【豆知識】減少し荒廃が進む農地

世界的に食料危機が叫ばれ、国内でも食料安全保障(食料の安定供給)の議論が盛んになっています。しかし、最大のリスクは国内にあるということで、前号では、国内農業の担い手が急速に高齢化しつつ大きく減少していることを紹介しました。
 今回は、「人」と並んで食料生産の最も重要な基盤である「土地」についてです。

リンク先のグラフは、農地面積と、荒廃農地の割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/12/256_nouti.pdf

これによると、1956年には601万haあった農地面積(ピークは1956年の607ha)は、経済の高度成長や人口増加が進むなかで、工場用地、商業用地、住宅地等への転用が進んだこと等から一貫して減少してきました直近の2022年においては433haと、ピーク時に比べると約3割減少しています。

さらには、農地面積に対する荒廃農地(注)の割合が2008年の11.3%から2020年には11.9%へと上昇しており、特に、森林化しているなど再生が困難なほど荒廃した農地の割合は5.4%から8.1%へと大きく上昇しています。
 工場用地や住宅地に転用されるなど、いわば限られた資源が有効利用されているのであればまだしも、近年は何ら有効利用されず、ただ荒廃しただけの農地が増加しているのです。

農地には、食料生産だけではなく様々な多面的な機能がありますが、その機能も今や急速に失われつつある現状にあります。

注:
 よく似た統計用語として「耕作放棄地」(農林業センサス)がありますが、これは「農作物が1年以上作付けされず、数年の内に作付けする予定が無い」という主観的な定義によるものであるのに対して、「荒廃農地」は客観的な定義に基づいていることが異なります(現在は政策上は一般に「荒廃農地」が用いられています)。

データの出典:
 農林水産省「耕地及び作付面積統計」、同 農村振興局「荒廃農地の現状と対策」(2021年12月)から作成。
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/menseki/
 https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-20.pdf

 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.256、2022年12月8日(木)[和暦 霜月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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