【ほんのさわり260】松尾康範『居酒屋おやじがタイで平和を考える』

−松尾康範『居酒屋おやじがタイで平和を考える』(2018年7月、コモンズ)
http://www.commonsonline.co.jp/books2018/2018/07/28/%e5%b1%85%e9%85%92%e5%b1%8b%e3%81%8a%e3%82%84%e3%81%98%e3%81%8c%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%81%a7%e5%b9%b3%e5%92%8c%e3%82%92%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b/

昨年12月18日(日)に東京で開催された「山下惣一さんを偲ぶ会」の呼びかけ人のお一人で、懇親会の進行を軽妙に務められていたのが松尾康範さんでした。私はこの時に初めてお目にかかり、会場で本書を求めさせて頂きました。

1969年生まれの著者は、学生時代から(特非)日本国際ボランティアセンター(JVC)の活動に関わり、94年にはJVCボランティアとして1年間東北タイに滞在。その後、JVCのタイ現地代表、故・山下さんが共同代表を務められていたアジア農民交流センター(AFEC)の事務局長等として国際協力に尽力し、現在は神奈川・横須賀市久里浜で居酒屋「百年の杜」を営んでおられます。

著者は2017年11月、AFECのメンバーとともに改めてタイを訪ねました。「ちょっと真面目に平和って何?」ということを考えながらの旅だったそうです。

そこでタイの農民から、「魚がたくさん獲れた時には周りの人におすそ分けすればいい。そうすれば、獲れなかった時には逆にまわりの人たちが分けてくれる」「日本人から教えてもらったSHINDOFIJIという言葉に平和は凝縮されているよ。人や水、土のなかの微生物たちの均衡がとれた身土不二の世界を取り戻すことが大切」等の言葉を聞きます。

著者は気づきます。
 資源の奪い合いから戦争が起こるのであれば、資源を分かち合うことで人と人との関係は深くなるのではないか。
 地産地消は、単に健康や地域経済にとって有益ということだけではなく、海外の生産者や資源に迷惑をかけないことにつながる。安心できる食べ物を選ぶという自分本位な行為が、引いては平和構築にもつながるのではないか。

かつて著者がタイで取り組んだ国際交流活動(地場の市場づくり)と、現在営まれている居酒屋は、人と人、生産者と消費者を結び、豊かな食を守っていくという点で共通していたのです。
 「僕たちは、美味しいお酒と食べ物を選ぶことから始めよう!」と、著者は訴えます。

久里浜にも、志の高い、素敵な飲食店があることを知りました。一度、訪ねてみたいと思っています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.260、2023年2月5日(日)[和暦 睦月十五日]  
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 (↑ 購読(無料)登録はこちらから)
 (↓ 「ほんのさわり」のバックナンバーはこちらに掲載)
  https://food-mileage.jp/category/br/