【ブログ】基本法見直しと農あるまちづくり(理論と実践)

2023年3月7日(火)は、18時30分から東京都中央区立環境情報センターで開催された「今夜はご機嫌@銀座で農業」に参加。

 主催者・高安和夫さんからの挨拶に続く蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)からの講義は、「農業情勢トピックス~食料・農業・農村基本法の動向と見直しの論点」。充実したスライドに沿って説明がありました(以下、文責中田)。

「現在、検証部会で基本法見直しの議論がされているが、6月の中間とりまとめを目指すなど非常にスピードが早く、日本農業の将来像といった本質的で丁寧な議論がなされているのか危惧がある。
 そもそも現行法には、食料の安定供給(自給率)や自然循環機能の維持増進など重要な項目はすでに規定されている。今回の検証は見直しというよりも修正、追加であり、将来の抜本的見直し・改定のための種まき、芽出しということではないか」

「食料安全保障や持続性確保の視点からは、直接支払の拡充、コストを反映した価格形成と消費者の責務(国民皆農)、食生活の見直しと水田の保全、都市農業の振興、自然環境機能の重視と有機農業(本来農業)運動の展開等が重要な論点になると考える」

(注:以上は蔦谷先生の講義の内容のごく一部です。詳細は『食料安保とみどり戦略を組み込んだ基本法改正へ』(日本農業年報68)所収の蔦谷先生の論考等を参照して下さい。)

参加者との意見交換に続き、最後に再び蔦谷先生から、
 「基本法見直しには多くの論点があるが、それを整理した上で、私個人としては自分でできるところから進めていきたい。市民を対象とした『農あるまちづくり講座』を、西東京市に続いて世田谷区でも開催することとなった。理屈・理論だけではなく自らの実践が重要。
 正直、多忙でしんどいところはあるが、未来のために取り組んでいきたい」等のお話がありました。

終了後は、いつもの地下の餃子屋さんで延長戦(懇親会)!
 「農あるまちづくり講座 in 世田谷」のチラシも頂きました。なかなか興味深い内容です。

なお、次回の「今夜はご機嫌@銀座で農業」は4月19日(水)に開催予定。
 詳細は追ってFB等で案内があると思われますので、ご関心のある方は足を運んでみて下さい。充実した講義に加えてジューシーな餃子も待っています。

さて、3月14日(火)は「農あるまちづくり講座 in 世田谷」の初日。
 会場は田園都市線・桜新町駅(駅前にはサザエさん一家の像も)近くのJA世田谷目黒ファーマーズセンターです。
 事務局の方によると、定員20名で募集したところ27名の応募があったそうで、会場には若い女性の姿が目立ちます。

冒頭、主催者である都市農業研究会の蔦谷栄一先生から、
 「都市農業は日本農業の先駆け。本講座は、地域づくり・コミュニティの再生、それに欠かせない都市農業と農地(みどり)の保全、住民の農への参画に向けて、多様な視点からのアプローチしていく。地元で実際に取り組んでおられる方の話を聞き、ここ世田谷でどうするかをともに学び、全8回の講座終了後も参加者の皆さまと一緒に活動を続けていきたい」等、講座のねらい等について紹介がありました(以降を含め、文責・中田)。

参加者一人ひとりから自己紹介。
 食や農について強い思いのある方ばかりのようです。障がい者等が畑作業を通じて認知・身体機能を高める「夢育て農園」を運営されている方も。
 区内や近隣の方ばかりで、西東京市在住の蔦谷先生を別にすれば、多摩地方からの越境入学・遠距離通学者は私だけのようです。

最初の講座は、世田谷区みどり政策課の方から「『世田谷みどり33』に向けた農地保全の取り組み」について。

 「世田谷区では2032年にみどり率33%の達成を目指している(「世田谷区みどりの基本計画」)。農地や屋敷林が残る7地区を農地保全重点地区に指定し、所有者がやむを得ず手放す場合は区が用地取得して区民農園等として整備している。
 農業公園はすでに3か所が開園しており、農への関心を持ってもらうために伝統野菜の栽培や配布も行っている」等の説明がありました。

続く都市農業課の方からは、まず、昭和40年代頃の世田谷の農業の様子をスライドで紹介。水田もあり、牛も飼われていたことが分かります。大ぶりの白菜は、伝統種の下山千歳白菜かも知れないとのこと。

続いて「世田谷区のまちづくりと農地・みどり【農地編】」と題する資料を基に、明治時代の世田谷区の誕生から、都市農地政策の変遷(宅地並み課税、生産緑地制度、相続税納税猶予制度、都市農業基本法など)について、簡潔かつ分かりやすく説明して下さいました。
 さらに、1950年には区の面積の23%を占めていた農地は現在は1.3%程度に減少しているものの、練馬区に次ぐ面積があり、「せたがやそだち」野菜などの流通促進に取り組んでいること等を紹介して下さいました。

終了後は、駅に向かう途中の居酒屋さんで延長戦(懇親会)。帰宅すると日付が変わっていました。

地産地消と地域自給の推進をベースに、持続可能で循環型の地域社会づくりとコミュニティ再生に向けての挑戦が、世田谷区でも始まりました。注目していきたいと思います。