2023年3月19日(土)は、個人的な話で恐縮ながら64回目の誕生日。亡き両親始め多くの方々のご恩に改めて感謝。
東京地方では、早くもソメイヨシノはほぼ満開。
午後から東京・池袋へ。駅南口から徒歩10分ほどにある自由学園明日館は、1921(大正10)年、フランク・ロイド・ライトの設計により建築されたもので、重要文化財に指定されています。外観も内部も趣があります。
その館内の会議室で開催されたのは、「NPOから地域協同組合へ 持続可能な地域づくり~波及効果と展望」と題するワークショップ。NPOエコ・コミュニケ―ションセンター(ECOM)創立30周年記念のイベントです。
会場には30名ほど。リモート参加の方もおられるようです。
以前にECOMのスタッフをされていたという渡辺さんの進行により、定刻14時ちょうどにスタート。
ECOM代表の森 良(もり・りょう)さんによる挨拶(以下、文責は中田にあります)。
「1993年に任意団体としてスタートしてから30周年、環境を軸とした持続可能な地域づくり活動を続けてきた。かなり社会にも浸透してきて、現在のSDGsにもつながっている。ますますやることは増えており、皆さんとさらに大きな力にしていきたい」
「15分以上一方的に話を聞かされるのは人権問題だと思っているので、報告の間の『ぺちゃくちゃタイム』では近くの人と話し合い、最後のワールドカフェでは大いにおしゃべりと落書きをしてほしい」
最初の報告は、ニノ宮リムさちさん(東海大学)から、「環境教育からESD、SDGsの地域展開へ-ECOMに育てられた・拓かれたわたしのこれまでとこれから」について
「1995年頃に学生インターンとしてECOMにお世話になり、森さんと出会って『環境教育』を学んだ。青年海外協力隊員(マレーシアで活動)、オーストラリアの大学院への留学を経て、帰国した後は3つのNPOの事務局を務めた後、現在は大学を拠点に活動している」
「対話を大事にしている。対話とは、新たなものを一緒に創造すること。異なる立場の人たちの対等な場をつくり、地域の持続可能な未来を共創していくのがコーディネータの役割。ECOMで学んだことを昭島市など地域でも活かしている」
ここで1回目の「ぺちゃくちゃタイム」。同じテーブルになった2人の女性の方たちと、まずは自己紹介から。お二人とも色々と興味深い活動をされています。
続いて豊島大輝さん(鹿野山自然学校(千葉・君津市)校長)から、「コミュニティエンパワメント-房総の実践」と題して報告。
「外資系旅館を会社都合で退職した後、失業中にECOMの『しごと塾』ワールドカフェに参加。熱気に度肝を抜かれ『これだ!』と確信し、起業して千葉・房総半島で地域活性化に取り組んでいる」
「地元の方たちの思いをよく聴き、マッチングすること等で思いを形にするお手伝いをするなど、ECOMで習ったことをそのまま実践している。奥房総キャラバン隊の実現などコミュニティエンパワメントが生まれている」
「つなげる」「引き出す」というECOMのミッション(森さんのDNA?)が、多くの地域で花開いているようです。
2回目の「ぺちゃくちゃタイム」では、お2人から、さらに詳しく活動されている内容をお聞きしました。そのお一人、石田さんはこの後の座談会に登壇されます。
続くプログラムは、小さなアンテナショップネットワークの方々による座談会「地域実践者から」。
地方の有機野菜生産者と、都会のアンテナショップ(販売・情報普及者)をつなぐネットワークで、森さんが企画し、ご自身が野菜を仕入れて届けることで実現しているそうです。
生産者代表の金塚 竜さん(づっか農園、埼玉・小川町)はリモートで参加。
「森さんに声を掛けていただいたおかげで、販売者や消費者の方のニーズがフィードバックされ、経営の課題等も分かるようになった。買ってもらう方には、ぜひ現場を見てもらいたい。体験等も受け入れたい」等のコメント。
東京・高島平で地域交流広場ぱうぜを主宰されている石田ゆかりさんからは、
「『ぱうぜ』とは、音楽用語で休止のこと。コミュニティ・キッチンなどの活動に取り組んでいる。野菜は売れ残ることもあり、もっと多くの人に知ってもらうことが課題。残った野菜は総菜やスープに加工して提供している」
「都市で大災害が起こった時、地方に避難しようとしても受け入れてもらえない。野菜の購入だけではなく、ふだんから地方の人と交流していくことが大事」
エシカルな雑貨屋さんOne Dropを運営する山口裕子さんからは、
「エシカルに関心のある人の多くは作る側に回ってしまうが、自分は小売にこだわっていきたい。現在は移動販売のみだが、個人で生協のように注文を取ったりして野菜も扱わせてもらっている。知らない人に知ってもらい、エシカル商品や有機野菜を実生活の中に取り入れてもらいたい」
「消費者は野菜を買うだけではなく、生産者の人と会ってみることで、一層身近に感じられるのではないか。誰から買ったかが分かれば、食べものを大切にする気持ちも生まれるのでは」
森さんからは、
「売ってくれるところをもっと作りたい。農的暮らしへの入り口にもなる。多くの消費者は食べ物は買うものと思っているが、例えばベランダでトマトを栽培するなど少しでも自分で食べものをつくってみれば、価値観は変わってくる。実践する人を増やしていきたい」等とまとめられました。
続いて森さんから、「すみつづけられるまちづくりを地域協同組合で」と題する基調報告。
「グローバリズムは行き詰っており、様々な問題が出てきている。地域主義とコモンによる解決が必要。3つの柱は、安心できる重層的なコミュニティづくり、FECとくらしのユニバーサルサービスを供給する産業転換、都市農村交流」
「地域協同組合とは、地域課題を、地域資源の活用と地域間交流によって、しごととして解決していくための協働労働による組織。つまり地域づくりを仕事とすること。先ほどの座談会で紹介した『小さなアンテナショップネットワーク』のほか、週末農業に通う仕組み『シャアダーチャ』などにも取り組んでいきたい。ぜひ一緒にやりましょう」
最後は、「持続可能な地域づくりで大切なことは」と題するワールドカフェ。
森さんから説明。3~4人一組のテーブルごとに「いちばん心に残ったこと」「今、大事にしていること」「これからやりたいこと」等について、話し合いながら中央に置いた大きな紙に書き出していきます。くだけたおしゃべりと落書きであって、ディスカッションではないとのこと。
最初の2人の女性の方と、どんどん紙を埋めていきます。話が尽きません。
15分でメンバーを入れ替え。今度は福祉関係や地域協同組合に関わっておられる男性二人とおしゃべり。
森さんはテーブルの間を回り、書き出されていることのポイントを、正面のホワイトボードに書き込んでいきます。
「その地域ならではの地域づくり」「人並みなくらしづくり」「その人の中にある何とつながれるか」「面白い人の回りには面白い人が集まる」「豊かな時間」「小さな幸せ」・・・、多くのキーワードで、ボードはたちまち一杯になりました
最後は全員で一人ずつ発言。
賛同の声、笑い、拍手。森さんのたくみなファシリテートで、気が付くと会場は(リモート参加者も含め)一体になって盛り上がっていました。
予定の17時を過ぎてしまいました。
最後に森さんは、30周年を祝う花束を両手に掲げながら、
「パワーは自発的なもので、戦争(フォース)とは違う。みんなのパワーを合わせて、みんなを主役に、これからも豊かな時間を共有していきたい」等の締めの挨拶。
駅前に会場を移しての懇親会でも、盛り上がりは続きました。
ECOMのワークショップには、コロナ禍前には何度か参加したことがありました。「しごと塾」でのアイデアは、現在も山梨・上野原に通うこと(しごと塾さいはら)で継続しています。
久しぶりに、その醍醐味を体験できました。
また、この日、参加された方々が、それぞれの立場で様々な実践をされていることを直接伺えたことには、心励まされました。改めて訪ねてみたい方、場所もたくさんできました。
一方で、参加者のお一人の「ここに参加している熱心な人達ではなく、このようなテーマにあまり関心のない、普通の人たちに伝えていくことこそが大切ではないか」との言葉も、心に刺さりました。
さて、自分自身に何ができるか。何をするか。ともに取り組んでいける「仲間」がたくさんいることは確実のようです。
森さん、ECOMを支えてこられた皆様、30周年おめでとうございます。記念の素晴らしいワークショップを有難うございました。