【メルマガ】F.M.Letter No.262 -pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.262◇
 2023年3月6日(月)[和暦 如月十五日]
────────────────────
◆ F.M.豆知識  日本が依存している海外の農地面積
◆ O.カレント  プラネタリー・ヘルス・ダイエット
◆ ほんのさわり J.ファンゾ『食卓から地球を変える』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
────────────────────
 啓蟄の今日は、トルコ・シリア大地震から1か月、ロシアによるウクライナ武力侵攻から1年強、そして間もなく東日本大震災・東電原発事故から丸12年(十三回忌)を迎えます。藤原辰史さんは「歴史を研究する者の資格は、忘れない執念ただひとつ」とおっしゃっています。
 今号では、私たちの食と地球との関係について勉強してみました。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−日本が依存している海外の農地面積−

日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2019年、生産額ベースでは63%)と、主要国のなかでは最も低い水準となっており、私たちの食生活は大量の輸入食料に依存しています。つまり、私たちの食料の6割以上は、海外の農地で生産されているのです。
 農林水産省は、日本の農産物輸入量を海外の農地面積に換算(試算)した数値を公表しています(リンク先のグラフ参照)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/03/262_kaigai_ison.pdf

これによると、海外に依存している品目(小麦、とうもろこし、大豆、畜産物(飼料)等)の生産に用いられている農地面積は913haと試算され、これは、日本国内の農地面積(442万ha)の約2倍に相当しています。
 この状況は、当然ながら武力侵攻により海外の農地を略奪していること等を示している訳ではなく、市場経済と自由貿易の下で実現しているものではありますが、世界的に気候危機が叫ばれるなか、私たちの食料供給がぜい弱な基盤の上に成り立っていることは間違いありません。また、砂漠化など資源不足が叫ばるなかで世界には8億人以上の飢餓人口がおり、一方で日本国内では約28万haの農地が耕作放棄等により荒廃していることを考えると、倫理的にも問題なしとは言えないのではないでしょうか。

データの出典:
 食料・農業・農村審議会 検証部会 第1回資料(p.21)
 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kensho/attach/pdf/siryo-20.pdf

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−プラネタリー・ヘルス・ダイエット−
 https://eatforum.org/eat-lancet-commission/the-planetary-health-diet-and-you/

出典:The EAT-Lancet Commission

世界的に権威のあるイギリスの医学雑誌ランセット誌は、2019年、「持続可能なフード・システムによる健康的な食生活」と題する報告書を公表しました。
 この報告書は、持続可能な(地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えると同時に、世界の全人口の栄養必要量を満たす)世界のフードシステムを実現するためには、個々人がどのような食生活を実践すればいいかを提言するという画期的なものでした。

 これがプラネタリー・ヘルス・ダイエット(地球の健康のための食事法)で、具体的には、果物、野菜、豆類等の消費量を倍増すると同時に、赤身肉や砂糖などの消費量を半分以下に減らすことが必要としています。そして、このような「食の大転換」が実現しなければ、個々人の健康のみならず、地球全体の環境やフードシステム(地球の健康)にも深刻で悲惨な結果を及ぼすと警告しているのです。

一方で特定の食品群を推奨している等の批判はあるものの、プラネタリー・ヘルス・ダイエットの考え方は、地球全体の持続可能性の観点から、個々人が自らの食生活を見直すきっかけとなるものとして大いに注目されます。
 「ワンヘルス」という言葉もあるように、個々人の健康と地球全体の健康は一つなのです。

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−ジェシカ・ファンゾ『食卓から地球を変える−あなたと未来をつなぐフードシステム』(2022年3月、日本評論社)−
 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8763.html

著者はジョンズ・ホプキンス大学(アメリカ・ボルチモア)公衆衛生大学院の特別教授等を務めており、専攻は世界食料・農業政策及び倫理学とのことです。
 大学院で分子栄養学の学位を取得した著者は、「無菌実験室」を離れ、ウガンダやケニア、東チモール、ミャンマーなどの「現場」で、エイズなど公衆衛生や栄養改善の課題解決に向けて取り組みました。さらにその後は、よりグローバルな視点からのフードシステム(農場から食卓まで、食べものに関わる全てのもの)の課題解決のため、FAO等の国際機関において調査研究に従事し、イート・ランセット委員会の報告書(「オーシャンカレント」欄参照)作成にも委員として参画しています。

著者によると、私たちが口にする食べものは単なる栄養源ではなく、個人や地域の栄養や健康、地球全体の天然資源や気候変動、公平性など社会正義の課題に直接大きな影響を与えているとのこと。つまり、食べものは私たちと世界を繋ぐものなのです。

現在、世界は気候変動やパンデミック等の混沌のなかにあり、私たちは地球市民として重大な岐路に立たれていますが、同時に、公平で健康的かつ持続可能なフードシステムを実現するチャンスが大きく広がっているともしています。
 そして「私たちは行動を変える必要がある。どのような食事を選択するか、食卓に何を置くかが重要になる」としており、具体的には、カロリーを過剰に摂取しない、加工度の高い食品を避ける、中高所得国の人々は動物性食品の消費を減らすこと等を提言しています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 第2回 オーガニック学校給食フォーラム(オンライン)[2/28]
 https://food-mileage.jp/2023/02/28/blog-419/

○ ぶらり歴史散歩〜松山城址(埼玉・吉見町)[3/2]
 https://food-mileage.jp/2023/03/02/blog-420/

▼ 本当に久しぶりに筆者が主催するイベントです。
○ 地域の生産者や事業者さんを応援したい
  −「箕と環」代表・川野元基さんの思い−
 日時:2023年3月15日(水)19:00〜21:30
 場所:47都道府県レストラン 箕と環(東京・神田)
 参加費:4000円(料理代+ワンドリンク。なお、うち500円はUNHCRを通じてウクライナ等の避難民支援のために寄付させて頂きます。)
 定員:20名(事前申し込みが必要です)。
 (詳細↓ 個別にメッセージあるいはメールでお申し込み下さい。)
   https://www.facebook.com/events/2141427936048907/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 今夜はご機嫌@銀座で農業
 日時:3月7日(火)18:30〜20:00
 場所:中央区環境情報センター(東京・京橋)
 主催:Slow Food Ginza
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/156914037192703/

○ ”ママとマハとミカ”−パレスチナに生きる女性たち
 講師:高橋美香さん
 日時:3月10日(金)19:00〜、11日(土)14:00〜
 場所:M.A.P.(狛江の小さな沖縄資料館)、オンライン
 主催:M.A.P.
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/878422640037291/878422650037290

○ 「ガザ 素顔の日常」ロータスシネマ vol.42@西新宿
 日時:3月11日(土)15:30〜17:30
 場所:常圓寺祖師堂(東京・西新宿7)
 主催:ロータスシネマ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/508765674758266

────────────────────
*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ウクライナの戦火が終息するまで「執念深く」お休みを続けます。
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.263は3月22日(水)[和暦 弥生朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(本メールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』(今回から2023年版)を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
────────────────────
◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 (購読(無料)登録はこちらから)
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 発行システム:『まぐまぐ!』
  https://www.mag2.com/
 バックナンバー
  https://food-mileage.jp/category/mm/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/