post-56ef45.html
○ シンポジウム「福島原発事故の経験から放射線防護のあり方を改める」第4回
日時:11月21日(月)19:00〜21:00
場所:オンライン
主催:市民科学研究室
(詳細、問合せ等↓)
https://www.shiminkagaku.org/csijsymposium_icrp_202211/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
いったい、いつになったらウクライナの戦火がやんで再開できるのでしょうか(pray for peace.)。
過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.255は11月24日(木)[和暦 霜月朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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