2023年2月4日(土)は東京・青梅へ。快晴です。
快晴の下、JR東青梅駅から歩いて10分ほどでシネマネコ(CINEMA NEKO)に到着。
かつて「映画の街」として賑わっていた青梅に約50年ぶりに復活した小ぶりな映画館です。国登録有形文化財(旧都立繊維試験場)の木造建築物をリノベーションして、2021年6月にオープン。かねて、一度来てみたいと思っていた映画館です。
ブルーの外観も落ち着いた内装も素敵で、カフェも併設。広い座席も快適です。
この日、目当てだった作品は『発酵する民』(2020年、平野隆章監督)。
2011年、鎌倉で脱原発パレードに参加していた女性たちが踊り始めた姿が描かれます(「イマジン盆踊り部」)。太陽光から火をおこし海水から塩を作る「塩炊きまつり」の様子なども。
ぐるぐると回りながら踊る、女性たちの熱気と迫力。
次第に周りの人たちを巻き込み、輪が大きくなっていきます。パリの街角では、様々な人種の人たちも一緒に踊る様子も描かれます。
盆踊り部で太鼓を担当されているのが、寺田本家(千葉・神崎町)の寺田優さん。
微生物を(雑菌も)大切にしている酒造りの様子が描かれます。2016年1月に見学させて頂いたときのことを思い出しました。
ほぼ全編にわたって流れる歌や音楽。踊りの高揚感。登場人物たちの豊かな表情。
心が奥底から揺さぶられるような、鼓舞されるような映画です。「発酵、発酵、ぐ~るぐる」の歌詞が頭から離れません。
最後のシーンは印象的。暗闇のなかに提灯だけが浮かび、歌や笑い声が聞こえています。
上映後、平野監督によるトークショーが行われました(文責・中田)。
「OurPlanet-TV等で報道番組に携わってきた自分にとって、初の長編ドキュメンタリー。
鎌倉での脱原発パレードの取材をきっかけに、パレードに参加した女性たちが踊りはじめたことを知った。練習を見学したり、自分も踊りに参加したりするうちに次第に惹かれていった」
「311をきっかけに変わっていく人々の姿を記録することで、そこから生まれるものを描きたいと思った。
自分の意見を出演者に代弁させるのではなく、カメラの前の人の話をしっかりと聞き、ちゃんと写しておこうと。撮影するうち、自分も変わっていった」
「発酵の知識もほとんどなかった。
いつ焼き上がるか分からないと話してくれたパン屋さんは、あたかも酵母と一緒に暮らしているかのよう。地球暦も紹介しているが、自然の時の流れは、時計に支配されている人間の時間とは異なる。みんな回っている。共に生きている」
「最後のシーンには、もし先が見通せなくてもこの人たちはこのように生きていくんだろうな、こういう生き方もいいな、一緒にいたいな、という思いを込めた」
最後に、オリジナルの手ぬぐいや「イマジン盆踊り部」のCDなどグッズも紹介して下さいました。
求めさせて頂いた公式パンフレットのなかで、盆踊り部の歌い手の方の言葉を平野監督が引用されています。
「一人一人が自分から踊り始めることによって、世界は変わってゆく」
多くの人に観ていただきたい映画です。
映画館の向かいにある「繭蔵」でランチ(菜食プレート)。石造りの蔵をリノベーションした建物です。
2階のギャラリースペースでは、社会福祉施設の方たちの絵画等が展示されていました。
せっかく久しぶりに青梅に来たので、街の中をぶらぶらと散歩。
古い建物の残る街並みのあちらこちらには、ユーモラスな猫の看板が掲げられています。
織物業が盛んだった青梅では、ネズミの害を防ぐために多くの猫が買われていたことに由来しているとのこと(諸説あるようです)。
昭和幻燈館には、昔の商店街のジオラマ(ここも猫ばかり)。
昭和レトロ商品博物館には、昭和30~40年頃の飲料や玩具、手描きの映画ポスターなどが展示されていました。
青梅は、ニャンとも楽しい町でした。